平成25年度第2回高認国語問4【漢文】
1 原文(書き下し文) 宋王に見ゆる者有り、車十乗を錫ふ。その十乗を以て荘子に驕稚す。荘子曰はく、「河上に家貧にして、緯蕭を恃みて食ふ者有り。その子淵に没して、千金の珠を得。その父その子に謂ひて曰はく、 『石を取り来りてこれを鍛け。夫れ千金の珠は、必ず九重の淵の、而も驪龍の頷下に在り。子能く珠を得たるは、必ずその睡に遭ひたればなり。驪龍をして寤め使めば、子尚ほ奚の微かこれ有らん』と。 今宋国の深さ、直に九重の淵のみに非ざるなり。宋王の猛、直に驪龍のみに非ざるなり。子能く車を得たるは、必ずその睡に遭ひたればなり。宋王をして寤め使めば、子は齏粉為らん」と。 (『荘子』より) 2 現代語訳 宋王に会った者がいて、十台もの高価な馬車を頂いた。その十台を荘子に見せびらかした。荘子は言った。「河上に家が貧しくて、葦で作った簾によって生計を立てている者がいた。その子どもが淵に潜って、千金の珠を得た。父はその子に言った。 『石を取ってきてこれを砕いてしまえ。そもそも千金の珠は、必ず非常に深い淵の、しかも黒い竜のあごの下にある。お前が珠を得ることができたのは、必ずその眠っている時に遭遇したからである。黒い竜が目を覚ませば、お前はそれでも小さなかけらでも残せるだろうか。』 今の宋国の深さは、ただ非常に深いだけの淵ではない。宋王の性格の激しさは、ただの黒い竜ではない。あなたが馬車を得ることができたのは、必ずその眠っている時に遭遇したからである。宋王が目を覚ませば、あなたは細かく砕かれることになるだろう。」 ・ 高等学校卒業程度認定試験(高認)国語過去問古文・漢文現代語訳に戻る。