『幽玄鉄道の夜(8)【豊橋公園広場のデイダラボッチ】』第6章
国民的な実力派歌手・杜口ヒロコが、幽玄鉄道の旅人・草野崇と豊橋公園広場でデイダラボッチを目撃するの巻 第6章 次の駅へ 呼吸が落ち着いてから、ヒロコが草野に言った。 「私、豊橋公園から最寄りのホテルで一泊するつもりだったんですけど、次の駅でホテルを探すことにします。」 草野は彼女に答えた。 「そうですね。それがいいでしょう。」 ヒロコが彼に聞いた。 「あの化け物、一体なんだったんでしょう?あんなの初めて見ました。本当に食べらてしまうんだと覚悟しました。」 草野は答えた。 「あれはデイダラボッチですね。実際に見るのは、私も初めてです。近代化した街で暮らす人々は、闇への恐怖を忘れてしまいました。デイダラボッチはそれが悔しくて悔しくて、山から下りてきたのでしょう。」 ようやく列車が動き出した。草野は車窓から外を伺った。街は夜の闇に沈み、ただただ真っ暗な景色が続いた。 この夜の闇の中に、現代人から忘れ去らてしまった様々なモノノケが、息を潜めてこちらを伺っているのだろうか。 ヒロコも黙って車窓から景色を眺めていた。列車が後もう少し走れば、やがて彼女が下りる次の駅に着くだろう。 ・ 『幽玄鉄道の夜(8)【豊橋公園広場のデイダラボッチ】』目次に戻る。