平成28年度第2回高認国語問4【漢文】
1 原文(書き下し文)
公子これを聞き、意驕矜として自ら功とするの色有り。客の公子に説くもの有りて曰はく、「物に忘るべからざる有り。或いは忘れざるべからざる有り。夫れ人公子に徳有り。公子忘るべからざるなり。公子人に徳有り。公子これを忘れんことを願ふ。且つ魏王の令を矯め、晋鄙の兵を奪ひて以て趙を救ふ。趙においては則ち功有り。魏においては則ち未だ忠臣を為さざるなり。公子乃ち自ら驕りてこれを功とす。窃かに公子の為に取らざるなり」と。ここにおいて公子立ちどころに自らを責め、容るる所無き者の若きに似たり。
(『史記』より)
2 現代語訳
公子はこれを聞き、驕矜として自己の功績であるという表情であった。食客の中に公子に説く者があり、次のように言った。「物には忘れてはいけないことがあります。或いは忘れるべきことがあります。人から公子が恩義を受けたのであれば、公子は忘れてはいけません。公子が人に恩義を与えたのであれば、公子がそれを忘れることを願います。さらに魏王の命令を曲げて、晋鄙の兵を奪って趙を救いました。趙においては功績です。魏においては忠臣とすることはできません。それなのに公子が自ら驕ってこれを功績とすることは、恐れながら公子の為になるとは思いません。」これを聞いて公子は立ちどころに自分を責め、身の置き所がない者のようであった。
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