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令和2年度愛知県公立高校入試(B)国語問4【古文】

1 原文

 仁斎先生存在の時、大高清助といふ人、『適従録』を著して大いに先生を誹譏す。
門人かの書を持ち来たりて示し、且つこれが弁駁を作らん事を勧む。
先生微笑してことばなし。
かの門人怒りつぶやきていふ、
「もし先生弁ぜずんば吾其の任にあたらん。」と。
先生しづかに言ひていはく、
「彼是ならば吾非を改めて彼が是にしたがふべし。
もし吾是に彼非ならば吾が是は即天下の公共なり。
固より弁をまたず。
久しうして彼も又みづからその非をしらん。
汝只みづから修めよ。
他をかへりみる事なかれ。」とぞ。
先生の度量、大旨此のたぐひなりと、ある人かたりき。
(『仮名世説』より)

2 現代語訳

 仁斎先生が生きていらっしゃるとき、大高清助という人が、『適従録』を著して大いに先生の学説を非難した。
門人がその書を持って来て示し、すぐにこれに反論することを勧めた。
先生は微笑して何も言わなかった。
門人は怒ってつぶやいた。
「もし先生が反論をしないのならば、私がその任に当たりましょう。」
先生は静かに言った。
「彼が是ならば、私は自分の非を改めて、彼の是に従うべきです。
もし私が是で彼が非ならば、私が是なることは天下に知れ渡ることとなります。
もともと反論するまでもないのです。
しばらくすれば彼も又自分でその非を知ることになるでしょう。
あなたはひたすら自分自身の修養に努めなさい。
他人を顧みるようなことはしないように。」
先生の度量、大旨このようなものだったと、ある人は語った。

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