第142条【選挙裁判所の設置】、第143条【選挙裁判所の権限】、第144条【選挙検察庁】、第145条【選挙管轄区の公務員の命令及び決定の遵守義務】
第4編【政治的な権利】
第3章【選挙裁判所】
第142条 国民の選挙の自由、公正及び有効性を保障するために、選挙裁判所と称する自律的な独立した裁判所を設置する。法人格、独自の財産及びそれを管理する権利を認められる。この裁判所は、選挙法を専属的に解釈及び適用し、出生、死亡、帰化、並びに人の市民的身分に関する事実及び法律行為の登録、並びに個人の身分証明書の発行及び選挙手続の段階を指揮、監視及び監督するものとする。選挙裁判所は、共和国全域を管轄し、最高裁判所裁判官と同様の要件を満たす3人の裁判官によって構成される。任期は10年とし、期間をずらして任命されるものとする。:任命権者以外の者の中から、 立法機関が1人、行政機関が1人、及び最高裁判所が1人を任命する。補欠裁判官を、各正規の裁判官について同様に任命する。
選挙裁判所裁判官及び選挙検事総長は、職務を執行する際に行った過失又は犯罪について、最高裁判所に対して責任を負うものとする。最高裁判所裁判官について、この憲法の定める禁止事項及び特権と同様のものが、これらの者にも適用される。
第143条 選挙裁判所は、 第5条、 第7条及び第10条に規定する権限を除いて、 法律によって付与される権限に加えて、 以下の独占的な権限を有する。:
(1)出生、婚姻、死亡、帰化及び人の市民的身分に関するその他の事実及び法律行為を登録し、その登録簿に適切な記録をすること。
(2)個人の身分証明書を発行すること。
(3)選挙法を規制し、これを解釈及び適用し、その適用に起因する紛争を審理すること。
(4)法律に従い、選挙権の自由及び純粋性に反する過失及び犯罪を処罰し、二審制を保障すること。
(5)選挙人名簿を作成すること。
(6)選挙人登録を組織、指揮及び監督し、これに関して生じる紛争、苦情及び告発を解決すること。
(7)移民及び帰化の申請を処理すること。
(8)法的に構成される政党の代表が保障される、選挙人団の団員を任命すること。法律により、これに関する事項について定めるものとする。
(9)国家の一般予算案に組み込むために、 予算を作成し、 適時に行政府に提出すること。選挙裁判所は、 あらゆる段階において、 予算案を支持するものとする。最終的に承認された予算において、その目的を遂行するために必要な資金を保障するよう努めるものとする。この予算には、選挙裁判所及び選挙検察庁の運営費、選挙手続及びその他の国民投票の実施に必要な出資及び経費、並びに政党及び公選の役職の無所属候補者に対する助成金を計上するものとする。総選挙の直前の1年間及び選挙期間が終了するまでの間、 選挙裁判所は、 共和国会計検査院による事後監査のみを受けるものとする。
(10) 管轄権の範囲内で法律の発議権を行使すること。
(11)選挙刑事裁判所及び選挙検察庁の決定に対する、上訴及び訴訟を専属的に審理すること。
選挙に関する選挙裁判所の決定は、 同裁判所に対してのみ不服を申し立てることができる。法的手続が完了した後は、 最終的で取り消すことができず、 拘束力を有するものとする。これらの決定に対しては、違憲の上訴のみが認められる。
第144条 選挙検察庁は、独立した捜査機関で、選挙裁判所の補助機関であり、その予算を管理する権利を有する。選挙検事総長は、立法機関の承認を得た上で、行政機関が任命する。任期は10年とし、最高裁判所裁判官と同様の要件を満たし、同様の制限を受けるものとする。その職務は以下の通りである。:
(1)市民の政治的な権利を保護すること。
(2)政治的及び選挙的な権利及び義務に関する、公務員の公的な行為を監督すること。
(3)選挙に関する犯罪及び違反行為を訴追すること。
(4)法律の定めるその他の職務を執行すること。
第145条 公共機関は、選挙管轄区の公務員が発行する命令及び決定を遵守する義務を負い、職務の遂行のために必要な従属、協力及び援助を提供する。この義務の履行における不作為又は過失は、法律の規定に従って処罰されるものとする。
・パナマ共和国政治憲法(1972)【私訳】へ戻る。