令和3年度愛知県公立高校入試(B)国語問4【漢文】
1 原文
冬、晋荐りに饑う。糴を秦に乞はしむ。
秦伯、子桑に謂ふ、
「諸を与へんか。」と。
対へて曰はく、
「重く施して報いば、君、将た何をか求めん。
重く施して報いずんば、其の民必ず攜れん。
攜れて討たば、衆無くして必ず敗れん。」と。
百里に謂ふ、
「諸を与へんか。」と。
対へて曰はく、
「天災の流行するは、国家代はるがはる有り。
災を救ひ隣を恤むは、道なり。
道を行へば、福有り。」と。
丕鄭の子、豹、秦に在り。
晋を伐たんことを請ふ。
秦伯曰はく、
「其の君是れ悪しきも、其の民何の罪かある。」と。
秦是に於いて、粟を晋に輸す。
(『春秋左氏伝』より)
2 現代語訳
冬、晋の国は昨年に続き不作であった。秦に使いを送り米を送るよう願い求めさせた。
秦伯は子桑に言った。
「これを与えようか。」
答えて言った。
「大いに恩恵を施して晋がその恩に報いたら、陛下、何も求めることはないでしょう。
大いに恩恵を施して晋がその恩に報いなければ、その民は必ず離れるでしょう。
民の離れた後に討てば、無勢となり必ず敗れるでしょう。」
百里に言った。
「これを与えようか。」
答えて言った。
「天災の流行は、国家が代わる代わる変遷してもあります。
天災を救い隣国を憐れむことは、人の行うべき道です。
道を行えば、福があります。」
丕鄭の子、豹が秦にいた。
晋を討伐することを願い出た。
秦伯は言った。
「晋の君主が悪人でも、その民には少しの罪もない。」
秦は結局、粟を晋に輸送した。
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