1 原文(書き下し文) 楚人に山鶏を担ふ者有り。 路人問ひて曰はく、「何の鳥ぞやと。」 担ふ者之を欺きて曰はく、「鳳凰なりと。」 路人曰はく、「我鳳凰有るを聞くこと久し。今真に之を見る。汝之を売るかと。」 曰はく、「然りと。」 乃ち千金を酬ゆるも、与えず。倍を加へんことを請ふに、乃ち之を与ふ。 方に将に楚王に献ぜんとするも、宿を経て鳥死す。 路人其の金を惜しむに遑あらずして、惟以て献ずるを得ざることを恨むのみ。 国人之を伝へ、咸以為へらく真鳳にして貴ければ、之を献ぜんと欲するはと宜なり。 遂に楚王に聞ゆ。王其の己に献ぜんと欲するに感じ、召して厚く之に賜ふ。 鳳を買ふ之直に過ぐること十倍せり。 (『笑林』より) 2 現代語訳 楚人に山鶏を担う者がいた。 路傍の人が質問した。「何の鳥ですか。」 担う者はこの人を欺いて言った。「鳳凰です。」 路傍の人は言った。「鳳凰という鳥がいることは聞いていたが、それから長い時間が経つ。今、本当に見ることができた。あなたはそれを売ってくれますか。」 山鶏を担う者は言った。「売りますよ。」 千金を報酬として支払っても、渡さなかった。その倍を支払うと、渡した。 楚王に献じようとしたけれど、宿で泊っているときに鳥は死んでしまった。 路傍の人は支払った金を惜しむのではなく、王に献じることができなかったことを嘆くのみであった。 楚の国の人々はこのことを次のように伝えた。本当に鳳凰で貴いものだと信じていたので、王に献じたいと思ったのはもっともなことである。 遂にこの話が楚王の耳に入った。王はその者が自分に献じたいと思ったことに感心し、その者を呼び出して厚く賜った。 鳳凰を買った値段の十倍だった。 ・ 高等学校卒業程度認定試験(高認)国語過去問古文・漢文現代語訳に戻る。