人生のバランス。
1 精神疾患
20代の頃、精神疾患で随分苦しんだけれど、年を経ておっさんになってから自然と治ってしまった。病気の原因は不明だけれど、名古屋でお世話になっていたクリニックの先生は、「あなたは普通の人より脳の活動が活発なので、エンジンがオーバーヒートするように、脳に負荷がかかり過ぎているのかもしれない」と仰ったことがあった。
20代までの僕は、脳というものは鍛えれば鍛えるほど頭がよくなると信じ込んでいたので、常人以上の努力で情報を詰め込めば天才に勝てるのではないかと思っていた。
多分、そういう不自然な生き方の癖みたいなものが、結局は脳に悪影響を及ぼしてしまったのかもしれない。
年を取って、そういう考え方や生き方を緩めることを意識するようになってから、不思議なことに病気の再発がなくなった。
2 脳の活動と睡眠
脳は人体で一番不思議な器官かもしれない。意識(consciousness)とは何かという問題は、いまだに心理学者、精神科医、哲学者等の研究者を魅了する問題である。
最近、脳のデフォルト・モード・ネットワーク(default mode network)の重要性が注目されている。
人間が何も意識しない状態で休息しているとき、脳も休んでいると思われていたのだけれど、実はこのアイドリング状態でも脳は活発に活動している。
瞑想やマインドフルネスが脳にとってよい効果をもたらすことが、脳科学的にも研究、実証されているらしい。
また、深い睡眠は脳内の老廃物を排出するシステムにとって、非常に重要だという研究もある。
この種の研究は、高齢者の認知症の予防や改善、さらには治療法や治療薬の開発につながるかもしれない。
3 老化とバランス
この年まで生きてきてようやく分かったけれど、結局、人間は自分の分をわきまえて、バランスを崩さないように生きていくことが賢い生き方だと思う。それは勉強でもスポーツでも芸術でも、そして仕事でも当てはまると思う。
バランスの取れた食事も大切だし、仕事だけでなく自分の好きな趣味の時間も大切にするべきだし、もちろん十分な休息、睡眠も必要である。
そして、人間は年を取るとどうしても体力が衰えるし、勉強する意欲や記憶力も衰える。
多少無理をしても何とかなるのは若いときだけだということを、年を取ってしまった人はもちろん、若い人たちこそ知っておくべきである。
勉強でもスポーツでも芸術でも、マンガでもアニメでもゲームでもYouTubeでも、何か好きなこと、夢中になれることがあれば、真剣にやっておいた方がよいと思う。
『エンゼルバンク-ドラゴン桜外伝-』の桜木の名言、「30歳過ぎたら利息で暮らせ」は本当だと思う。
年を取って無理ができなくなれば、若い頃に習得した知識や技術、技能や経験を頼りに生き抜いていくしかない。
どんな人間も、特に年を取ってからは、バランスを無視した超人のような生き方はできなくなるのである。
4 人生の(暫定)解
小学生や中学生は、自分の周囲にいる一番ダメなおっさんやおばさんを思い浮かべながら、自分が20~30年後にそうなると想像してほしい。自分はそんな大人になんかならないと思うかもしれないけれど、年を取ればみんな気力や体力がそれくらい衰えるものである。
それでも活躍できる人たちは、若い頃に努力して積み上げた何かを頼りに生きているはずである。
自分はダメな大人になんかならないと思ったあなたは、20~30年後、何を積み上げてどんな大人になっているのだろうか。
20~30年後、おそらくほとんどの人は、普通のおっさんやおばさんになっていて、何者にもなることができないだろう。
あなたはあなた以外の何者にもなることができない。
これは僕自身のミッドライフ・クライシスに対する解の一つである。