R6年度第1回高認物理基礎大問4解説
大問4
図1、図2のように、水平面からの高さがhとなる斜面上の点A、点Cから、質量mの物体を初速度0で滑らせた。物体が水平面上の点B、点Dを通過するときの運動について、会話1のように生徒と先生が話をしている。会話1
先生:まず、図1について、点Aと点Bでの物体の力学的エネルギーを考えてみましょう。
重力による位置エネルギーの基準面を水平面とし、重力加速度の大きさをgとしましょう。
生徒:点Aでの物体の重力による位置エネルギーはmgh、点Bでの物体の速さをvとすると、点Bでの物体の運動エネルギーは\dfrac{1}{2}mv^2となります。
先生:その通りです。
では、斜面との摩擦の影響は無視し、力学的エネルギー保存の法則を用いて、点Bでの速さvを求めてみましょう。
生徒:v = \fbox{ア}と表すことができます。
先生:その通りです。
では、図2のように斜面の傾斜を変え、物体を点Cから滑らせたときは、どうなるでしょうか?
生徒:図2のときの力学的エネルギー保存の法則の式は、図1のときと同じ式になります。
また、仕事と運動エネルギーの関係で考えると、図2のときの点Cから点Dまでの【イ】は、図1のときの点Aから点Bまでと同じなので、点Dでの速さは変わらず【ア】になると思います。
問1【力学的エネルギー保存の法則】
会話1の【ア】に入る数式として正しいものはどれか。mgh = \dfrac{1}{2}mv^2
2mgh = mv^2
v^2 = 2gh
v = \sqrt{2gh}
問2【仕事と運動エネルギー】
会話1の【イ】に入る語句として正しいものはどれか。・重力が物体にする仕事の大きさ
会話1の内容を確かめるために、図3のように、生徒が身近なものを用いた実験を考えた。
会話2、会話3のように生徒と先生が話をしている。会話2
生徒:プリントをはさむバインダーの裏面を斜面にして、100円玉を実際に滑らせてみます。
先生:グッドアイデアですね。
でも、実際にはバインダーと100円玉の間には動摩擦力が生じますが、動摩擦力の影響はどのように考えましょうか?
生徒:100円玉の質量をm、100円玉の斜面を下る加速度の大きさをa、重力加速度の大きさをg、斜面と物体の間の動摩擦係数を{\mu_1}'、バインダーと机の間の角度を\thetaとして、運動方程式を立てて加速度を考えてみようと思います。
物体の運動方程式はma = \fbox{ウ}と表すことができます。
問3【斜面を滑る物体にはたらく力】
会話2の【ウ】に入る数式として正しいものはどれか。ただし、斜面を滑る物体にはたらく力は、次のように図示できるものとする。・mg\sin \theta - {\mu_1}'mg\cos \theta
会話3
先生:この運動方程式は両辺に質量mがあるので、両辺を質量mで割ると加速度aの式の中に質量mがなくなります。
つまり、質量を変えても加速度は変わらないということがわかりますね。
生徒:実験をして確かめてみますが、質量以外の条件は揃える必要があると思います。
先生:そうですね。斜面の角度が変わらないようにしっかり固定しましょう。
あとは、質量だけを変えられる工夫が必要ですね。
生徒:それなら、ペットボトルのキャップの中にちょうど100円玉が入るので、入れる枚数を変えれば、質量を変えて実験ができると思います。
先生:素晴らしい!ナイスアイデアですね。この方法なら【エ】。
問4【動摩擦係数】
会話3の下線部は、ペットボトルのキャップに100円玉を入れるというアイデアの素晴らしさに先生が感激している様子であるが、会話3の【エ】に入る文として最も適切なものはどれか。・動摩擦係数を変えずに、質量のみを変化させて実験ができますね
図4のように、ペットボトルのキャップの中に100円玉を1枚入れた場合と5枚入れた場合でそれぞれ実験を行い、質量を変えても加速度は変わらないことを確かめようと会話4のように生徒と先生が話をしている。会話4
先生:質量を変えても斜面上の物体の加速度は変わらないことを確かめるには、何を測定すれば良いかわかりますか?
生徒:加速度は【オ】と定義できるから、最下点での速さが同じになることを確かめれば良いと思います。
つまり、100円玉を1枚入れた場合と5枚入れた場合で、最下点での速さが同じになるはずなので、最下点での速さを測定して比較すればいいですね。
先生:でも、スピード計測器がありませんね。
生徒:それでは、最下点からの水平面で静止するまでの移動距離を測定することでも、物体の加速度が変わらないことを確かめられますよね。
先生:そうですね。やってみましょう。
生徒:100円玉を1枚入れた場合と5枚入れた場合について、それぞれ5回ずつ実験を行ってみます。
問5【加速度】
会話4の【オ】に入る語句として正しいものはどれか。・単位時間あたりの速度の変化
生徒が実験をしたところ、次のような結果になった。
この実験結果について会話5のように生徒と先生が話をしている。会話5
先生:質量mの物体が最下点を速さvで通過し、動摩擦力f'を受けてxだけ進んで静止したとすると、静止するまでの移動距離はどうなると思いますか。
生徒:仕事と運動エネルギーの関係から計算すると、x = \dfrac{mv^2}{2f'}と表すことができます。
さらに、動摩擦力f'は、机と物体との間の動摩擦係数を{\mu_2}'とすると、f' = {\mu_2}'mgと表せるので、f'の式をxの式に代入すると、分母と分子のmを消去することができて、x = \fbox{カ}となりました。
先生:素晴らしいですね。この計算結果と実験結果とが一致しましたね。
生徒:100円玉を1枚入れた場合と5枚入れた場合で、水平面で静止するまでの移動距離が同じになり、斜面の最下点での速さが同じになることがわかりました。
以上より、質量を変えても斜面上を滑る物体の加速度は変化しないといえます。
問6【仕事と運動エネルギー】
会話5の【カ】に入る数式として正しいものはどれか。・x = \dfrac{mv^2}{2f'} = \dfrac{mv^2}{2{\mu_2}'mg} = \dfrac{v^2}{2{\mu_2}'g}
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