第34条【指導原則の実施】、第35条【政治的目標】、第36条【経済的目標】
第6章【国家政策の指導原則】
第34条 本章に含まれる国家政策の指導原則は、全ての市民、議会、大統領、司法府、国務会議、内閣、政党並びにその他の団体及び個人に対し、この憲法又はその他の法律の適用又は解釈、並びにあらゆる政策決定及び実施に関して、公正かつ自由な社会の建設のための指針となるものとする。2 大統領は、少なくとも年1回、本章に含まれる政策目標、特に、基本的人権、健全な経済、労働の権利、良質な医療を受ける権利、及び教育を受ける権利について、その実現を保障するために講じた全ての措置を、議会に報告するものとする。
第35条 ガーナは、自由及び正義の実現に貢献する民主的国家である。従って、主権はガーナ国民に存し、政府の全ての権力及び権限は、この憲法を通して国民に由来する。
2 国家は、ガーナの独立、統一及び領土を保護し、全ての市民の幸福を追求するものとする。
3 国家は法律に従い、全ての市民による公共施設及びサービスの公正かつ合理的な利用を促進するものとする。
4 国家は、全てのガーナ人の間に、基本的人権及び自由並びに人間の尊厳に対する尊重を醸成するものとする。
5 国家はガーナの国民統合を積極的に促進し、出身地、出生状況、民族的出身、性別、宗教、信仰又はその他の信条を理由とする差別及び偏見を禁止する。
6 本条第5項の目標を実現するため、国家は、以下の適切な措置を講じるものとする。
(a)部門的、民族的及びその他の忠誠に代わる、ガーナへの忠誠心を醸成すること。
(b)公職の採用及び任命において、地域及び性別の合理的なバランスを実現すること。
(c)ガーナ国内における人、物及びサービスの自由な移動のため、十分な施設を提供し、奨励すること。
(d)政府の行政及び財政機構を州及び郡に分権化し、国民が国民生活及び政府のあらゆる階層の意思決定に参加する機会を可能な限り提供することによって、民主主義を実現すること。
(e)政府又はサービスを提供する公的機関の本庁を、州及び地域の資源及び潜在能力を考慮し、実行可能な限りにおいて、州内の地域に設置するよう保障すること。
7 政府は、実行可能な限りにおいて、前政府によって開始された計画及びプログラムを継続及び実施するものとする。
8 国家は、汚職行為及び権力濫用を根絶するための措置を講じるものとする。
9 国家は、ガーナ国民の間の政治的寛容の文化を促進するものとする。
第36条 国家は、経済発展の速度を最大にし、ガーナの全ての国民の福祉、自由及び幸福を最大限に保障するような方法で国民経済を管理し、困窮者に十分な生活手段、適切な雇用及び公的支援を提供するため、必要な全ての措置を講じるものとする。
2 国家は、特に、健全な経済を建設するため、必要な全ての措置を講じるものとする。その基礎となる原則は、以下のとおりとする。
(a)継続的な生産及び高い生産性を奨励するため、生産性に応じた公正で現実的な報酬を保障すること。
(b)経済活動において個人の自発性及び創造性に十分な機会を提供し、経済における民間部門の重要な役割を可能にする環境を醸成すること。
(c)個人及び民間部門が、国家全体の発展に寄与する責任を含む、社会的及び国家的責任を公正に分担すること。
(d)ガーナの全ての州及び各州のあらゆる地域を均等に開発し、特に、農村部の生活条件を改善し、農村部と都市部の間の開発における不均衡を一般的に是正すること。
(e)最も安定した民主主義は、基本的な義務として、国民の基本的な生活必需品を保障するものであることを認識すること。
3 国家は、農業及び工業の発展を促進するため、適当な措置を講じるものとする。
4 外国投資は、ガーナにおける投資を規制する既存の法律に従って、ガーナ国内において奨励されるものとする。
5 本条前項の目的のため、大統領は就任後2年以内に、ガーナの全ての階層及び州における農業及び工業プログラムを含む、経済及び社会開発政策の調整プログラムを議会に提出するものとする。
6 国家は、全ての国民に平等な経済的機会を提供するものとする。特に、国家は、ガーナの経済発展の主流への女性の十分な参加を保障するため、全ての必要な措置を講じるものとする。
7 国家は、財産の所有権及び相続権を保障する。
8 国家は、土地の所有及びその権利は、より大きなコミュニティに貢献する社会的義務を伴うことを認識するものとする。特に、公有地、Stool、Skin及び家族の土地の管理者は、ガーナ国民、Stool、Skin及び家族のそれぞれの利益のために職務を遂行する義務を負う受託者であり、受託者として説明責任を負うことを認識するものとする。
9 国家は後世のため、国内の環境を保護するために必要な措置を講じるものとする。国家は、人類のためのより広い国際的な環境を保護するため、その他の国家及び団体と協力するよう努めるものとする。
10 国家は、雇用されている全ての者の健康、安全及び福祉を保護し、全てのガーナ人の創造的な潜在能力を十分に発揮させるための基礎を構築するものとする。
11 国家は、労働者が職場の意思決定過程に参加することを奨励するものとする。
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