令和6年度愛知県公立高校入試国語問4【漢文】
1 原文
太宗、侍臣に謂ひて曰はく、「古人云ふ、『鳥、林に棲むも、猶ほ其の高からざらんことを恐れ、復た木末に巣くふ。
魚、泉に蔵るるも、猶ほ其の深からざらんことを恐れ、復た其の下に窟穴す。
然れども人の獲る所と為る者は、皆、餌を貪るに由るが故なり。』と。
今、人臣、任を受けて、高位に居り、厚禄を食む。
当に須く忠正を履み、公清を踏むべし。
則ち災害無く、長く富貴を守らん。古人云ふ、
『禍福は門無し、惟だ人の召く所のみ。』と。
然らば其の身を陥るる者は、皆、財利を貪冒するが為めなり。
其の魚鳥と、何を以て異ならんや。
卿等、宜しく此の語を思ひ、用て鑑誡と為すべし。」と。
(『貞観政要』より)
2 現代語訳
太宗がそばに控える家臣に言うことには、「古人は言った。『鳥は林に住むも、それでもなお、高くないことを恐れ、さらに高い木の枝に巣くう。
魚は泉に住むも、それでもなお、深くないことを恐れ、さらに水中の洞穴に住んでいる。
それにもかかわらず、人に獲られてしまうのは、全て、餌を貪るためである。』と。
今の臣下は、任命されて高位にあり、多額の報酬を得ている。
当然、まじめで正しい行いをし、清廉潔白な生き方でなければならない。
そうすれば災いを招くことなく、長く富や地位を守れるだろう。古人は言った。
『禍福のための門があるわけではない、ただ人が自らこれを招くだけである。』と。
だから、自分の身を落としてしまう者は、全て、財物や利益を貪るためである。
先に挙げた鳥や魚と、何が違うのだろうか。
お前たち、よくよくこの言葉を考え、これを戒めとしなければならない。」と。
・愛知県公立高校入試過去問古文・漢文現代語訳に戻る。