第21条【遡及法、私権剥奪法及び事後法の禁止、違法な捜索及び押収の禁止、罪状を通知される権利及び黙秘権、保釈の権利、過度の保釈、罰金及び刑罰の禁止、拷問及び非人道的な取扱いの禁止、裁判所に引致される権利、人身保護令状の権利、死罪又は破廉恥罪について大陪審によって起訴される権利、弁護士の権利の不可侵、服役後又は恩赦によって市民的な権利及び自由を享受する権利】、第22条【財産権及びその範囲、市民でない宣教師、教育者及び慈善団体の不動産所有権、共和国が外国政府に不動産を譲渡する権利】、第23条【婚姻中又はその後の配偶者の財産権、財産分割に関する法律の制定】、第24条【共和国が私有財産を収用する権利、帰化を取り消された市民の財産没収、犯罪の刑罰に相続権の没収を含めることの禁止】、第25条【契約の権利を損なうことの禁止】、第26条【基本的権利の侵害について共和国又はその他の者を提訴する権利】
第3章【基本的な権利】
第21条(a)何人も、犯罪の実行時に施行されていなかった法律又は刑罰を適用されることはない。議会は、私権剥奪法又は事後法を制定してはならない。(b)何人も、捜索される人物又は場所を具体的に特定し、捜索の目的を明記する、厳粛な宣誓又は確約によって裏付けられる正当な理由に基づき適法に発行される令状による場合を除いて、刑事責任又はその他の目的に基づくか否かにかかわりなく、その身体又は財産の捜索又は押収を受けることはない。ただし、逮捕当局が犯罪の実行中又はその者の追跡中に行動する場合、捜索令状がなくても捜索又は押収を行うことが認められる。
(c)被疑者又は被告人は直ちに、罪状、黙秘権及び供述が裁判において不利な証拠として使用される可能性があることについて、詳細に通知されなければならない。これらの者は、捜査の各段階において弁護士に相談する権利を有する。また、弁護士の立会いがなければ尋問を受けない権利を有する。弁護士が不在の場合に被告人が行った自白又はその他の供述は、裁判において証拠として採用されないものとみなす。
(d)(i)全ての被告人は、死刑又は法律の定める重大な犯罪で起訴された場合を除いて、罪の重さに応じて個人の保証金又は十分な保証人によって保釈される。
(ii)過度の保釈を要求してはならない。また、過度の罰金又は刑罰を科してはならない。
(e)起訴、逮捕、制約、拘禁又はその他の方法によって拘束されている者は、拷問又は非人道的な取扱いを受けてはならない。また、軍人を除くいかなる者も、軍事施設に収容又は拘禁されてはならない。いかなる者も、最初に管轄裁判所において有罪判決を受けた者でない限り、有罪判決を受けた受刑者の中に収容若しくは拘禁され、又は受刑者として処遇されてはならない。議会は、この規定に反して行動する警察官、公安職員、検察官、行政官又はその他の公務員を刑事犯罪とし、これに対する適切な刑罰を定めるものとする。そのような公務員の行為によって損害を受けた者は、これに科される刑罰とは別に、民事上の救済を受けることができる。
(f)逮捕又は拘禁された全ての者は、48時間以内に正式に起訴され、管轄裁判所に引致されなければならない。裁判所は、被告人に対する疎明資料が存在すると判断した場合、その罪状を記載した正式な逮捕状を発行し、迅速な裁判を行うものとする。予防拘禁を行ってはならない。
(g)人身保護令状に対する権利は、人権の保護に不可欠であり、常に保障される。逮捕又は拘禁され、所定の期間内に裁判所に引致されない者は、その結果、この権利を行使することができる。
(h) 何人も、弾劾、軍で生じた事件及び軽微な犯罪の場合を除いて、大陪審による起訴によらない限り、死罪又は破廉恥罪の責任を追及されることはない。そのような場合は全て、被告人が適切な理解をもって、陪審裁判を受ける権利を明示的に放棄しない限り、近接の陪審による迅速、公開かつ公平な裁判を受ける権利を有する。全ての刑事事件において、被告人は、自己の選任する弁護士に代理され、自己に不利な証人と対決し、自己に有利な証人を得るための強制手続を行う権利を有する。自己に不利な証拠を提出するよう強制されてはならない。また、合理的な疑いを超える反対の証明がされるまで無罪と推定される。何人も二重の危険にさらされてはならない。
(i)弁護士に対する権利及び弁護士の権利は不可侵である。弁護士と依頼人の関係を妨げてはならない。人が刑事犯罪で訴追される全ての裁判、審理、尋問及びその他の手続きにおいて、被告人は、自己の選任する弁護士に対する権利を有する。被告人がそのような代理人を確保できない場合、共和国は、その権利の保護を保障するために、法律扶助サービスを利用できるようにしなければならない。また、いかなる弁護士も、その依頼人の罪状又は有罪にかかわりなく、法律サービスの提供を妨害又は処罰されることはない。いかなる弁護士も、政治的な理由で業務から締め出されることはない。
(j)刑事犯罪の有罪判決により、市民的な権利及び自由の享受を剥奪された者は、服役及び科されたその他の刑罰の執行又は行政上の恩赦により、自動的にこれを回復するものとする。
第22条(a)全ての人は、単独で、又は他者と共同して、財産を所有する権利を有する。ただし、リベリア市民のみが、共和国内において不動産を所有する権利を有する。
(b)ただし、私有財産権は、共和国の土地上若しくは地下にある鉱物資源又は共和国の海及び水路の下にある土地には及ばない。海及びその他の水路及びその地下にある全ての鉱物資源は共和国に帰属し、共和国全体のために利用するものとする。
(c)市民でない宣教師、教育者及びその他の慈善団体は、その財産を取得した目的のために使用する限りにおいて、これを所有する権利を有する。
(d)共和国は、相互主義に基づき、外交活動のために永続的に使用される財産を外国政府に譲渡することができる。この土地は、リベリア政府の明示的な許可がある場合を除いて、他の当事者に移転若しくはその他の方法で譲渡し、又はその他の目的で使用してはならない。そのように譲渡された全ての財産は、外交関係が停止した場合、共和国に復帰させることができる。
第23条(a)婚姻時に人が所有し、又はその後に自己の労働の結果として取得する財産は、婚姻の前後にかかわりなく、配偶者の債務又はその他の義務の清算のために保有又はその他の方法で充当されてはならない。また、法律によって男性又は女性に保障される財産は、自由かつ自発的な同意による場合を除いて、その配偶者によって譲渡又は管理されてはならない。
(b)議会は、財産分割を規定する法律を制定し、法定及び慣習上の婚姻の配偶者の相続権を定め、そのような婚姻の生存配偶者及び子どもに十分な保護を与えるものとする。
第24条(a)私有財産の不可侵は共和国によって保障される。ただし、収用は、武力紛争の場合又は公衆の衛生及び安全が脅かされる場合、若しくはその他の公共目的のために認めることができる。ただし:
(i)収用の理由が明示されなければならない。
(ii)正当な補償金が速やかに支払われなければならない。
(iii)収用又は提供される補償は、その財産の所有者が裁判所において自由に争うことができる。そのような訴訟の提起により、刑罰を受けることはない。
(iv)公共の用に供するために収用された財産がその用に供されなくなった場合、共和国は、前所有者又はその所有者を通して財産に対する権利を有する者に、その財産を再取得するための第一優先権を付与するものとする。
(b)帰化証明書を取り消された者が所有する全ての不動産は、リベリア市民の配偶者及び/又は直系相続人がいない限り、共和国に帰属する。その場合、不動産は、相続法に従って譲渡されるものとする。
(c)国家反逆罪又はその他の犯罪に対する刑罰を定める議会の権限は、相続権の剥奪又は没収を含まない。ただし、有罪判決を受けた者による相続権の享受は、裁判によって科された拘禁刑の期間中、延期される。ただし、有罪判決を受けた者に未成年の子ども及び配偶者がある場合、優先順位の高い配偶者又は近親者がこれを管理するものとする。いかなる刑罰も、有罪判決を受けた者が宣告時又はその後に所有する財産について、その権利を有する他の者が相続、享受又は没収することを妨げるものではない。
第25条 契約義務は共和国によって保障される。この権利を損なう法律を制定してはならない。
第26条 個人又は団体が、この憲法又は法律若しくは指令の下で認められる権利が憲法に反すると主張する場合、その個人又は団体は、違憲判決を含む裁判所の指示、命令又は令状の特権及び利益を求めることができる。また、政府又はその権限に基づいて行動する者の行為によって損害を受けた者は、財産、契約、不法行為又はその他であるかにかかわりなく、適切な救済を求めて訴訟を提起する権利を有する。政府に対して提起するそのような訴訟は全て、請求裁判所に提起する。請求裁判所の判決に対する上訴は、直接最高裁判所に提起するものとする。
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