第101条【経済秩序の目的】、第102条【経済の自由、民間イニシアティブ】、第103条【私有財産制、知的財産権、地下土壌開発のコンセッション】、第104条【国有不動産の譲渡】、第105条【農村の土地の私的所有権】、第106条【収用、没収の禁止】
第5編【経済秩序】
第101条 経済秩序は、本質的に社会正義の原則に応えるものでなければならない。これは、国内の全ての住民に、人間としての尊厳ある生活を保障することを目的とする。国は、生産及び生産性の向上並びに資源の合理的な利用により、経済的及び社会的な開発を推進する。同様の目的のために、各種の生産部門を振興し、消費者の利益を保護するものとする。
第102条 経済の自由は、社会的利益に反しない限り、保障される。
国は、国富を増大させ、その利益を最大多数の国民に保障するために必要な条件の下で、民間のイニシアティブを奨励及び保護するものとする。
第103条 社会的機能としての私有財産に対する権利は認められ、保障される。
また、知的及び芸術的な財産権も、法律の定める期間及び方法で認められる。
地下土壌は国家に帰属する。国はその開発のためのコンセッションを付与することができる。
第104条 国有不動産は、法律の定める制限及び方法の範囲内で、自然人又は法人に譲渡することができる。
農業を営む農村の国有財産で、国の活動に必要不可欠でないものは、農地改革の受益者に対する相当の支払いによって譲渡される。また、公益法人に譲渡することもできる。
第105条 国は、個人的、協同組合的、共有的又はその他の団体的形態により、農村の土地の私的所有権を認め、これを奨励及び保障する。また、いかなる場合も、この憲法で財産権として定める土地の最大面積を減少させることはできない。
自然人又は法人が単独で所有する農村の土地の最大面積は、245ヘクタールを超えてはならない。この制限は、協同組合又は農業共同体には適用されない。
本条第2段に規定する土地の所有者は、これを自由に譲渡、分割又は賃貸することができる。協同組合、農業共同体及び農地改革の受益者が所有する土地は、特別な制度の対象とする。
農村の土地の所有者で、その面積が245ヘクタールを超える者は、土地を分割し、関連する土地・抵当権登記簿に個別に登記することにより、所有したい土地の一部を直ちに決定する権利を有する。
この憲法の定める制限を超える、分割されていない農村の不動産は、共有者間の分割の対象とすることができる。
この憲法の定める範囲を超える土地は、農民、小規模農家、会社、協同組合及び農業共同体に、いかなる名義でも譲渡することができる。本段に規定する譲渡は、3年以内に行わなければならない。特別法により、事前に定める期間の満了時に譲渡されなかった土地の帰属先を定めるものとする。
前段に規定する超過分の土地は、いかなる場合も、4親等内の血族又は2親等内の姻族に、いかなる名義でも譲渡することができない。
国は、労働者の雇用及び全国の農業部門で生産された原材料の加工を保障するために、共和国の各県における農産物加工会社の設立、資金調達及び開発を奨励するものとする。
第106条 収用は、公共の利益又は社会的利益を理由に、法的に証明され、公正な補償の後に行うものとする。
収用が戦争若しくは災害を原因とする場合、又はその目的が水若しくは電力の供給、若しくは住宅若しくは公共の道路の建設である場合は、事前に補償を行うことができない。
前段までの規定に従って収用される財産について、認められる補償の金額によって正当化される場合、支払いは、通算15年を超えない分割払いとすることができる。この場合、相応の銀行利息が収用された者に支払われるものとする。そのような支払いは現金で行うことが望ましい。
公的資金で設立された事業体は、補償を行うことなく収用することができる。
没収は、刑罰としてであれ、又はその他の名目によるものであれ、禁止される。この規定に違反した当局は、身体及び財産に生じた損害について、常に責任を負うものとする。没収された財産は時効にかからない。
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