古くて新しい賢人政治という思想。
1 賢人政治と現代中国
民主政は衆愚政治に帰着する可能性が高いので、少数の賢人が指導した方がよいという考え方がある。特に最近、高度に発展した科学技術により国民を監視することが可能になり、中国のような共産党の指導力が強い国家の方が、従来型の民主国家よりうまく運営できるのではないかという意見さえある。
中国には中国なりに民意を反映する方法があるので、民主政か独裁政かという二者択一ではなく、国や地域によって程度が違って特色があると捉えるべきである。
しかし、最近の習近平国家主席は反腐敗運動で政敵を攻撃し、国家主席の任期を撤廃するなど、このままでは歴代の指導者が守ってきた集団指導体制が形骸化してしまう恐れもある。
2 権力は腐敗する
賢人政治の問題は、実は古くから議論されてきた。古代ギリシアの哲学者には、民主政が衆愚政治に堕することを嫌い、哲人政治を主張する者もいた。
しかし現代に至っても、自由と民主主義以外の選択肢はまだ取れないだろう。
民主主義によって国民が国家を監視しなければ、国家権力は腐敗してしまう。
「権力は腐敗の傾向がある。絶対的権力は絶対的に腐敗する」というある歴史家の指摘は正しい。
これは国家に限らず、学校や会社等の身近な組織でも観察できる事実である。
大きな組織に人事異動があるのは、これを防止するためでもあるのだろう。
特にアジアの国や地域では、伝統的に宗族が政治システムとして機能し、一定の腐敗は織り込み済みという面もある。
3 空気の暴走と衆愚政治
社会の自浄能力を担保し、自由で活力ある経済を維持するためには、自由と民主主義を守るしかない。しかし、衆愚政治になることも避けなければならないので、政治制度を考える際には民主主義の程度を匙加減する必要がある。
民主政には直接民主制と間接民主制があるけれど、できるだけ間接制側に寄せて賢人政治に近付けた方がよいのだろう。
直接制側に寄せてしまった場合には、余程注意しないと政治家は国民の間で形成される空気の暴走を追認せざるを得なくなり、衆愚政治はやがて国家を滅ぼすことになる。
・真・三本の矢、夢を真面目に語れる愚か者でなければ、政治学など研究する意味がない。:https://tanakah17191928.blogspot.com/2018/10/blog-post_8.html
・私的民主主義論入門。:https://tanakah17191928.blogspot.com/2019/11/blog-post_48.html
・私的政治哲学入門。:https://tanakah17191928.blogspot.com/2019/11/blog-post_29.html
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