第83条【検察庁の職務、軍事裁判所】、第84条【憲法上の組織法】、第85条【国家検事総長の任命、任期】、第86条【州検事総長】、第87条【候補者名簿の作成】、第88条【副総長の任命】、第89条【検事総長の解任】、第90条【検事総長の逮捕】、第91条【検事総長の監督権】
第7章【検察庁】
第83条 検察庁と称する自律的かつ階層的な機関は、犯罪を構成する事実、処罰の対象となる関与を決定する事実、及び被告人の無罪を証明する事実の捜査を独占的に指揮し、法律の定める方法で公訴を提起する。また、被害者及び証人を保護するための措置を講じる責任を負う。いかなる場合も、管轄権を行使することはできない。加害者及び法律の定めるその他の者も、同様に刑事訴訟を提起することができる。
検察庁は、捜査中、治安部隊に対して直接命令を発行することができる。ただし、被告人又は第三者に対し、この憲法が保障する権利の行使をはく奪し、又はこれを制限若しくは阻害する行為は、事前に司法機関の承認を要する。要求された機関は、それ以上の手続きを経ることなく、命令に従わなければならない。事前に司法上の許可を要求する場合を除いて、その正当性、適時性、正義又は適法性を評価することはできない。
軍事裁判所に係属する事件における公訴の提起、犯罪を構成する事実、処罰の対象となる関与を決定する事実、及び被告人の無罪を証明する事実の捜査の指揮、並びにその被害者及び証人を保護するための措置の実施は、軍事裁判規範及びその法律の規定に従い、同規範及びその法律が定める機関及び担当官が責任を負うものとする。
第84条 憲法に規定がない場合、憲法上の組織法により、検察庁の組織及び権限、検察官が任命されるために満たさなければならない資格及び要件、並びに副総長の解任事由を定めるものとする。検察官に任命される者は、裁判官の職務を遂行するのに支障となる障害を有してはならない。州検事総長及び副総長は、75歳に達した時に退任する。
憲法上の組織法により、検察官が担当する事件において、捜査を指揮し刑事訴訟を遂行する上での独立性及び自律性の範囲並びに責任を定めるものとする。
第85条 国家検事総長は、最高裁判所が推薦する5人の候補者名簿に基づき、そのために特別に召集する会議において、その議員の3分の2以上の賛成によって元老院の同意を得て、共和国大統領が任命する。元老院が共和国大統領の提案に同意しない場合、最高裁判所は、拒否された候補者の代わりに新たな候補者を提案し、任命が承認されるまでこの手続きを繰り返して、これを完成させるものとする。
国家検事総長は、弁護士資格を10年以上有し、40歳以上で、選挙権を有する国民として必要なその他の資格を有していなければならない。その任期は8年とし、次の任期に再任することはできない。
定年について、国家検事総長に第80条第2段の規定を適用するものとする。
第86条 国の行政上分割された各州に、その州の人口又は地理的範囲のために複数任命する必要がある場合を除いて、州検事総長を1人置くものとする。
州検事総長は、各州の控訴裁判所から提出された3人の候補者名簿に基づき、国家検事総長が任命する。州内に複数の控訴裁判所がある場合、候補者名簿は、最も古い控訴裁判所の長官がそのために特別に招集する、全ての控訴裁判所の合同会議によって作成する。
州検事総長は、弁護士資格を5年以上有し、30歳以上で、選挙権を有する国民として必要なその他の資格を有していなければならない。その任期は8年とし、次の任期に州検事総長に再任することはできない。ただし、検察庁の他の役職に任命されることはできる。
第87条 最高裁判所及び控訴裁判所は、そのために特別に招集する会議において、裁判官の過半数によって決定する5人及び3人の候補者名簿の作成のために公募を行うものとする。5人及び3人の候補者名簿に、現役又は退職した司法府の職員を含めることはできない。
5人及び3人の候補者名簿は、1回かつ同一の投票によって作成される。この投票において、会議の各構成員は、それぞれ3人又は2人に投票する権利を有する。多数決により、上位の5人又は3人が選出される。同数の場合は、抽選によって決定するものとする。
第88条 副総長を置く。憲法上の組織法に従い、公募によって作成される3人の候補者名簿に基づき、各州検事総長の提案によって国家検事総長が任命するものとする。弁護士資格を有し、選挙権を有する国民として必要なその他の資格を有していなければならない。
第89条 国家検事総長及び州検事総長は、共和国大統領、代議院又はその議員10人の要求があった場合に限り、最高裁判所が、無能力、不正行為、又は職務執行上の明白な過失を理由として解任することができる。裁判所は、そのために特別に招集する会議でこの問題を審理し、解任に同意するために、裁判官の多数決によるものとする。
州検事総長の解任は、国家検事総長も要求することができる。
第90条 第81条の規定は、国家検事総長、州検事総長及び副総長に適用する。
第91条 国家検事総長は、その憲法上の組織法に従い、検察庁の運営、懲戒及び経済上の監督権を有する。
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