第31条【緊急時の権限】、第32条【緊急時の法律に基づく抑留】
第5章【基本的人権及び自由】
第2節【緊急時の権限】
第31条 大統領は、国務会議の助言に従い、官報に掲載する公布により、この憲法の規定の目的のために、ガーナ又はその一部に緊急事態を宣言することができる。2 本条第1項に基づく公布が行われた場合、本条のその他の規定にかかわらず、大統領は緊急事態の宣言に至った事実及び状況を、直ちに議会に提出するものとする。
3 議会は、その通知を受けた後72時間以内に、公布が引き続き効力を有するべきか、又は取り消すべきかを決定し、大統領は議会の決定に従うものとする。
4 緊急事態宣言は、その公布の日から起算して7日を経過した時に効力を失う。ただし、その期間の満了前に、議会の総議員の過半数の賛成による決議によって承認された場合は、この限りでない。
5 本条第7項に従い、本条第4項の規定に基づく議会の決議により承認された緊急事態宣言は、その承認された日から起算して3か月の期間又はその決議で定められたそれ以前の期日まで、その効力を有するものとする。
6 議会は、総議員の過半数の決議によって、1回につき1か月を超えない期間、宣言の承認を延長することができる。
7 議会は、総議員の過半数の決議によって、いつでも、本条に基づいて議会が承認した緊急事態宣言を取り消すことができる。
8 疑義を避けるため、本条第1項に基づいて宣言された緊急事態に関する議会の法律以外の制定法の規定は、緊急事態が存在するガーナの一部にのみ適用されることをここに宣言する。
9 本条に基づき緊急事態が宣言される状況には、自然災害、及び個人又は団体によって以下の行為がなされ、又はその恐れが直ちに生じるような状況が含まれる。
(a)コミュニティから生活必需品を奪うことが企図され、又はその可能性がある状況。
(b)公共の安全、ガーナの防衛、公共の秩序の維持、並びにコミュニティの生活に不可欠な物資及びサービスの提供のために必要な措置を講じることを要する状況。
10 議会の法律のいかなる規定又はそれに基づく行為も、緊急事態が効力を有する期間中に存在する状況に対処する目的で、合理的に正当化される措置を講じることを認める範囲において、この憲法の第12条から第30条までの規定に抵触又は違反するものとはみなされない。
第32条 緊急事態宣言に基づき制定された法律によって拘束又は抑留されている者には、以下の規定が適用される。
(a)拘束又は抑留の開始後できる限り速やかに、いかなる場合にも24時間以内に、その者が拘束又は抑留されている理由を詳細に記述する書面を交付され、拘束又は抑留されている者に読み上げられ、又は通訳されなければならない。
(b)拘束又は抑留されている者の配偶者、親、子ども又はその他の連絡可能な近親者は、その抑留又は拘束の開始後24時間以内にその通知を受け、できる限り速やかに、いかなる場合にもその拘束又は抑留の開始後24時間以内に、その者との面会を許されるものとする。
(c)拘束又は抑留の開始後10日以内に、その者が拘束又は抑留されていること、並びにその拘束又は抑留を認める法律の規定及びその拘束又は抑留の理由の詳細を記述する通知を、官報及びメディアに公表するものとする。
(d)拘束又は抑留の開始後10日以内に、その後の拘束又は抑留の期間中は3か月を超えない間隔で、最高裁判所長官が任命する3名以上の上級裁判所裁判官で構成される裁判により、当該事案を審査するものとする。ただし、同一の裁判は、拘束又は抑留されている者の事案を二度以上審査してはならない。
(e)拘束又は抑留されている者の事案の審査のために任命された裁判において、代理することを許される自己の選択する弁護士に相談するための、あらゆる可能な便益が与えられるものとする。
(f)事案の審理において、自ら又は自己の選択した弁護士によって出頭することができるものとする。
2 拘束又は抑留されている者の事案について裁判により審査した場合、裁判は、その者の釈放及びその者に対する十分な補償金の支払いを命じ、又はその拘束若しくは抑留の理由を是認することができる。拘束又は抑留を命じた機関は、これに従うものとする。
3 議会が開催される各月において、大統領により委任された国務大臣は、この憲法の第31条第10項の法律により拘束又は抑留されている者の数、及び拘束又は抑留を命じた機関が、本条に基づき任命された裁判の決定に従った場合の数を議会に報告するものとする。
4 本条第3項の規定にかかわらず、同項の大臣は、毎月、官報及びメディアに以下の事項を公表するものとする。
(a)拘束又は抑留されている者の数、氏名及び住所。
(b)裁判が審査した事案の数。
(c)拘束又は抑留を命じた機関が、本条に基づき任命された裁判の決定に従った場合の数。
5 疑義を避けるため、この憲法の第31条第1項に基づき宣言された緊急事態の終了の際に、その緊急事態宣言の結果として拘束若しくは抑留中の者又は拘留中の者は、直ちに釈放されなければならないことをここに宣言する。
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