令和4年度愛知県公立高校入試(B)国語問4【古文】
1 原文
いにしへより碁をうつに、当局の人は闇く、傍観るの者は明らかなりといひ伝へて、俗にいへる脇目百目なれば、人のした事、過ぎ去りし事を、跡からその評判をつけ、立ちかへって思案をめぐらし見れば、格別によき分別も出づるものなり。
前にいへるごとく、昔ありし事は、必ず今もそれに似たる事あるものなれば、古人のし損なひし事に気がついてあれば、今日する事の考へになる事多かるべし。
是れ史を学ぶの大利益なり。
人君の学文には、史を読む事甚だ当用なる事と知るべし。
(『不尽言』より)
2 現代語訳
昔から碁を打つと、実際に囲碁をしている人には見えず、傍観者にはよく見えると言い伝えられていて、俗に脇目百目なのである。
よって、人のした事、過ぎ去りし事を、後からその事についての論評を加え、現在の視点から過去の事をあれこれ考えてみると、格別によい考えが出てくるものである。
以前言ったように、昔あった事は、必ず現在にもそれに似た事があるものなので、古人の失敗した事に気が付けば、今日する事の参考になることが多いだろう。
これは歴史を学ぶ大きな利益である。
君主の学問には、歴史を読む事が非常に必要な事だと知るべきである。