私的民主主義論入門。
1 監視社会
AIなどの科学技術の発展により、国民を監視して治安を維持することが技術的に可能になると言われている。確かに、みんな監視されていれば、誰も悪いことはできないだろう。
古典的にはベンサムのパノプティコンが引き合いに出されるけれど、それは刑務所等の施設の構想だった。
政治哲学的にも結構ホットな話題である。
全員監視すると社会から自由がなくなるけれど、犯罪がなくなればそれは幸福な社会ではないかという話である。
自由と幸福がトレードオフになるという奇妙で興味深い話である。
2 政体論
監視社会は独裁国家と親和性が高い。高度な科学技術によって国民を完全に監視することが可能になれば、そういうことが政治的に可能な独裁国家が優位になり、民主国家が劣後するという議論がある。
本当にそんな未来がやってくるのだろうか。
チャーチルは、「実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが」と言った。
民主主義が最善だという訳ではないけれど、他よりましだから民主主義を選択せざるを得ないと。
3 民主主義の欠陥
民主主義の欠陥は度々指摘されてきた。投票の逆理はおもしろくて有名なパラドックスである。
民主主義の欠陥が学問的に論証されて、大きな衝撃を与えたことがある。
アローの不可能性定理、いわゆるアローの定理である。
現代政治学における社会選択理論はこの定理から始まったと言える。
素朴な疑問ではあるけれど、民主主義が最善ではないとしたら、それよりも良い政体はあるのだろうか。
理論的にも、そして現実的にも。
4 保守と革新
人間は全知全能ではない。時々間違いを犯す。
「過ちては改むるに憚ること勿れ」とは有名な格言である。
論語だから孔子の教えである。
独裁国家で政権が間違いを犯した場合、国民はそれをどのようにして正すことができるのだろうか。
国民の暴動による革命、一部政治勢力によるクーデターなどがある。
橋下徹氏が民主主義について、政治家の首をはねることなく、選挙と投票によって政治を変えることができる素晴らしい制度だと述べていた。
民主主義では、選挙による政権交代によって、国家の方針を変更したり、腐敗や汚職をリセットしたりすることができる。
5 自由
民主主義の設計方法はいろいろ考えられる。民主主義は最善の政体ではないけれど、最善の制度設計を考える余地はまだまだ残されている。
自由に思考することができるという自由自体が社会の重要な要素、インフラである。
「幸福な社会のインフラとして重要なのは、自由である。
決して、高度な科学技術による人民の監視によって実現されるべきものではない。」
・私的国際金融論入門。:https://tanakah17191928.blogspot.com/2019/06/blog-post_12.html
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