第272条【軍の性質及び任務、選挙の安全の保障】、第273条【軍の構成】、第274条【他の機関の要請による活動】、第275条【軍事裁判所】、第276条【兵役】、第277条【総司令官である大統領】、第278条【大統領の命令】、第279条【国防大臣及び統合参謀本部議長の要件】、第280条【国防大臣及び統合参謀本部議長の任命及び解任】、第281条【統合参謀本部議長が不在の場合】、第282条【軍の職員の任命及び解任】、第283条【統合参謀本部の職務】、第284条【軍管区】、第285条【軍司令官会議の機能】、第286条【軍司令官会議の構成】、第287条【国防安全保障会議の設置】、第288条【軍事訓練施設】、第289条【国防大学校の設置】、第290条【軍の階級】、第291条【軍事福祉機関】、第292条【武器及び弾薬の製造等】、第293条【国家警察】
第5編【国家権力】
第10章【国防及び治安】
第272条 ホンジュラス軍は、本質的に専門的、非政治的、従属的かつ非審議的な、常設の国家機関である。共和国の領域保全及び主権を守り、平和、治安、憲法による統治、並びに自由な参政権及び大統領職の交代制の原則を維持するために組織される。
治安維持のために国家警察と協力するものとする。
自由な参政権の行使、選挙用品の保管、輸送及び警備、並びに選挙プロセスの安全に関するその他の事項を保障するために、共和国大統領は、選挙の1か月前から選挙の宣言までの間、軍を国家選挙裁判所の裁量に委ねるものとする。
第273条 軍は、最高司令部、陸軍、空軍、海軍、保安部隊及びその組織法の定める機関で構成される。
第274条 軍は、その組織法並びに軍の運営に関するその他の法律及び規則に従うものとする。また、識字率向上、教育、農業、環境保護、道路、通信、保健及び農地改革などの分野で、国務大臣及びその他の機関の要請に応じて協力する。
国際条約に基づき、国際平和任務に参加し、技術的な助言、通信及び輸送などの後方支援を提供し、麻薬密売との闘いに参加し、自然災害及び人命及び財産に影響を与える緊急事態に対処するための人員及び手段を提供し、生態系の保護及び保全、並びにその隊員及びその他の国家的な利害関係者の学術教育及び技術訓練のためのプログラムに参加するものとする。
テロリズム、武器密売及び組織犯罪を撲滅するために、公安省の要請により、公安機関と協力する。また、国家機関及び選挙裁判所を保護するために、これらの要請により、その設置及び運営に協力するものとする。
第275条 特別法により、軍事裁判所の運営について定めるものとする。
第276条 18歳から30歳までの市民は、平時において、教育的、社会的、人道的かつ民主的な制度の下で、自発的に兵役に服する。国は、兵役法に従い、兵士を招集する権限を有する。国際戦争が発生した場合、祖国を防衛し、これに奉仕する能力を有する全てのホンジュラス人は兵士となる。
第277条 共和国大統領は、総司令官として、この憲法、軍の組織法及びその他の関連する法律に従い、軍を直接指揮するものとする。
第278条 共和国大統領の発する命令は、共和国憲法及び適法性、懲戒及び軍事的専門性の原則に従い、遵守及び執行されるものとする。
第279条 国防大臣は、この憲法及びその他の法律の定める要件を満たす市民でなければならない。軍の統合参謀本部議長は、現役の大佐又はこれに相当する階級にある将官又は上級士官で、功績及び指導力を有し、出生によるホンジュラス人であり、法律の定める要件を満たさなければならない。
共和国大統領又はその法的代行者の4親等内の親族及び2親等内の姻族は、統合参謀本部議長になることができない。その任期は3年とする。
第280条 共和国大統領は、国防大臣を自由に任命又は解任することができる。同様に、共和国大統領は、軍の統合参謀本部議長を、軍の組織法に規定する将校の序列に従い、軍司令官会議の構成員の中から選任するものとする。
第281条 統合参謀本部議長が一時的に不在の場合、その職務は統合参謀本部副議長が代行する。副議長も不在の場合又は欠員の場合、その職務は、司令官会議の残りの構成員の中から共和国大統領が任命する将官又は上級士官が暫定的に代行する。上記の全員が不在の場合、共和国大統領が任命する陸軍大佐又はこれに相当する階級の将官又は上級士官が代行するものとする。
統合参謀本部議長の不在が確定的な場合、共和国大統領は、この憲法の第279条及び第280条に定める条件の下で、その任命を行う。統合参謀本部議長が任命されるまでの間、その欠員は、その職務を遂行中の軍の将校が補うものとする。
第282条 軍の職員の任命及び解任は、行政分野においては行政法に従って行われる。
作戦分野において、統合参謀本部議長は、軍の組織構造に従い、その組織法並びに部隊の隊員及び補助要員を含む、施行中のその他の法的規定に従い、任命及び解任を行うものとする。
第283条 軍の統合参謀本部は、国防省の下にある、助言、計画、調整及び監督のための上級技術機関であり、軍の組織法に定める職務を有するものとする。
第284条 国防及び治安維持のために、共和国の領域を軍管区に分割する。軍管区にその長を置き、その組織及び運営は軍の組織法の規定に従うものとする。
第285条 軍司令官会議は、機関に関するあらゆる事項についての諮問機関である。その権限の範囲内の事項については意思決定機関として、軍に提起された事項については軍の上級裁判所として機能する。軍の組織法及び規則により、その運営について定めるものとする。
第286条 軍司令官会議は、その議長である統合参謀本部議長、統合参謀本部副議長、監察総監及び軍司令官によって構成される。
第287条 国防安全保障会議を設置する。特別法により、その組織及び運営について定めるものとする。
第288条 軍士官志願者は、軍事訓練施設において上級レベルの教育を受ける。武器及び軍務のための訓練施設は、機関の必要に応じて組織される。
また、自発的、教育的、社会的、人道的及び民主的な軍務の目的に従い、教育及び訓練のための技術学校を組織するものとする。
第289条 国防大学校を、軍の最高研究施設として設置する。選抜された軍人及び文民の訓練を担い、政治的、経済的、社会的及び軍事的な分野における共同の活動において、国家戦略計画に参加するものとする。
第290条 軍の階級は、その法律に従った厳格な昇任によってのみ取得される。
軍人は、法律の定める以外の方法で、その階級、栄典及び年金をはく奪されることはない。
少尉から大尉までの昇任は、国防大臣の推薦に基づいて共和国大統領が行い、少佐から少将までの昇任は、行政府の推薦に基づいて国民議会が行うものとする。
軍の統合参謀本部は、将校の昇任を行う前に、意見を表明するものとする。
第291条 軍の全ての構成員の保護、福祉及び安全のために、統合参謀本部議長が主宰し、軍事福祉機関に関する法律の規定に従い、軍事福祉機関を運営するものとする。
第292条 武器、弾薬及びこれらに類するものの製造、輸入、流通及び販売は、軍の専権事項として認められる。
第293条 国家警察は、国の常設専門機関であり、党派的な意味で非政治的で、純粋に文民的な性質を有し、治安の維持、犯罪の予防、取締り及び撲滅を保障し、人命及びその財産の安全を保護し、当局及び公務員の決議、規定、命令及び法的決定を、全ての人権を厳格に尊重した上で執行する責任を負う。
国家警察は、特別法によって定めるものとする。
・ホンジュラス共和国憲法(1982)【私訳】へ戻る。