平成27年度愛知県公立高校入試(A)国語問4【漢文】
1 原文
有形の類、大は必ず小より起こり、行久の物、族きは必ず少より起こる。故に曰はく、「天下の難事は、必ず易きより作り、天下の大事は、必ず細なるより作る。」と。是を以て物を制せむと欲する者は、其の細なるに於いてす。故に日はく、「難きを其の易きに図り、大なるを其の細なるに為す。」と。
千丈の隄も、螺蟻の穴を以て潰え、百尺の室も、突隙の煙を以て焚く。
故に、白圭の隄を行るや、其の穴を塞ぎ、丈人の火を慎むや、其の隙を塗る。是を以て白圭に水難無く、丈人に火患無し。
此れ皆易きを慎みて以て難きを避け、細を敬みて以て大に遠ざかる者なり。
(『韓非子』より)
2 現代語訳
形のあるものは、大は必ず小より起こり、久しく存続するものでは、多くの成員からなる群れは必ず少数から始まる。したがって、「天下の難事は、必ず易しい事柄から起こり、天下の大事は、必ず細事から起こる」と言われるのである。だから、物事をうまく運ぼうとする者は、小さいうちに手をつける。したがって、「難事は易しいうちに検討し、大事は小さいうちに実行するべきだ」と言われるのである。
大きな堤防も、小さな蟻の穴が原因で決壊し、大きな家も、わずかな隙間から入った煙が原因で焼失してしまう。
したがって、白圭が堤防を巡る際には、その穴を塞ぎ、老人が火の用心をする際には、その隙間を塗り込める。そのために白圭に任せれば水害はなく、老人に任せれば火災がない。
これは全て、易しいうちに慎重に行って難事を避け、小さいうちに慎重に行って大事を遠ざけるものである。
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