1 原文 冬、晋荐りに饑う。 糴を秦に乞はしむ。 秦伯、子桑に謂ふ、 「諸を与へんか。」と。 対へて曰はく、 「重く施して報いば、君、将た何をか求めん。 重く施して報いずんば、其の民必ず攜れん。 攜れて討たば、衆無くして必ず敗れん。」と。 百里に謂ふ、 「諸を与へんか。」と。 対へて曰はく、 「天災の流行するは、国家代はるがはる有り。 災を救ひ隣を恤むは、道なり。 道を行へば、福有り。」と。 丕鄭の子、豹、秦に在り。 晋を伐たんことを請ふ。 秦伯曰はく、 「其の君是れ悪しきも、其の民何の罪かある。」と。 秦是に於いて、粟を晋に輸す。 (『春秋左氏伝』より) 2 現代語訳 冬、晋の国は昨年に続き不作であった。 秦に使いを送り米を送るよう願い求めさせた。 秦伯は子桑に言った。 「これを与えようか。」 答えて言った。 「大いに恩恵を施して晋がその恩に報いたら、陛下、何も求めることはないでしょう。 大いに恩恵を施して晋がその恩に報いなければ、その民は必ず離れるでしょう。 民の離れた後に討てば、無勢となり必ず敗れるでしょう。」 百里に言った。 「これを与えようか。」 答えて言った。 「天災の流行は、国家が代わる代わる変遷してもあります。 天災を救い隣国を憐れむことは、人の行うべき道です。 道を行えば、福があります。」 丕鄭の子、豹が秦にいた。 晋を討伐することを願い出た。 秦伯は言った。 「晋の君主が悪人でも、その民には少しの罪もない。」 秦は結局、粟を晋に輸送した。 ・ 愛知県公立高校入試過去問古文・漢文現代語訳に戻る。