第35条【指導目標及び原則】、第36条【政治的目標】、第37条【経済目標】、第38条【教育、科学、芸術及び文化】、第39条【家庭】、第40条【子ども、若者及びスポーツ】、第41条【環境】、第42条【南スーダン共和国の防衛】、第43条【外交政策】、第44条【留保】
第3編【基本目標及び指導原則】
第1章【目標及び原則】
第35条 あらゆる階層の政府及びその機関並びに市民は、この憲法に含まれる目標及び原則を指針とするものとする。2 この憲法は、道路、学校、空港、コミュニティ施設及び病院を建設し、清潔な水、食糧安全保障、電力及び電気通信サービスを全国に提供することにより、財源を投入し、国民に有用な雇用を提供し、その生活を向上させることに専念し、個人の尊厳を高め、国民の特別な必要に対処するよう解釈及び適用されなければならない。
第36条 あらゆる階層の政府は、民主主義の原則及び政治的多元主義を推進し、適切な階層の政府がその事務を最良に管理及び指揮できるよう分権化及び権限委譲するという原則を指針とするものとする。
2 あらゆる階層の政府は、以下の事項を行うものとする。:
(a)平和を推進及び強化し、社会経済の発展のための安全で安定した政治環境を形成する。
(b)南スーダン国民間の国民的な調和、統合及び平和的共存を促進する国民的和解及び癒しの包括的プロセスを開始する。
(c)平和、団結、協力、理解、寛容並びに相互の慣習、伝統及び信仰を尊重する文化を国民に醸成する。
(d)国民のエネルギー及び資源を復興し、及び発展させるために活用する。
3 南スーダン国民の安全及び福祉は、あらゆる階層の政府の第一の義務である。
4 政府の構成は、国民統合を促進し、国家への忠誠を高めるために、民族、地域及び社会の多様性を考慮しなければならない。
5 全ての公職は、国民のために信託されたものであり、指導的かつ責任ある地位にある者は、その職務及び任務において国民に説明責任を負うものとする。
第37条 経済開発戦略の主要な目標は、以下のとおりとする。:
(a)貧困の撲滅。
(b)ミレニアム開発目標の達成。
(c)富の公平な分配の保障。
(d)収入の不均衡の是正。
(e)南スーダン国民の尊厳ある生活水準の達成。
2 あらゆる階層の政府は、以下の事項を行うものとする。:
(a)生産を増大させ、効率的で自立した経済を構築し、自由市場及び独占の禁止を奨励する政策を通して、繁栄を達成するために経済を発展させ、規制すること。
(b)国民の利益のために、土地、水、石油、鉱物、動物及び植物を含む天然資源の持続可能な管理及び利用を保護及び保障する。
(c)民間部門、特に先住民族の起業家の発展を促進し、復興及び開発に効果的に参加する能力を有する成長可能な民間部門を確立し、発展させる。
(d)民間のイニシアティブ及び自立を促進し、国民に影響を与える開発計画及びプログラムの策定及び実施に国民を巻き込み、開発における機会均等の権利を強化するために必要なあらゆる措置を講じる。
(e)地方及び外国の投資を奨励及び誘致するための適切な政策及び立法を採用することにより、農業、工業及び技術開発を促進する。
(f)様々な地域の均衡ある、統合された公平な開発をもたらすために必要な措置を講じ、農村コミュニティの放置の原因となっている都市偏重の開発及び政策を回避するための戦略として、農村開発を奨励及び促進する。
3 国は、国民の福祉のために、国富があらゆる階層の政府間で公平に分配されるよう保障しなければならない。
第38条 あらゆる階層の政府は、以下の事項を行うものとする。:
(a)開発のために必要な資格を有する幹部を育成するために、それぞれの階層で教育を推進する。
(b)開発に向けた教育及び科学研究の促進のために、公共、民間及びコミュニティの資源及び能力を活用する。
(c)芸術及び工芸を奨励及び振興し、政府機関及び市民による後援を促進する。
(d)文化の多様性を認め、教育及びメディアを通して、多様な文化が調和して繁栄し、表現されるよう奨励する。
(e)国民的、歴史的又は宗教的に重要な文化遺産、記念碑及び場所を破壊、冒涜、違法な撤去又は違法な輸出から保護する。
(f)人間の尊厳を高め、本章に定める基本的な目標及び原則に適合する国民の文化を保護、保存及び促進する。
2 国民政府は、以下の事項を行うものとする。:
(a)高等教育機関における学問の自由を保障し、研究の倫理的条件の範囲内で、法律によって規制される科学研究の自由を保護する。
(b)紛争期間中の教育サービスの崩壊によって生じた教育格差を解消するために、技能及び職業訓練を含む中等教育及び高等教育を利用可能なものとするために必要な財源を確保するよう努める。
3 全ての人又は集団は、法律の定める条件及び基準に従い、あらゆる階層の私立学校及びその他の教育機関を設立及び維持する権利を有する。
第39条 家庭は社会の自然かつ基礎的な単位であり、法律によって保護されるものとする。
2 あらゆる階層の政府は、家庭の福祉を増進し、その保護のために必要な法律を制定するものとする。
3 子どもを養育することは、両親の権利及び義務である。
4 子どもは、法律の定める場合を除いて、両親又は子どもを養育する法律上の権利を有する者の意思に反して、これを引き離してはならない。
第40条 あらゆる階層の政府は、以下の事項を行うものとする。:
(a)子ども及び若者の福祉のために政策を採択し、施設を提供し、精神的及び身体的に成長し、精神的及び身体的な虐待及び放置から保護されるよう保障する。
(b)全ての市民のためのレクリエーション施設及びスポーツを促進し、若者が潜在能力を開発できるよう強化する。
(c)人気のあるスポーツ機関、先住民族の競技及びその持続可能性を確立、保護及び支援する。
第41条 全ての人又はコミュニティは、清潔で健全な環境に対する権利を有する。
2 全ての人は、現在及び将来の世代の利益のために環境を保護する義務を負う。
3 全ての人は、現在及び将来の世代の利益のために、以下のような適切な立法及びその他の措置を通して、環境保護を保障する権利を有する。
(a)汚染及び生態系の悪化を防止する。
(b)保全を推進する。
(c)遺伝的安定性及び生物多様性を保護するために、合理的な経済及び社会開発を促進し、生態学的に持続可能な開発及び天然資源の利用を保障する。
4 あらゆる階層の政府は、環境を保護及び保全しつつ、国民の基本的必要を満たすことを保障するエネルギー政策を立案するものとする。
第42条 南スーダン共和国の防衛は、全ての市民の名誉及び義務である。
2 国は、法律により、戦闘員、負傷したヒーロー及びヒロイン、殉教者の家族並びに行方不明者の看護を提供するものとする。
第43条 南スーダン共和国の外交政策は、国益に資するものであり、以下の事項を達成するために、独立性及び透明性をもって実施されるものとする。:
(a)普遍的な平和及び安全の強化、国際法及び条約の義務の遵守並びに公正な世界経済秩序の醸成を目的とする、特に国際連合、アフリカ連合並びにその他の国際機関及び地域機関における国際協力の推進。
(b)進行中の地域計画及びフォーラムの中で、アフリカ経済統合を達成し、これらの計画で予見されたアフリカの統合及び協力を促進すること。
(c)地域的及び国際的な人権及び基本的自由の尊重を強化すること。
(d)文明間の対話を促進し、正義及び共通の人類の運命に基づく国際秩序を確立すること。
(e)国際法及び条約の義務の遵守並びに交渉、調停、仲裁及び裁定による国際紛争の平和的解決の追求。
(f)地域内の国家間の経済協力の強化。
(g)他国の問題への不干渉、全ての近隣諸国との善隣外交及び相互協力の推進並びに他国との友好的かつ均衡ある関係の維持。
(h)国際的及び国境を越えた組織犯罪、海賊行為及びテロリズムの撲滅。
第44条 この憲法に別段の定めがある場合又は正式に制定された法律によって保障される場合を除いて、本章に規定する権利及び自由並びに本章に含まれる規定は、それ自体、司法裁判所において拘束力を有するものではない。ただし、ここに明示された原則は、統治の基本であり、国は、特に政策及び法律を制定する際に、これを指針とするものとする。
・南スーダン共和国(暫定)憲法(2011)【私訳】へ戻る。