『FACTFULNESS』。
1 FACTFULNESS
以前から気になっていた本を読んでみた。・FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(Amazon)
とてもおもしろくて、とても良い本だと思う。
あらゆる人にとって、読んだ方がよい、読むべき本だと思う。
この記事では、この本の内容について詳述するつもりはないけれど、この本を読んで個人的に感じたことをメモしたい。
2 内容
読む暇がない人は、ネットで調べれば概要を知ることはできる。・【図解レビュー】FACTFULNESS(ファクトフルネス)は日本人にこそ必要な本だ(コンサルタントのアウトプット図解)
・Gapminder > Gapminde Tools
・ハンス・ロスリング: 最高の統計を披露 | TED Talk
3 所得と教育
誤解を恐れずに言えば、人間の生活は所得によって規定されるという事実を再確認させられる。世界中にいろいろな国や地域、人種、民族、宗教があって、いろいろな社会があって、いろいろな人々が生活している。
多様性を認めることは大切ではあるけれど、人種、民族、宗教の違いを過大視してもいけないと分かった。
所得レベルを1~4段階に分けると、世界の人々は各所得段階に応じた生活をしているという、よく考えると当たり前の事実を確認することができる。
・Gapminder > Dollar Street
そして、教育、特に女性に対する教育が普及すると、乳幼児死亡率が低下し出生率が低下する。
より少ない子どもに教育投資を集中し、国民の学歴も向上する。
(88ページ)
所得と教育については、「鶏が先か、卵が先か」という因果関係の分析はさておき、この相関関係は正しそうである。
4 用語の再吟味
バブルチャートを見ると、確かに「先進国」、「後進国」という分類は時代遅れだという指摘は、その通りだと思う。(37ページ)
しかし、所得レベルで分類し、より上のレベルへの到達速度と考えれば、先進国、中進国、後進国という用語はそんなにひどい用語でもないような気がするのだけれど、そう感じるのは僕がもう時代遅れのおっさんになってしまったからだろうか。
ただ、バブルチャートを念頭に置いて、世界が先進国と後進国で分断されているという思い込みを矯正するべきだとは思う。
先進国の中にも(相対的)貧困は存在するし、後進国、中進国の中にも富裕層は存在する。
意識の高い識者が時々、警鐘を鳴らしていた事実ではある。
日本のホワイトカラーは、他のアジア諸国のホワイトカラーにさえもう、追いつき追い越されつつあると。
今後、「所得レベル1~4」という用語の方が普及し始めたら、そちらにシフトしようかと思う。
5 この世界を説明する方法
大学のゼミで、少々難解な論文をみんなで読んでいたときに、学問の方法論に話が及んだことがあった。その論文ではあるモデルを作り、それを使って政治経済を説明していたのだけれど、このようなモデルを考えて分析することに、どれほどの価値、有用性があるのだろうという話になったのだ。
分析と総合が学問の方法だと考えれば、モデルを考えて分析するのは当然だとか、主観と客観の問題だとか、いろいろな意見が出た。
そういうモデルで分析することに懐疑的な人も世の中にはいて、歴史をそのまま記述すればよいと主張する人もいると聞いて、少し驚いたことを覚えている。
確かに古今東西、歴史は歴史家によって、いろいろな方法で記述されてきた。
歴史家の価値観、歴史学、史学史に及ぶ結構壮大な問題である。
6 社会科学と自然科学
自然科学においては、知識の賞味期限、消費期限を意識する必要はあまりないのかもしれないけれど、社会科学においては、知識のアップデートが欠かせない。確かに、自然科学においても、新しい研究、発見があって、そういう最新の研究をフォローする必要はあるのだろうけれど、中学や高校で学んだ数学や物理学、化学などの基本的な知識が全く使えなくなることはあまりないだろう。
社会科学では、中学や高校の教科書で学んだような基礎的な知識や用語が使えなくなることさえある。
(231ページ)
知識や価値観をアップデートし続けなければ、今はファクトフルでも、10年後、20年後には間違った知識や固定観念、単なる偏見に成り下がっている可能性がある。
この本は、まさにそのことを教えてくれる教科書である。
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