第50条【企業の自由】、第51条【財産権】、第52条【知的財産権】、第53条【消費者の権利】、第54条【食品の安全】、第55条【家庭の権利】、第56条【未成年者の保護】、第57条【高齢者の保護】、第58条【障害者の保護】、第59条【住居に対する権利】、第60条【社会保障を受ける権利】、第61条【健康に対する権利】、第62条【労働の権利】、第63条【教育を受ける権利】
第2編【基本的な権利、保障及び義務】
第1章【基本的な権利】
第2節【経済的及び社会的な権利】
第50条 国は、自由な企業、商業及び工業を承認及び保障する。全ての人は、この憲法及び法律の定める制限の下で、自己の選択により、自由に経済活動に従事する権利を有する。(1)国益に適う場合を除いて、独占は許されない。そのような独占の創設及び組織は、法律によって定めるものとする。国は、自由かつ公正な競争を奨励及び保障し、独占及び優越的地位の濫用の有害かつ制限的な影響を防止するために必要な措置を講じる。また、国家の安全保障のために必要な場合は、法律によって例外を定めるものとする。
(2)国は、経済を規制し、国家競争力計画を推進し、国家の総合的な発展を促進するための措置を指揮することができる。
(3)国は、天然資源の開発又は公共サービスの提供に関して、常に公共の利益と環境のバランスに適切な配慮又は補償の存在を保障した上で、法律の定める期間及び方法でコンセッションを付与することができる。
第51条 国は財産権を承認及び保障する。財産は義務を伴う社会的性質を有する。何人も、自己の財産を享受及び処分する権利を有する。
(1)何人も、法律の規定に従い、当事者間の合意又は管轄裁判所の判決によって決定される公正な価額の支払いを条件として、公共の利益又は社会的利益の正当な理由による場合を除いて、その財産を奪われることはない。緊急事態宣言又は国防宣言が発行された場合、補償金を前払いすることはできない。
(2)国は、法律に従い、財産、特に権利を有する不動産の利用を推進する。
(3)土地を有益な目的に利用し、ラティフンディオの土地を徐々に廃止することは、社会的利益に適うことを宣言する。農民の農業生産方法の刷新及び技術訓練の奨励及び協力を通して、農地改革を推進し、農民を国家開発のプロセスに効果的に統合することは、国の社会政策の主要な目的である。
(4)自然人又は法人の財産を、政治的理由によって没収してはならない。
(5)国内又は国外にある自然人又は法人の財産で、公共財産に対して行われた不法行為に起因するもの、麻薬及び向精神薬の不正取引に利用されたもの又はそれに由来するもの、国際組織犯罪に関連するもの、並びに刑法に規定する犯罪に関連するものに限り、最終判決によって押収又は没収の対象とすることができる。
(6)法律により、刑事訴訟及び所有権消滅のための裁判において、差押え及び放棄された財産の管理及び処分のための制度を、その法制に従って定めるものとする。
第52条 科学的、文学的及び芸術的な著作物、発明及びイノベーション、商標、特徴的な標章並びにその他の人間の知的生産物の独占的所有権は、法律によって定める期間、方式及び制限の下で承認及び保護されるものとする。
第53条 全ての人は、法律の定める規則及び基準の下で、品質の高い商品及びサービスを利用し、その利用又は消費する製品及びサービスの内容及び特徴に関する、客観的な、真実かつ適時の情報を得る権利を有する。粗悪な商品及びサービスによって負傷又は損害を受けた者は、法律に従って補償又は賠償を受ける権利を有するものとする。
第54条 国は、生産性を向上させ、食品の安全を保障することを目的として、食品及び農畜産業由来の原材料の生産のための研究及び技術移転を促進するものとする。
第55条 家庭は社会の基礎であり、個人の総合的な発達のための基本的な空間である。自然的若しくは法的な関係により、男性と女性の自由な意思決定により、又は責任ある意思によって形成されるものである。
(1)全ての人は、家族を形成する権利を有する。その形成及び発展において、女性と男性は平等な権利及び義務を有し、相互に理解及び尊重し合う義務を負う。
(2)国は家族の保護を保障する。家族の財産は、法律の規定に従い、不可譲で、差押えすることができない。
(3)国は、男性と女性の間の婚姻制度を基礎とする家族の組織を促進及び保護する。法律により、その成立要件、成立のための手続き、婚姻の身分上及び財産上の効力、別居又は解消の原因、財産制度並びに配偶者間の権利及び義務を定めるものとする。
(4)宗教上の婚姻は、国際条約の規定を損なうことなく、法律の規定に従い、民事上の効力を有する。
(5)事実上の世帯を形成する、婚姻上の支障のない男性と女性の間の唯一かつ安定した関係は、法律に従い、身分及び財産に関して権利及び義務を生じるものとする。
(6)母性は、女性の社会的地位又は婚姻の有無にかかわりなく、公権力の保護を享受する。また、困窮状態にある場合は、公的扶助を受ける権利を有する。
(7)全ての人は、人格を認められ、名前を与えられ、父及び母の姓を称し、その身元を知る権利を有する。
(8)全ての人は、生まれながらに、法律に従い、市民登録簿又は外国人登録簿に無料で登録され、身分を証明する公文書を取得する権利を有する。
(9)全ての子どもは法の下に平等である。平等な権利及び義務を有し、社会的、精神的及び身体的な発達のための等しい機会を享受する。市民登録簿及び身分証明書に、親子関係を記載することは禁止される。
(10)国は責任ある親子関係を推進する。父親及び母親は、別居及び離婚後においても、その子を養育、訓練、教育、維持し、安全を提供し、及び援助する、共有の放棄できない義務を負う。法律により、これらの義務の実効性を保障するために必要かつ適当な措置を定めるものとする。
(11)国は、家事労働について、付加価値並びに富及び社会福祉を生み出す経済活動と認め、公共政策及び社会政策の立案及び実施に反映するものとする。
(12)国家は、法律により、養子縁組に関する安全かつ実効的な政策を保障するものとする。
(13)国家の発展における戦略的な主体として、若者の価値は認められる。国は、国民生活のあらゆる分野への若者の参加、特に最初の職業に就くための訓練及びアクセスを、恒久的に保障する政策及びプログラムを通して、その権利の実効的な行使を保障及び促進するものとする。
第56条 家族、社会及び国家は、児童及び青少年の最善の利益を優先する。この憲法及び法律に従い、その調和的かつ総合的な発達及び基本的権利の完全な行使を保障するために、これを援助及び保護する義務を負う。したがって、:
(1)児童労働及び未成年者に対するあらゆる種類の虐待又は暴力の根絶は、最高の国益であることを宣言する。児童及び青少年は、あらゆる形態の遺棄、誘拐、脆弱な状態、虐待、身体的、心理的、道徳的若しくは性的な暴力、又は商業的、労働的若しくは経済的な搾取及び危険な労働から、国によって保護されるものとする。
(2)家庭、コミュニティ及び社会のおける生活への、児童及び青少年の積極的かつ進歩的な参加を促進するものとする。
(3)青少年は、発達段階における能動的な主体である。国は、家族及び社会の協力的な参加を得て、成年者としての生活への生産的な移行を促進する機会を創出するものとする。
第57条 家族、社会及び国家は、高齢者の保護及び援助のために連携し、そのコミュニティにおける活動的な生活への取込みを促進する。国は、包括的な社会保障サービス、及び困窮状態にある場合の食料支援を保障するものとする。
第58条 国は、平等な条件の下で、障害者のあらゆる人権及び基本的自由の享受、並びにその能力の完全かつ自律的な行使を促進、保護及び保障する。国は、障害者の家族、コミュニティ、社会、労働、経済、文化及び政治における統合を促進するために必要な、積極的な措置を講じるものとする。
第59条 全ての人は、必要不可欠な基礎的サービスを備える、尊厳ある住居で生活する権利を有する。国は、この権利を実効性あるものとするために必要な条件を整備し、社会的利益となる住宅及び人間の定住に関する計画を推進するものとする。所有権を有する不動産の適法な利用は、住宅促進のための公共政策の基本的な優先事項である。
第60条 全ての人は、社会保障を受ける権利を有する。国は、病気、障害、失業及び老齢の状態で十分な保護を普遍的に受けられるよう保障するために、社会保障の漸進的な発展を促進するものとする。
第61条 全ての人は、総合的な健康を享受する権利を有する。したがって、:
(1)国は、全ての人の健康の保護、飲料水の利用、食糧事情の改善、衛生サービス、衛生事情及び環境衛生を保障し、あらゆる病気の予防及び治療のための手段を提供し、良質な医薬品の利用を保障し、医療及び病院での治療を必要とする者に無料でこれを提供するものとする。
(2)国は、立法及び公共政策により、低所得者の経済的及び社会的な権利の行使を保障し、したがって、脆弱性を有する集団及び部門に保護及び援助を提供し、適当な措置により、国際協定及び国際機関の援助を得て、社会的害悪を撲滅するものとする。
第62条 労働は権利であり、義務である。国の保護及び援助によって行使される社会的な職務である。尊厳ある、報酬を得られる雇用を促進することは、国家の本質的な目的である。公共機関は、労働者、使用者及び国の間の対話及び協議を推進するものとする。したがって、:
(1)国は、労働の権利の行使において、女性と男性の平等及び公平を保障するものとする。
(2)何人も、その意思に反して、他者の労働を妨害し、又はこれを強制してはならない。
(3)労働者の基本的な権利には、組合の自由、社会保障、団体交渉、職業訓練、並びに身体的及び知的な能力、プライバシー及び個人の尊厳の尊重が含まれる。
(4)労働組合は自由かつ民主的で、その規約に準拠し、この憲法及び法律に掲げる原則に適合するものでなければならない。
(5)就職又は勤務におけるあらゆる種類の差別は、労働者を保護する目的で法律に規定する例外を除いて、禁止される。
(6)労働争議及び平和的な争議を解決するために、民間企業における労働者のストライキ権及び使用者のロックアウト権は、公共サービス又は公共の利益の維持を保障する措置を定める法律に従って行使される場合に限り、認められる。
(7)法律により、一般的な利益の必要に応じて、労働時間、休日及び休暇、最低賃金及びその支払方法、あらゆる労働への国民の参加、企業の利益への労働者の参加、並びに一般に、非正規労働、家庭内労働及びその他のあらゆる形態の人間の労働に対する特別な規制を含む、労働者の利益のために必要と認められるあらゆる最小限の措置を定めるものとする。国は、労働者がその労働に不可欠な道具及び器具を取得することができるよう、その権限内で手段を提供するものとする。
(8)全ての使用者は、その労働者のために安全、衛生及び労働環境の適正な条件を保障する義務を負う。国は、これらの目的を達成するために、使用者及び労働者で構成される機関の設立を推進する措置を講じるものとする。
(9)全ての労働者は、尊厳をもって生活し、自己及び家族の基本的な物質的、社会的及び知的な必要を賄うことができるよう、適正かつ十分な賃金を受け取る権利を有する。ジェンダー又はその他の事由による差別なく、能力、能率及び年功の同等な条件の下で、同一価値の労働に対する同一賃金を保障されるものとする。
(10)労働の国有化に関する労働基準の適用は、高度な関心事である。法律により、給与労働者として企業に服務することができる外国人の割合を定めるものとする。
第63条 全ての人は、その適性、職業及び希望に由来する以外の制限を受けることなく、平等な条件及び機会の下で、生涯にわたり、総合的で質の高い教育を受ける権利を有する。したがって、:
(1)教育は、生涯を通して人間を総合的に形成することを目的とし、その創造的な可能性及び倫理的な価値を開発する方向に向けられるものとする。それは、知識、科学技術並びにその他の文化的な財産及び価値へのアクセスを追求するものである。
(2)家族は、その構成員の教育に責任を負い、未成年の子どもの教育の種類を選択する権利を有する。
(3)国は無償の公教育を保障し、就学前、基礎及び中等段階の義務教育を宣言する。就学前段階の教育については、法律によって定めるものとする。公的制度における高等教育は、法律の規定に従い、地域の教育提供に比例する財源の配分を保障し、国によって資金提供される。
(4)国は、普通教育が無償で質の高いものであり、その目的が達成され、生徒の道徳的、知的及び身体的な育成が行われるようにする。また、教育目標の達成を保障する授業時間数を提供する義務を負う。
(5)国は、教職が教育及びドミニカ国家の完全な発展の基礎であることを認める。したがって、教員の専門化、安定及び尊厳を推進することはその義務である。
(6)識字率の向上並びに特別な必要及び例外的な能力を有する者の教育は、国の義務である。
(7)国は、高等教育の質を保障し、法律の規定に従い、公共施設及び公立大学に資金を提供する。また、大学の自治及び教授の自由を保障するものとする。
(8)大学は、法律に従い、理事会を選出し、その規約によって規律されるものとする。
(9)国は、持続可能な開発、人類の福祉、競争力、制度の強化及び環境保全に資する研究、科学技術及びイノベーションを促進及び奨励する政策を定める。これらの目的のために投資する、民間の企業及び機関に援助を行うものとする。
(10)教育及び科学技術への国の投資は、国家のマクロ経済の実績水準に合わせて、増額及び維持する。法律により、そのような投資に応じた最低額及び割合を定めるものとする。いかなる場合も、これらの分野の開発資金を賄うために計上された基金から、振り替えることはできない。
(11)公共及び民間のマスメディアは、市民の形成に貢献しなければならない。国は、情報への普遍的なアクセスを可能にするために、ラジオ、テレビ、図書館及び情報ネットワークの公共サービスを保障する。教育施設は、法律の定める要件に従い、新しい技術及びそのイノベーションの知識及び応用を組み込むものとする。
(12)国は、法律の規定に従い、教育の自由を保障し、教育に関する機関及びサービスの創設における民間のイニシアティブを認め、科学技術の発展を奨励するものとする。
(13)市民の権利及び義務についての認識を醸成することを目的として、社会的及び市民的な育成のための指導、並びに憲法、基本的な権利及び保障、愛国的な価値観、並びに平和的共存の原則の教育は、全ての公立及び私立の教育機関において義務付けられるものとする。
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