政治的功利主義。
1 功利主義の本質
そもそも、日常生活で人々が功利主義によって行動すべきかどうかは、問題ではないだろう。自分の信念、人生哲学、正義論、主義主張があってしかるべきだと思う。
その意味で、直接功利主義だとか間接功利主義だとか、二階建てにすべきだとか、あまり魅力を感じない。
確かに、人間という生き物を測る指標として、功利考量で片付けることができると考えることには、慎重であるべきなのかもしれない。
医学、心理学、生物学など、人間を科学する学問の知見を幅広く学ぶ必要さえあるのかもしれない。
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それでも、一人の人間(の効用)を一人として数えるという原則は大切だと思う。
2 功利主義の意義
規則をどのように解釈するかという、行為功利主義と規則功利主義では、解釈の問題に過ぎないのかもしれないけれど、個人的には行為功利主義が好きだ。『統治と功利』が示す一つの可能性としての哲学的に急進的な主張も、未来の統治の可能性として認めることができると思うし、そこまで至っていない現状の世界では、やはり他者危害原則が基本となるのだろうか。
民主主義社会では、原理的には統治するのもされるのも国民である。
その社会の課題を解決するために、様々な政策が議論されるのであろうが、そのような状況において、功利主義は、他の(政治)理論から導出される直観的だが、誤った主張を説得的に是正することが、その役割ではないのだろうか。
3 政治的功利主義
(個人的あるいは集合的)道徳を云々するのではなく、上述のような政治的功利主義を整理したうえで、具体的な政策を考えてみようかと思う。直観的な義務論から結論を導くことに、どれほどの魅力があるというのだろうか。
現実を直視して、現実を受け入れて、それでもよりよい社会を目指し、その制度を考えるためになお、功利主義は魅力的であり続けていると僕は思う。
【参考文献】
・統治と功利(Amazon)・功利と直観―英米倫理思想史入門(Amazon)
・功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)(Amazon)
・新版 現代政治理論(Amazon)