第37条【社会的営為としての労働、労働者及びその家族の保護、障害者雇用の促進】、第38条【労働法】、第39条【労働協約】
第2編【人間の基本的な権利及び保障】
第2章【社会的な権利】
第2節【労働及び社会保障】
第37条 労働は社会的な営みであり、国の保護を享受し、商品とはみなされない。国は、肉体労働であれ知的労働であれ、労働者に雇用を提供し、労働者及びその家族に尊厳ある生活のための経済的な条件を保障するために、利用可能なあらゆる資源を用いるものとする。同様に、身体的、精神的又は社会的な制限又は障害を持つ人の、労働及び雇用を促進するものとする。
第38条 労働は、使用者と労働者の関係を調和させ、その権利及び義務を定めることを主要な目的とする法典によって規制される。これは、労働者の生活条件の改善を目指す一般原則に基づき、特に以下の権利を含むものとする。:
(1)同一事業又は同一施設において、同等の条件の下で、労働者の性別、人種、信条又は国籍にかかわりなく、同一労働同一賃金とする。
(2)全ての労働者は、定期的に決定される最低賃金を受け取る権利を有する。この賃金を決定する際に、生活費、労働の性質、各種の報酬制度、生産地の相違及びその他の類似の基準に、特に留意しなければならない。この賃金は、労働者の家庭の、通常の物質的、道徳的及び文化的な必要を満たすのに十分なものでなければならない。
調整又は固定された価格による出来高払いの労働では、1労働日当たりの最低賃金を保障することが義務付けられるものとする。
(3)法律の定める金額の賃金及び社会的給付は、扶養義務を除いて、差押え、相殺又は源泉徴収を行うことができない。社会保障の負担金、組合費又は租税のために源泉徴収することはできる。労働者の仕事道具を差し押さえることはできない。
(4)賃金は法定通貨で支払わなければならない。賃金及び社会的給付は、使用者に対するその他の債権との関係で、優先的な債権を構成するものとする。
(5)使用者は労働者に対して、労働の年ごとに賞与を支給しなければならない。法律により、賃金との関係でその金額を決定する方法を定めるものとする。
(6)通常の昼間の労働時間は、1日8時間を超えてはならない。1週間の労働時間は、44時間を超えてはならない。
各業種の時間外労働の上限は、法律によって定めるものとする。
夜間労働及び危険又は不健康な業務に従事する労働は、昼間の労働時間より短いものとし、法律によって規制される。労働時間の制限は、不可抗力の場合には適用されない。
法律により、生物学的な理由で作業のリズムが必要な場合に労働時間を区切る休憩の長さ、及び2労働日の間に入れる休日の長さについて定めるものとする。
時間外労働及び夜間労働には、割増賃金が支払われるものとする。
(7)全ての労働者は、法律の定める方法により、労働1週間当たり1日の有給休暇を取得する権利を有する。
前述の日に休憩を取得できなかった労働者は、その日に行った役務に対する割増賃金を受け取り、代休を取得する権利を有する。
(8)労働者は、法律の規定に従い、休日に有給の休息をとる権利を有する。法律により、この規定が適用されない労働の種類について定めるものとする。ただし、その場合、労働者は特別賃金を受け取る権利を有する。
(9)所定の期間に最低限度の役務を提供したことを証する労働者は全て、法律の定める方法で年次有給休暇を取得する権利を有する。休暇を金銭で補償することはできない。休暇を付与する使用者の義務は、休暇を取得する労働者の義務と対応する。
(10)14歳未満の者、及びその年齢以上で、法律によってなお義務教育の対象とされる者は、いかなる種類の労働にも就労させてはならない。
その就労は、その者又は家族の生計のために必要不可欠であると認められる場合に許可することができる。ただし、義務教育の最低限度の就学を妨げないことを条件とする。
16歳未満の者の労働時間は、いかなる種類の労働においても、1日6時間、週34時間を超えてはならない。
18歳未満の者及び女性の不健康又は危険な労働は禁止される。また、18歳未満の者の夜間労働は禁止される。
法律により、危険又は不健康な労働について定めるものとする。
(11)正当な理由なく労働者を解雇した使用者は、法律に従って補償する義務を負うものとする。
(12) 法律により、使用者が退職する常勤労働者に対して、経済的な給付を行う義務を負う条件を定めるものとする。その金額は、賃金及び勤続期間との関係で定められる。
退職は、使用者が受理しなくても効力を生じる。ただし、その給付金の支払いを使用者が拒否した場合、法的に不当解雇が推定されるものとする。
労働者の完全かつ永続的な障害又は死亡の場合、労働者又はその受益者は、自発的な退職の場合に受け取ることのできる給付金に対する権利を有する。
第39条 法律により、集団的な労働契約及び労働協約の締結条件について定めるものとする。そこに含まれる規定は、契約した労働組合に所属していなくても、その契約を締結した企業の全ての労働者に適用される。また、その契約又は協約の有効期間中に企業に雇用される、その他の労働者にも適用される。法律により、各種の経済活動における労働条件を標準化するための手続きを、各種の活動で有効な、集団的な労働契約及び労働協約の大多数に含まれる規定に基づいて定めるものとする。
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