第1条【個人の自由、家族、国家の義務】、第2条【国家の象徴】、第3条【国家の単一性、地方分権】、第4条【民主共和国】、第5条【主権の行使】、第6条【憲法の規範】、第7条【国家機関による権限行使】、第8条【公務の執行、資産の公開、利益相反】、第9条【テロ行為に対する制裁】
第1章【制度の基本】
第1条 人は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利において平等である。家族は社会の基本的な中核である。
国は、社会を組織及び構成する中間集団を承認及び保護し、その特定の目的を果たすための適切な自治を保障するものとする。
国は、人間に奉仕し、その目的は、共通善を増進することである。そのために、この憲法に定められる権利及び保障を十分に尊重し、国内のコミュニティの各構成員が、精神的及び物質的に可能な限り最大の充足を得ることができるような社会条件を整備することに貢献しなければならない。
国の義務は、国家の安全を守り、国民及び家族を保護し、これを強化し、国のあらゆる部門の調和ある結合を促進し、個人が国民生活において機会均等に参加する権利を保障することである。
第2条 国の象徴は、国旗、国章及び国歌である。
第3条 チリ国家は単一である。
国の行政は機能的で、領域的に分権化され、又は法律に基づき、必要に応じて非集権化されるものとする。
国家機関は、地方分権を推進し、国内の州、県及びコムーナの平等で協力的な開発を促進するものとする。
第4条 チリは民主共和国である。
第5条 主権は本質的に国家に帰属する。国民投票及び定期的な選挙を通して国民により、また、この憲法によって設置される機関によって行使されるものとする。国民の一部又は個人がその行使を主張することはできない。
主権の行使は、人間の本性に由来する本質的な権利の尊重を制限することを認めるものである。この憲法、及びチリが批准し発効している国際条約によって保障される、そのような権利を尊重及び促進することは、国家機関の義務である。
第6条 国家機関は、憲法及びこれに基づいて制定される規則に従わなければならない。また、共和国の制度的な秩序を保障するものとする。
この憲法の規範は、そのような機関の権限者又は構成員、及びあらゆる個人、機関又は団体を拘束する。
この規定に違反した場合は、法律の定める責任を負い、制裁を科されるものとする。
第7条 国家機関は、その構成員を正規に任命し、その権限の範囲内で、法律の定める方法により、有効に行動するものとする。
いかなる高官、個人又は団体も、非常事態を名目とする場合であっても、憲法又は法律によって明示的に付与される以外の権限又は権利を引き受けることはできない。
本条に違反する行為は無効であり、法律の定める責任を負い、制裁を科されるものとする。
第8条 公務の執行は、その権限者に対し、全ての行為に関して誠実性の原則を厳密に遵守する義務を課すものとする。
国家機関の行為及び決定、並びにその理由及び手続きは公開されるものとする。ただし、公開することがその機関の適正な職務の遂行、個人の権利、国家の安全、又は国益に影響を与える場合、一定の要件を満たす法律によってのみ、これらの非公開又は秘密を定めることができる。
共和国大統領、国務大臣、代議院議員及び元老院議員、並びに憲法上の組織法の定めるその他の機関及び公務員は、その利益及び資産を公開で申告しなければならない。
法律により、公務の執行に関して利益相反を伴う財産及び債務の管理を、その機関が第三者に委任する場合及び条件を定めるものとする。また、これを解決するためのその他の適切な措置を検討し、適切な状況において、その財産の全部又は一部の譲渡を命じることができる。
第9条 テロリズムは、いかなる形態であれ、本質的に人権に反するものである。
一定の要件を満たす法律により、テロ行為及びこれに対する刑罰を定めるものとする。この犯罪の責任者は、15年間、以下の資格をはく奪されるものとする。公選の役職であるか否かにかかわりなく、公務を執行すること、教育機関の学長若しくは理事になること、若しくはその教授職を遂行すること、ソーシャルメディアを運営すること、若しくはその役員若しくは管理者になること、又は意見若しくは情報の発信若しくは普及に関する職務を遂行すること。また、前述の期間中、政治団体、教育に関連する団体、又は一般的な、町内会、職能団体、企業団体、労働組合、学生団体若しくは同業組合などの指導者にもなることができない。前述の規定は、その他の資格喪失、又は法律の定めるより長期間の資格喪失を妨げるものではない。
前段に規定する犯罪は、常に、あらゆる法的目的のために、政治的なものではなく一般的なものとみなされる。死刑を無期懲役に減刑する場合を除いて、特別の恩赦を与えることはできない。
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