平成30年度第2回高認国語問5【漢文】
1 原文(書き下し文)
高陽魋将に 室を為らんと、匠人に問ふ。
匠人対へて曰はく、
「未だ可ならず。木は尚ほ生し。
塗を其の上に加ふれば、必ず将に撓まんとす。
生材を以て重塗に任ふれば、今成ると雖も、後必ず敗れんと。」
高陽魋曰はく、
「然らず。夫れ木枯るれば則ち益勁く、塗乾けば則ち益軽し。
勁材を以て軽塗に任ふ、今悪しと雖も、後必ず善からんと。」
匠人辞に窮して、以て対ふる無く、令を受けて室を為る。
其の始めて成なるや、[立句]然として善かりきも、後果して敗る。
此れ所謂辞に直くして用ふ可からざる者なり。
(『淮南子』より)
2 現代語訳
高陽魋は室を作ろうとして、大工に質問した。
大工は答えて言った。
「まだできません。木材はまだ生木です。
泥をその上に加えれば、必ずたわんでしまいます。
生材に泥を重ねて塗れば、完成したとしても、後で必ず壊れます。」
高陽魋は言った。
「そうではない。木材は乾けばますます強くなり、泥は乾けばますます軽くなる。
強くなる木材に軽くなる泥を塗れば、今は悪くても、後で必ず良くなるだろう。」
大工は言葉に窮して答えることができず、命令を受けて室を作った。
完成して始めは高くそびえ立って良かったが、後でやはり壊れてしまった。
これはいわゆる、言葉としては正しいが、実際には用いることができないものである。