令和3年度第2回高認国語問5【漢文】
1 原文(書き下し文)
楚人に山鶏を担ふ者有り。
路人問ひて曰はく、「何の鳥ぞやと。」
担ふ者之を欺きて曰はく、「鳳凰なりと。」
路人曰はく、「我鳳凰有るを聞くこと久し。今真に之を見る。汝之を売るかと。」
曰はく、「然りと。」
乃ち千金を酬ゆるも、与えず。倍を加へんことを請ふに、乃ち之を与ふ。
方に将に楚王に献ぜんとするも、宿を経て鳥死す。
路人其の金を惜しむに遑あらずして、惟以て献ずるを得ざることを恨むのみ。
国人之を伝へ、咸以為へらく真鳳にして貴ければ、之を献ぜんと欲するはと宜なり。
遂に楚王に聞ゆ。王其の己に献ぜんと欲するに感じ、召して厚く之に賜ふ。
鳳を買ふ之直に過ぐること十倍せり。
(『笑林』より)
2 現代語訳
楚人に山鶏を担う者がいた。
路傍の人が質問した。「何の鳥ですか。」
担う者はこの人を欺いて言った。「鳳凰です。」
路傍の人は言った。「鳳凰という鳥がいることは聞いていたが、それから長い時間が経つ。今、本当に見ることができた。あなたはそれを売ってくれますか。」
山鶏を担う者は言った。「売りますよ。」
千金を報酬として支払っても、渡さなかった。その倍を支払うと、渡した。
楚王に献じようとしたけれど、宿で泊っているときに鳥は死んでしまった。
路傍の人は支払った金を惜しむのではなく、王に献じることができなかったことを嘆くのみであった。
楚の国の人々はこのことを次のように伝えた。本当に鳳凰で貴いものだと信じていたので、王に献じたいと思ったのはもっともなことである。
遂にこの話が楚王の耳に入った。王はその者が自分に献じたいと思ったことに感心し、その者を呼び出して厚く賜った。
鳳凰を買った値段の十倍だった。