第92条【憲法裁判所の構成】、第93条【憲法裁判所の権限】、第94条【憲法裁判所による解決】
第8章【憲法裁判所】
第92条 憲法裁判所は、以下の方法で任命される10人の裁判官によって構成される。:(a)共和国大統領が任命する3名。
(b)国民会議によって選出される4名。2人は元老院が直接任命し、2人は事前に代議院が推薦し、元老院が承認又は拒否するものとする。任命又は推薦は、1回の投票で行われ、その承認は、元老院議員又は代議院議員の3分の2以上の賛成を要する。
(c)最高裁判所がそのために特別に招集する会議において、秘密投票によって選出する3名。
裁判官の任期は9年とし、3年ごとに更新するものとする。弁護士資格を15年以上有し、職業上、大学又は公的な活動において卓越した実績を有し、裁判官の職務を遂行するのに支障となる障害を有してはならない。第58条、第59条及び第81条の規定に従うものとする。また、司法官を含む弁護士の職務を執行し、又は第60条第2段及び第3段に規定する行為をしてはならない。
憲法裁判所の裁判官は解任されない。任期が5年未満の補充された裁判官を除いて、再任することはできない。75歳に達した時に退任するものとする。
憲法裁判所の裁判官が退任した場合、 本条第1段に従い、相応の後任者を補充する。後任者はその残りの任期を全うするものとする。
裁判所は、大法廷又は2つの小法廷に分かれて職務を執行する。前者の場合、その定足数は8人以上とし、後者の場合は4人以上とする。裁判所は、これと異なる定足数が必要とされる場合を除いて、単純多数決によって決定し、法律に従って裁定する。裁判所大法廷は、次条(1)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)及び(11)に規定する権限について、最終判決を言い渡すものとする。その他の権限の行使については、その憲法上の組織法の規定に従い、大法廷又は小法廷で職務を執行するものとする。
憲法上の組織法により、その組織、職務及び手続き、並びに職員の配置、報酬制度及び職制を定めるものとする。
第93条 憲法裁判所の権限:
(1).憲法の規範を解釈する法律、憲法上の組織法、及び後者に関連する事項を取り扱う条約の規定の合憲性について、その公布前に統制すること。
(2)最高裁判所、控訴裁判所及び選挙裁判所によって発行された合意命令の合憲性に関する疑義を解決すること。
(3)議会に提出された法案、憲法改正案及び条約の承認手続中に生じた合憲性の疑義を解決すること。
(4)法律の効力を有する政令の合憲性に関する疑義を解決すること。
(5)選挙裁判所の権限を損なうことなく、国民投票の実施に関する合憲性の疑義を解決すること。
(6)通常の裁判所又は特別裁判所の訴訟手続において、その適用が憲法に反する法規範の不適用を、裁判官の多数決で裁決すること。
(7)前項の規定に従って不適用とされた法規範の違憲性を、裁判官の5分の4以上の多数決で裁決すること。
(8)共和国大統領が法律を公布しなかった場合、又は憲法に違反する規定を公布した場合に、その不服申立てを解決すること。
(9)第99条に従って大統領が要求した場合、共和国会計検査院が違憲と表明した共和国大統領の政令又は決定の合憲性を裁決すること。
(10)この憲法の第19条(15)第6段、第7段及び第8段の規定に従い、政治団体、政治運動若しくは政党の違憲性を宣言すること。また、違憲宣言の原因となった事件に関与した者の責任を宣言すること。ただし、影響を受ける者が共和国大統領又は大統領当選者である場合、前述の宣言は、その議員の多数決による元老院の同意を要するものとする。
(11)この憲法の第53条(7)に規定する場合、元老院に報告すること。
(12)元老院の権限に属さない、政治又は行政当局と裁判所の間で生じた管轄権に関する紛争を解決すること。
(13)国務大臣に任命され、その役職に在任し、又は同時に他の職務を遂行する者に関する、憲法又は法律上の欠格事由について裁決すること。
(14)議員の欠格事由、兼職禁止及び罷免事由について裁決すること。
(15)第60条最終段に基づき、議員の無能力を認定し、その辞任を宣告すること。
(16)第63条によって法律に留保される事項に関して、共和国大統領の自律的な規制権の行使によって布告するものを含め、いかなる不備があるにせよ、最高政令の合憲性について裁決すること。
(1)の場合、発議した議院は、法案が議会で完全に処理された日の翌日から5日以内に、その法案を憲法裁判所に送付する。
(2)の場合、裁判所は、共和国大統領、議院又はその議員10人の要求により、これを審理することができる。また、通常の裁判所若しくは特別裁判所に係属中の裁判若しくは訴訟手続の当事者、又は刑事手続の最初の訴訟から、その合意命令の規定によって基本的権利の行使に影響を受ける者は、裁判所に申し立てることができる。
(3)の場合、裁判所は、共和国大統領、議院又はその議員の4分の1以上の要求がある場合のみ、これを審理することができる。ただし、法律の公布又は国民議会による条約承認の通知を送付する前に申し立てるものとする。いかなる場合も、法案又は前述の通知の送付から5日目以降に申し立てることはできない。
裁判所は、重大かつ相当な理由によって10日以内の延長を決定しない限り、申立てを受理してから10日以内に裁決するものとする。
この申立ては、法案の手続きを停止することはない。ただし、共和国大統領が提案する予算法案又は宣戦布告に関する法案を除いて、前述の期間が満了するまで、法案の係争部分を公布することはできない。
(4)の場合、会計検査院が違憲として法律の効力を有する政令を拒否した場合、共和国大統領は10日以内に疑義を提起することができる。また、会計検査院が違憲として争われている法律の効力を有する政令を認めた場合、議院又はその議員の4分の1以上により、これを提起することができる。この申立ては、法律の効力を有する政令が公布されてから30日以内に行わなければならない。
(5)の場合、元老院又は代議院の要求により、国民投票の期日を定める政令が公布された日から10日以内に提起するものとする。
裁判所は、それが適切である場合、裁決において、国民投票の最終的な条文を定めるものとする。
判決の時に国民投票の実施日まで30日未満しか残っていない場合、裁判所は判決後30日から60日の間に新たな期日を設定するものとする。
(6)の場合、疑義は当事者、又は事件を審理する裁判官が提起することができる。裁判所の小法廷は、通常の裁判所又は特別裁判所に係属中の事件が存在すること、争われる法規範の適用が事件の解決において決定的であること、争いが合理的な根拠に基づいていること、及び法律の定めるその他の要件が満たされていることを確認することを条件として、さらに上訴することなく、その疑義の許容性を宣言する責任を負う。小法廷は、違憲を理由とする不適用の訴えの原因となった手続きの停止を裁決する責任を負うものとする。
(7)の場合、本条(6)に従い、以前の判決で法規範の不適用の宣言が判決された後は、職権で違憲宣言を行う権限を損なうことなく、裁判所に違憲宣言を求める訴えが提起されるものとする。その憲法上の組織法の責任として、訴えが提起される場合の要件、及び職権で行動するための手続きを定めるものとする。
(8)の場合、疑義は議院又はその議員の4分の1以上により、争われる規定の公布後30日以内に、又は共和国大統領が法律を公布するべきであった日から60日以内に提起することができる。裁判所が申立てを認めた場合、判決において、施行されていない法律を制定するか、又は誤った制定法を是正しなければならない。
(11)の場合、裁判所は元老院の要求があった場合のみ審理することができる。
本条(10)及び(13)によって裁判所に付与される権限に関して、裁判所に要求するための訴えが提起されるものとする。
ただし、(10)の場合、当事者が共和国大統領又は大統領当選者である場合、その要求は、代議院又はその議員の4分の1以上によって行われるものとする。
(12)の場合、申立ては、紛争関係にある当局又は裁判所が行うものとする。
(14)の場合、裁判所は、共和国大統領又は議員10人以上の要求があった場合のみ、審理することができる。
(16)の場合、裁判所は、争われる規定の公布又は通知から30日以内に、いずれかの議院の要求があった場合のみ、審理することができる。また、共和国大統領の自律的な規制権を超える政令に関連しない不備の場合、議員の4分の1以上によって要求することができる。
憲法裁判所は、(10)、(11)及び(13)に規定する権限を有する場合、及び議員の欠格事由がある場合は、これを良心に従って評価することができる。
(10)、(13)及び(2)の場合、当事者が要求したときは、裁判所の小法廷は、さらに上訴することなく、その許容性について裁決する責任を負うものとする。
第94条 憲法裁判所の解決に対して、上訴することはできない。ただし、同裁判所が、法律に従い、その誤りを是正することを妨げるものではない。
裁判所によって違憲とされた規定は、法案又は法律の効力を有する政令として立法化することはできない。
第93条(16)の場合、争われる最高政令は、裁判所がその要求を認める判決の唯一の効力として、当然に無効となる。ただし、第93条(2)、(4)又は(7)の規定に基づいて違憲と宣言された規範は、その要求を認める判決が官報に掲載された時に廃止されたものとみなす。遡及効はないものとする。
法律の全部若しくは一部、法律の効力を有する政令、又は最高政令若しくは合意命令の違憲性を宣言する判決は、その宣告から3日以内に官報に掲載されるものとする。
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