第39条【非常事態における憲法上の権利の制約】、第40条【集合事態及び合囲事態】、第41条【災害事態】、第42条【緊急事態】、第43条【非常事態の宣言の効力】、第44条【非常事態の宣言の限界】、第45条【司法による救済】
第4章【政府】
【非常事態】
第39条 憲法が全ての人に保障する権利及び保障の行使は、以下の非常事態においてのみ制約される。:対外戦争又は内戦、内乱、緊急事態及び災害が発生し、国家機関の正常な機能に重大な影響を与える場合。第40条 対外戦争の場合の集合事態、及び内戦又は重大な内乱の場合の合囲事態は、国民議会の同意を得て、共和国大統領が宣言する。宣言により、その非常事態の影響を受ける区域を決定する。
国民議会は、共和国大統領が集合事態又は合囲事態の宣言をその審議のために提出してから5日以内に、修正案を提出することなく、提案の受諾又は拒否を宣言する。議会がこの期間内に議決しなかった場合は、大統領の提案を承認したものとみなす。
ただし、共和国大統領は、議会が宣言を審議している間、直ちに集合事態又は合囲事態を適用することができる。後者の場合、大統領は集会する権利の行使を制限することしかできない。国民議会が召集されるまでの間に共和国大統領が講じた措置は、その間に第45条の規定が適用される場合を除いて、司法裁判所による審査を求めることができる。
合囲事態の宣言は、共和国大統領がその延長を要求することを妨げることなく、15日間のみ効力を有する。集合事態は、共和国大統領が予めその停止を命じる場合を除いて、対外戦争が継続する限り効力を有するものとする。
第41条 災害が発生した場合、共和国大統領は、その影響を受ける区域を決定し、災害事態を宣言する。
共和国大統領は、災害事態において講じた措置を国民議会に報告する義務を負う。国民議会は、宣言の原因が完全に消滅した場合、宣言の180日後にこれを取り消すことができる。ただし、共和国大統領は、国民議会の同意がある場合に限り、1年を超える期間、災害事態を宣言することができる。前述の同意は、第40条第2段に規定する方法で処理されるものとする。
災害事態が宣言された場合、その区域は、共和国大統領によって任命された国防省の長の直接的な管理下に置かれる。その者は、法律の定める権限及び義務をもって、管轄区域の指揮及び監督に当たるものとする。
第42条 緊急事態は、公共の秩序が著しく乱れ、又は国家の安全に対する重大な損害が生じた場合に、その影響を受ける区域を決定し、共和国大統領が宣言する。緊急事態は、共和国大統領が同じ期間延長することを妨げることなく、15日を超えて延長することはできない。ただし、継続的な延長について、大統領は常に国民議会の同意を必要とする。前述の同意は、第40条第2段に規定する方法で処理されるものとする。
緊急事態が宣言された場合、その区域は、共和国大統領によって任命された国防省の長の直接的な管理下に置かれる。その者は、法律の定める権限及び義務をもって、管轄区域の指揮及び監督に当たるものとする。
共和国大統領は、緊急事態において講じた措置を国民議会に報告する義務を負う。
前述の規定を損なうことなく、共和国大統領は、6度目の延長から30日間延長することができる。ただし、第1段の規定に基づき、常に国民議会の同意を必要とする。
前段に規定する方法で延長が決定された後は、第3段に規定する情報について、両議院に対して15日ごとに報告書を提出しなければならない。
ただし、第4段に基づき延長が承認された後は、国民議会は、元老院議員及び代議院議員の過半数の賛成により、その同意を取り消すことができる。
前段の場合、取消しの要求は、代議院議員又は元老院議員の4分の1以上の要求によるものとする。
第43条 集合事態の宣言により、共和国大統領は、身体の自由、集会の権利、及び労働の自由を停止又は制限する権限を付与される。また、大統領は、結社の権利の行使を制限し、文書及びあらゆる種類の通信を傍受、開封又は捜索し、財産の徴収を命じ、財産権の行使に制限を設けることができる。
合囲事態の宣言により、共和国大統領は、移動の自由を制限し、その住居で、又は刑務所ではなく、一般の犯罪者を拘禁若しくは収監するためのものでもない、法律の定める場所において、人を逮捕することができる。また、集会する権利の行使を停止又は制限することができる。
災害事態の宣言により、共和国大統領は、移動及び集会の自由を制限することができる。また、財産の徴収を命じ、財産権の行使に制限を設け、被災地の正常な状態を速やかに復旧するために必要なあらゆる行政上の臨時措置を講じることができる。
緊急事態の宣言により、共和国大統領は、移動及び集会の自由を制限することができる。
第44条 憲法上の組織法により、非常事態、その宣言、並びにその下で講じられる法的及び行政的な措置の適用について定めるものとする。この法律は、憲法上の正常な状態を速やかに復旧するために厳密に必要なことを定めるものであり、憲法上の機関の権限及び職務、又はその保有者の権利及び免責に影響を与えるものではない。
非常事態の間に講じられた措置は、いかなる場合も、その期間を超えて延長することはできない。
第45条 司法裁判所は、第39条の規定を損なうことなく、非常事態の宣言を発行する当局が主張する根拠又は事情を認定することはできない。ただし、憲法上の権利に影響を与える特定の措置に関して、常に、適当な訴えを通して司法機関に申し立てることが保障されるものとする。
その請求は、法律に従い、補償の対象となる。また、財産権に課された制限は、その本質的な属性又は権限のはく奪を伴い、これによって損害が発生した場合は、補償の対象となるものとする。
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