平成29年度第2回高認国語問7【漢文】
1 原文(書き下し文)
時に賊等六人、その寺に金丹を売る。檀越先に過り量贖ひ、禅師、後より出でて見る。賊等慌然に退進を知らず。禅師憐愍びて刑罰を加へず。仏を造り塔を厳りて、供養已に了はる。後には海辺に住まり来れる人を化す。春秋八十有余にして卒はりぬ。
畜生すら猶ほ恩を忘れずして恩を返報せり。何に況んや義人にして恩を忘れんや。
(『日本霊異記』より)
2 現代語訳
一方で賊等六人は、その寺に金丹を売りに行った。檀家が先にそこに行って計量して購入しようとしていたところに、禅師が後ろからやって来て出くわした。賊らはたちまち進退窮まった。禅師は憐れんで刑罰を加えなかった。仏像を造り塔を飾って、供養を終えた。その後、海辺に留まり、来る者を教化した。八十歳余りで亡くなった。
畜生ですら恩を忘れず恩返しをする。どうして人が恩を忘れようか。
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