前文
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チャドは、700万年以上前のヒトであるトゥーマイが発見された人類発祥の地である。また、チャド湖流域最古の民族であるサオ族の土地でもある。文化的多様性及びその歴史を誇るチャドは、帝国、王国及び伝統的な首長の土地であり、現在そこに暮らす多様な人々を束ねてきた。
1958年11月28日に共和国として宣言したチャドは、1960年8月11日に国際上、国家主権を獲得した。
それ以来、その政治的及び制度的な発展は波乱に満ちたものであった。
長年の戦争、専制及び一党独裁により、民主主義及び政治的多元主義の文化の形成は妨げられてきた。
歴代の様々な政権が、地域主義、部族主義、縁故主義、共同体主義、社会的不正義並びに個人及び集団の基本的な人権及び自由の侵害を生成及び維持してきた結果は、戦争、政治的暴力、憎悪、不寛容並びにチャド国民の異なる構成者間の不信であった。
半世紀以上にわたってチャドを揺るがしてきた政治的及び制度的な危機は、尊厳と自由、平和と繁栄の国家を建設するというチャド国民の決意を弱めることはなかった。
1993年1月15日から4月7日までンジャメナで開催された主権国家会議において、政党、市民社会団体、国家機関、伝統的及び宗教的な権力者、農村地域の代表者並びに辣腕の指導者が一堂に会し、チャド国民の信頼を回復し、新しい時代を切り開いた。
この新しい時代は、国民投票によって採択された1996年3月31日の憲法に明文化され、これは2005年7月15日の憲法制定法第08/PR/2005号及び2013年7月3日の憲法制定法第013/PR/2013号によって改正された。
数十年にわたる民主的な生活の後に、2018年に開催された第1回国民フォーラムを経て、2018年5月4日に新しい憲法が採択及び公布され、これは第2回フォーラムを経て、2020年12月14日の憲法制定法第017/PR/2020号によって改正された。
2021年4月、現職大統領の悲劇的な死去に伴う国家元首の交代は、憲章に明文化され、暫定軍事評議会が主導する移行期間への道を開くこととなった。
自国の将来を憂慮したチャド人は、2022年8月20日から10月8日まで、包括的かつ主権的な国民対話を開催し、繰り返される紛争の連鎖から抜け出し、国家の再建を通して平和と繁栄に断固として向かうという正当な願望を表明するために結集した。
その結果、我々チャド国民は、:
・この憲法により、民族、宗教、地域及び文化の多様性を尊重し、法治国家を建設し、公共の自由及び基本的人権、人間の尊厳及び政治的多元主義並びに連帯と友愛というアフリカの価値観に立脚した統一国家を構築し、共に生きるという我々の意志を確認し、
・政治的、民族的及び宗教的な寛容、許容並びに宗教間及び文化間の対話は、我々の団結及び国民統合の強化に寄与する基本的価値観であることを確認し、
・誠実、信義、透明性、公平性及び説明責任は、公共生活を道徳化することができる共和国的及び倫理的な価値観であることを確認し、
・1945年の国際連合憲章、1948年の世界人権宣言並びに1981年の人及び人民の権利に関するアフリカ憲章によって定義される人権の原則に対する我々の支持を再確認し、
・この憲法に違反して武力によって権力を奪取又は行使する個人若しくは集団又は国家機関に対して抵抗し、これに服従しない我々の権利及び義務を厳粛に宣言し、
・恣意性、専制、不正、腐敗、横領、縁故主義、氏族主義、部族主義、共同体主義、宗教性及び権力の簒奪に基づく政策を実施する政権に対して、我々は全面的に反対することを確認し、
・平等、互恵主義、相互尊重、国家主権、領域保全及び不干渉の原則に基づき、自由、正義及び連帯の理想を共有する全ての諸国民と平和及び友好をもって協力するという我々の意志を確認し、
・アフリカ統合の大義に対する我々の支持並びに小地域及び地域統合を実現するために全力を尽くすという我々の責務を宣言し、
・この憲法を国の最高法規として厳粛に採択する。
この前文は、憲法の不可分の一部を構成するものである。
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