令和3年度愛知県公立高校入試(A)国語問4【古文】

1 原文

 もろこしに道林禅師といへる人は、この世のあまりにはかなきことに堪へわびて、木の末にのみ住み侍りしを、
白楽天見侍りて、鳥の巣の禅師などと名付けて、
「和尚の栖あまりに危ふく見えて侍る物かな」と云へば、
和尚答ふ、
「汝がこの世を忘れて交はり暮らすこそ猶危ふけれ」と云へり。
また、楽天問ふ、
「いかなるかこれ仏法」と。
和尚答ふ、
「諸悪莫作諸善奉行」。
楽天云ふ、
「このことわりは、三歳の嬰児も知れり」。
和尚云はく、
「知れることは、三歳の嬰児も知れり。
行ずることは、八旬の老翁もまどへり」と云へれば、
白楽天三礼して去れり。
(『ひとりごと』より)

2 現代語訳

 中国に道林禅師という人がいた。
この世のあまりの儚さに堪えることができず、木末に住んでいた。
白楽天はそれを見て、鳥の巣の禅師と名付け、
「和尚の住んでいる所は、あまりに危なく見えるものですよ」と言うと、
和尚は答えて、
「お前がこの世を忘れて、人と交わり暮らしていることの方がもっと危ない」と言った。
また、楽天が質問した。
「どのようなものですか、仏法とは」。
和尚は答えた。
「諸々の悪を行うな、諸々の善を行え」。
楽天は言った。
「その道理は、三歳の幼い子も知っています」。
和尚は言った。
「知識としては、三歳の幼い子も知っている。
実際に行うのには、八十歳の老人も惑う」。
白楽天は三礼して去った。

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