第83条【国民主権】、第84条【国家の領域】、第85条【政府の形態】、第86条【公権力の行使】、第87条【抵抗権】、第88条【大統領職の交替制】、第89条【アメリカの共和国との統合】
第3編【国家、その政府の形態及び政治制度】
第83条 エルサルバドルは主権国家である。主権は国民にあり、国民はこの憲法の定める方法及び範囲内で、これを行使する。第84条 エルサルバドルが管轄権及び主権を行使する共和国の領域は、縮小できないものであり、大陸部に加えて、以下を含むものとする。:
1917年3月9日の中央アメリカ司法裁判所の判決に列挙された島及び小島で、その他の国際法上の根拠に基づいて該当するもの、並びに、同様に、国際法に従って該当するその他の島及び小島で構成される島しょ部の領域。
領海及びフォンセカ湾の共同水域。これは、閉鎖性海域の性質を有する歴史的な湾であり、その管轄権は、国際法及び前段に規定する判決によって決定されるものとする。
領空、地下土壌、大陸棚及び島棚。また、エルサルバドルは、最低潮位線から200海里までの海域、地下土壌及び海底に対して、主権及び管轄権を行使する。これらは全て、国際法の規定に基づくものとする。
国家の領域の境界は、以下の通りである。:
西側は、1938年4月9日にグアテマラで締結された国境条約の規定に従い、グアテマラ共和国と接する。
北側及び東側の一部は、1980年10月30日にペルーのリマで調印された一般平和条約によって画定された区域において、ホンジュラス共和国と接する。境界画定が保留されている区域については、同条約に従い、又は必要に応じて、国際紛争の平和的な解決手段のいずれかに従って設定される区域とする。
東側は、フォンセカ湾の海域において、ホンジュラス共和国及びニカラグア共和国と接する。
南側は、太平洋に接する。
第85条 政府は共和制、民主制かつ代議制である。
政治制度は多元主義であり、政党を通して表現される。政党は、政府内で国民の代表権を行使する唯一の機関である。規則、組織及び運営は、代議制民主主義の原則に従うものとする。
単一の公党の存在は、民主主義制度及びこの憲法の定める政府の形態と両立しない。
第86条 公権力は国民に由来する。政府機関は、この憲法及び法律の定めるその権限及び管轄権の範囲内で、独立してこれを行使する。政府機関の権限は委譲することができない。ただし、公務を執行する際に、相互に連携するものとする。
政府の基本的な機関は、立法府、行政府及び司法府である。
政府の公務員は国民の代理人であり、法律によって明示的に付与される以外の権限を有しない。
第87条 既存の政府形態若しくは政治制度に関する規則の違反、又はこの憲法に掲げる権利の重大な侵害によって変更された憲法秩序を回復することのみを目的とする、国民の反乱の権利は認められる。
この権利の行使は、この憲法の廃止又は改正をもたらすものではない。必要に応じて、違反した公務員を解任し、この憲法の定める方法で交代させるまでの経過措置に限定されるものとする。
この憲法の定める基本的な機関の権限及び管轄権は、いかなる場合も、同一人物又は単一の機関が行使することはできない。
第88条 共和国大統領職の交替制は、既存の政府の形態及び政治制度を維持するために必要不可欠である。この規定に違反した場合、反乱が義務付けられるものとする。
第89条 エルサルバドルは、アメリカの共和国、特に中央アメリカ地峡の共和国との人的、経済的、社会的及び文化的な統合を奨励及び促進するものとする。統合は、関連する共和国との条約又は協定によって実現され、超国家的な職務を有する機関の設置を定めることができる。
また、民主制及び共和制の原則並びに住民の個人的及び社会的な権利の尊重を完全に保障した上で、中央アメリカ共和国の全体的又は部分的な再建を、単一、連邦又は連合の形態で推進するものとする。
統合のプロジェクト及び基礎は、国民投票に付すものとする。
・エルサルバドル共和国憲法(1983)【私訳】へ戻る。