第56条【家庭の保護、未成年者、高齢者及び病人の保護】、第57条【婚姻及びその解消】、第58条【事実婚の効力】、第59条【親権】、第60条【非嫡出子の権利】、第61条【出生及び親子関係の秘密保護】、第62条【家族の財産】、第63条【家庭を保護する機関】
第3編【個人的及び社会的な権利及び義務】
第2章【家庭】
第56条 国は、婚姻、母子及び家庭を保護する。法律により、民事上の身分に関する事項について定めるものとする。国は、未成年者の身体的、精神的及び道徳的な健康を保護し、食料、保健、教育、社会保障及び社会福祉を受ける権利を保障する。同様に、困窮している高齢者及び病人は、この保護を受ける権利を有する。
第57条 婚姻は、家庭の法的な基礎であり、配偶者の権利の平等に基づくものである。法律に従って解消することができる。
第58条 法律上婚姻することができる異性間の事実婚は、特別で安定した条件の下で継続して5年間維持された場合、民事上の婚姻の全ての効力を有するものとする。そのためには、当事者が共同して、市民登録簿に事実婚の登録を申請すれば十分である。この申請がされていない場合、婚姻関係は、その権利を主張するために、配偶者の一方又はその他の利害関係者が、法律の定める手続きによって確認することができる。ただし、その登録が事実に反すると申し立てられた場合、道徳及び法律の見地から検察庁、又は登録によって影響を受ける可能性のある権利を主張する第三者は、登録に反対し、又は登録後に異議を申し立てることができる。
第59条 親権とは、親が子との関係で有する一連の義務及び権利のことである。
親は、子が良好に成育し、十分な身体的及び精神的な発達を得ることができるように、子を養育、教育及び保護する義務を負う。また、子は、親を尊重及び援助する義務を負うものとする。
法律により、社会的利益及び子の利益のために、親権の行使を規制するものとする。
第60条 親は非嫡出子に対しても嫡出子と同様の義務を負う。全ての子は法の下に平等であり、無遺言相続において同等の相続権を有する。法律により、未成年の子又は障害のある子及び障害のある親の、遺言相続における権利を認めるものとする。
第61条 法律により、父子関係の調査を規制するものとする。親子関係の性質に関するいかなる資格も廃止する。出生又は両親の民事上の身分の相違を証明する供述は、出生登録の記録、又はその他の証明書、洗礼証明書若しくは親子関係証明書に記載してはならない。
この憲法の施行前に生まれた子の父親は、本条の規定に従い、その子に関して区分が設定されている記録又は証明書を修正することにより、その子を保護する権利を有する。母親の同意を要しない。子が成年に達している場合は、その同意を要する。
父子関係確認行為において、法律上の影響を受ける者は、この措置に反対することができる。法律により、その手続きについて定めるものとする。
第62条 国は、家庭の社会的及び経済的な向上を保障する。家族の財産は不可譲であり、差押えできないものであることを基礎として、これを構成する財産の性質及び金額を定め、家族の財産を組織するものとする。
第63条 国は、以下の目的のために、家庭を保護する機関を設置する。:
(1)家庭教育を通して、責任ある父性及び母性を促進すること。
(2)親又は保護者が希望する場合に、特別施設で幼児教育を行うこと。
(3)未成年者及び高齢者を保護し、遺棄された者、道徳的に危険な状態にある者又は行動障害を持つ者を保護し、社会的に再適応させること。
法律により、特に父子関係、家庭放棄及び少年の問題行動の調査を担当する、青少年特別裁判所の職務を組織及び決定するものとする。
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