第17条【当局の目的、憲法上の権利及び保障は最低限度のものである】、第18条【私人及び公務員の責任】、第19条【人種等による特権及び差別の禁止】、第20条【パナマ人と外国人の平等】、第21条【令状によらない拘禁の禁止】、第22条【逮捕された者に対する通知、無罪の推定】、第23条【ヘイビアス・コーパス訴訟】、第24条【政治犯の引渡し禁止】、第25条【自己に不利益な供述の強制禁止】、第26条【住居の不可侵】、第27条【移動の自由】、第28条【刑務所制度】、第29条【通信の不可侵】、第30条【死刑、国外追放又は財産没収の禁止】、第31条【罪刑法定主義】、第32条【一事不再理】、第33条【制裁を科すことができる特別な場合】、第34条【上官の命令が責任を免除しない場合】、第35条【宗教の自由】、第36条【宗教団体の法人格】、第37条【表現の自由】
第3編【個人的及び社会的な権利及び義務】
第1章【基本的な保障】
第17条 共和国の当局は、その管轄下にある国民及び外国人の生命、名誉及び財産を保護し、個人的及び社会的な権利及び義務の実効性を保障し、憲法及び法律を遵守し、執行するために設置される。この憲法に規定する権利及び保障は、最低限度のものであり、人の基本的権利及び尊厳に影響を与えるその他のものを排除するものではない。
第18条 私人が当局に対して責任を負うのは、憲法又は法律に違反した場合に限られる。公務員は、同様の事由により、また、職権の濫用又はその不作為により、責任を負うものとする。
第19条 人種、出生、障害、社会的な階級、性別、宗教又は政治的な思想による権限、特権又は差別は存在しない。
第20条 パナマ人と外国人は法の下に平等である。ただし、法律により、労働、保健、道徳、治安及び国民経済上の理由により、外国人一般に特別な条件を課し、又は特定の活動の実施を拒否することができる。また、法律又は当局は、状況に応じて、戦争の場合、又は国際条約の規定に従い、特定の国の国民にのみ影響を与える措置を講じることができる。
第21条 何人も、法律で事前に定める理由により、法的手続に従って発行された権限ある当局の書面の命令によらなければ、その自由を奪われることはない。そのような令状の執行者は、関係者が要求する場合、その写しを交付する義務を負う。
現行犯で捕まった犯罪者は、誰でも逮捕することができる。直ちに当局に引き渡すものとする。
何人も、権限ある当局に引致されることなく、24時間を超えて拘禁されることはない。この規定に違反した公務員は、法律の定める刑罰を損なうことなく、懲戒免職となるものとする。
負債又は純粋に民事上の債務を理由に、収監、拘禁又は逮捕されることはない。
第22条 逮捕された者は、直ちに、その者が理解できる方法で、逮捕の理由並びに憲法上及び法律上の権利について通知されなければならない。
犯罪を行ったとして告発された者は、その弁護のために定めるあらゆる保障が確保された、公開の裁判において有罪が立証されるまで、無罪と推定される権利を有する。逮捕された者は、その時から、警察及び司法の手続きにおいて、弁護士の援助を受ける権利を有する。
法律により、これに関する事項について定めるものとする。
第23条 この憲法及び法律の定める場合及び方法以外で逮捕された者は、その者又は他の者の請求により、ヘイビアス・コーパス訴訟によって釈放される。これは、逮捕後直ちに、適用される刑罰にかかわりなく、提起することができる。
この訴訟は、就業時間又は就業日でないことを理由に手続きが中断されることなく、簡易な手続きにより、他の係属中の事件に優先して処理されるものとする。
また、ヘイビアス・コーパス訴訟は、身体の自由に対する実際の、若しくは確実な脅迫がある場合、又は拘禁の方法、条件若しくは場所が、その者の身体的、精神的若しくは道徳的完全性を危険にさらし、若しくはその者の弁護の権利を侵害する場合も提起することができる。
第24条 国は、政治犯罪のために、自国民又は外国人を引き渡してはならない。
第25条 何人も、刑事上、矯正上又は警察上の問題に関して、自己、その配偶者又は4親等内の親族若しくは2親等内の姻族に不利な供述をする義務を負わない。
第26条 住所又は居所は不可侵である。何人も、権限ある当局の書面の命令による場合、特定の目的のために、又は犯罪若しくは災害の被害者を救助する場合を除いて、その所有者の同意なしに立ち入ることはできない。
労働、社会保障及び衛生に関する公務員は、身元確認の後に、社会及び公衆衛生に関する法律の遵守を保障するために、住居を訪問し、職場を検査することができる。
第27条 全ての人は、交通、財政、保健及び移民に関する法律又は規則によって課される以外の制限を受けることなく、国内を自由に移動し、住所又は居所を変更することができる。
第28条 刑務所制度は、安全、社会復帰及び社会防衛の原則に基づくものである。被拘禁者の身体的、精神的又は道徳的な完全性を傷つける措置の適用は禁止される。
被拘禁者が有為に社会復帰できるような、職業訓練を整備するものとする。
未成年の被拘禁者は、監護、保護及び教育の特別な制度に服するものとする。
第29条 通信及びその他の私的な文書は不可侵である。法的手続に従い、権限ある当局の命令及び特定の目的による場合を除いて、検査又は留置することはできない。いかなる場合も、検査又は留置の対象でない事項については、 完全な秘密を保持しなければならない。
信書及びその他の文書又は書類の捜索は、常に、関係者若しくはその家族の立会いの下で、又はそれが困難な場合は、同じ場所の2人の名誉ある隣人の立会いの下で、行わなければならない。
全ての私的な通信は不可侵である。司法当局の命令による場合を除いて、傍受又は録音することはできない。
この規定を遵守しなかった場合、犯罪者が負う刑事責任を損なうことなく、その結果を証拠として使用することができない。
第30条 死刑、国外追放又は財産没収の刑罰は科されない。
第31条 告発された行為について、その実行前に法律によって刑罰を科すと宣言され、正確にこれを適用することができる行為のみ、刑罰を科すことができる。
第32条 何人も、権限ある当局により、法的手続に従う場合を除いて、同一の刑事、行政、警察又は懲戒上の事由について、2回以上裁判を受けることはない。
第33条 以下の場合は、事前の裁判を経ることなく、法律の定める正確な条件の範囲内で、制裁を科すことができる。:
(1)軍の長官は、反抗若しくは反乱を抑止するために、又は懲戒上の違反に対して、部下に制裁を科すことができる。
(2)航行中の船舶又は航空機の船長又は機長。反抗若しくは反乱を抑止し、若しくは船内若しくは機内の秩序を維持するために、又は実際の犯罪者若しくはそのように推定される者を一時的に拘禁するために権限を有する。
第34条 憲法上又は法律上の規定に明白に違反し、何人かに損害を与えた場合、上官の命令は、これを実行した係官の責任を免除するものではない。ただし、軍の隊員が任務遂行中である場合は例外とし、その場合は命令した上官のみが責任を負うものとする。
第35条 あらゆる宗教の表明は自由であり、あらゆる信仰の実践も自由である。キリスト教道徳及び公共の秩序を尊重する以外に、制限はないものとする。カトリックは、パナマ国民の大多数が信仰するものとして認められる。
第36条 宗教団体は、その他の法人と同様に、法律の定める範囲内で、法的能力を有し、その財産を管理することができる。
第37条 全ての人は、事前の検閲を受けることなく、口頭、書面又はその他の手段により、自由に自己の思想を表明することができる。ただし、これらの手段により、人の名声若しくは名誉、又は社会の安全若しくは公共の秩序を侵害した場合は、法的責任を負うものとする。
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