第315条【パナマ運河の性質】、第316条【パナマ運河庁】、第317条【国家海洋戦略のための機関及びその調整】、第318条【パナマ運河庁の理事会】、第319条【理事会の権限】、第320条【パナマ運河庁の財政】、第321条【パナマ運河庁から国庫への納付】、第322条【パナマ運河庁の雇用制度】、第323条【本編の制度の発展、パナマ運河庁による規則】
第14編【パナマ運河】
第315条 パナマ運河は、パナマ国民の不可譲の財産である。あらゆる国の船舶の平和的かつ中断のない通過のために、継続して開放される。その使用は、この憲法、法律及びその管理によって定める要件及び条件に従うものとする。第316条 パナマ運河庁と称する、公法上の独立法人を設立する。パナマ運河庁は、パナマ運河が安全で、継続的、効率的で、収益性が高い方法で運営されるように、施行されている憲法及び法律の規定に従い、パナマ運河及びその関連事業の管理、運営、保全、維持及び近代化に独占的な責任を負う。また、独自の財産及びそれを管理する権利を有するものとする。
パナマ運河庁は、法律の定める国家機関と連携して、湖沼及びその支流からなるパナマ運河流域の水資源の管理、維持、利用及び保全に責任を負う。パナマ運河の河岸における建設の計画、水の使用、利用、拡張、港湾の開発、及びその他のあらゆる工事又は建設は、パナマ運河庁の事前の承認を要するものとする。
パナマ運河庁は、第321条に規定する場合を除いて、社会保険料、教育保険料、職業上の災害保険料及び公共サービスの料金を例外として、国又は基礎自治体の租税、関税、手数料、拠出金又は寄付金の納付の対象とはならないものとする。
第317条 パナマ運河庁、並びに海洋分野に関連する共和国のあらゆる機関及び当局は、国家海洋戦略を構成するものである。行政機関は、国家の社会経済的な開発を推進するために、これらの全ての機関を調整する法律を立法機関に提案するものとする。
第318条 パナマ運河庁の管理は、以下の方法で任命される、11人の理事によって構成される理事会が責任を負うものとする。:
(1)共和国大統領によって任命される理事1名。理事会を主宰し、運河を所管する国務大臣の地位にあるものとする。
(2)立法機関によって任命される理事1名。自由に任命及び解任することができる。
(3)閣僚評議会の同意を得て、共和国大統領が任命し、立法機関がその議員の過半数によって承認する理事9名。
法律により、理事の在任要件を定めるものとする。これは、本条(3)に規定する理事を3人1組として、3年ごとに期間をずらして任期を更新することを保障するものとする。最初の更新後に、全ての理事の任期は9年とする。
第319条 理事会は、憲法及び法律の定めるその他の権限を損なうことなく、以下の権限を有するものとする。:
(1)法律に従い、運河の管理官及び副管理官を任命及び解任し、その権限を定めること。
(2)閣僚評議会の最終承認を条件として、運河及びその関連サービスの通行料、租税及び手数料を設定すること。
(3)閣僚評議会の承認を得て、法律の定める範囲内で融資を契約すること。
(4)パナマ運河庁及び運河を通過する船舶に対する、サービスを提供するためのコンセッションを付与すること。
(5)運河流域の境界を提案し、閣僚評議会及び国民議会の承認を得ること。
(6)国家海洋戦略の範囲内で、契約、調達並びに運河のよりよい運営、維持、保全及び近代化のために必要なあらゆる事項に関して、行政機関の提案によって立法機関が制定する、一般的な規定を発展させる規則を独占的に制定すること。
(7)この憲法及び法律の定める、その他のあらゆる権限を行使すること。
第320条 パナマ運河庁は、3年ごとの財務に関する計画及び管理の制度を採用する。その制度の下で、国家の一般予算に含まれない年度予算案を、根拠ある決議によって承認するものとする。
パナマ運河庁は、予算案を閣僚評議会に提出する。閣僚評議会は、予算案を国民議会の審議に付す。議会は、この憲法の第9編第2章の規定に従い、これを審査し、可決又は否決するものとする。
予算は、運河の運用、投資、運営、維持、近代化及び拡張の費用、並びに法律及びその管理で規定する不測の事態のための必要な準備金に充当された後に、社会保障の拠出金、提供された公共サービスの料金の支払い、及び経済的な余剰金の国庫への移転を定めるものとする。
予算の執行は、運河管理官の責任とし、理事会又はこれが任命する者が監査する。共和国会計検査院は、その後の統制を通してのみ、これを監査するものとする。
第321条 パナマ運河庁は、毎年、パナマ運河を通過する、通行料支払いの対象となる船舶から徴収したパナマ運河純トン数税、又はそれに相当する租税を国庫に納付するものとする。これらの租税は、パナマ運河庁が設定するものとする。1999年12月31日時点で、パナマ共和国が同様の目的で徴収する租税を下回ってはならない。
パナマ運河の通過を理由として、船舶、その貨物又は乗客、その所有者、船主又はその運航、並びにパナマ運河庁は、他の国又は基礎自治体の課税対象とはならない。
第322条 パナマ運河庁は、能力主義に基づく特別な雇用制度の対象とする。最低限度として、1999年12月31日時点と同様の労働条件及び権利を維持する、雇用に関する一般計画を採用するものとする。労働者及びその年に特別年金を受け取るその他の者で、適用される規則に従って必要と判定される者は、その日までに権利を得ていた者と同等の給付及び条件で、雇用されることを保障されるものとする。
パナマ運河庁は、パナマ国民を優先的に雇用する。組織法により、外国人従業員の雇用を規制し、パナマ人従業員の生活の条件及び水準を低下させないよう保障するものとする。パナマ運河が提供する必要不可欠な国際公共サービスを考慮して、運河の運営は、いかなる事由によっても中断してはならない。
パナマ運河の労働者とその管理局の間の労働争議は、労働者又は労働組合と管理局の間で、法律に定める裁定機構に従って解決されるものとする。その仲裁は行政上の最終審とする。
第323条 本編に規定する制度は、一般規定を定める法律によってのみ発展させることができる。パナマ運河庁は、これらの事項を規制することができる。この権限を行使して制定される全ての規則の写しを、15日以内に、立法機関に送付するものとする。
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