第108条【連合共和国高等裁判所及びその管轄権】、第109条【連合共和国高等裁判所裁判官及びその任命】、第110条【高等裁判所裁判官の任期】
第5章【連合共和国の司法権、連合共和国高等裁判所、タンザニア本土司法公務委員会、ザンジバル高等裁判所、連合共和国控訴裁判所及び連合共和国特別憲法裁判所】
第2部【連合共和国高等裁判所】
第108条 連合共和国高等裁判所(「高等裁判所」と略記する)を設置し、その管轄権は、この憲法又はその他の法律の定めるところによる。
2 この憲法又はその他の法律が、特定の事項をその目的のために指定された裁判所で最初に審理することを明示的に定めていない場合、高等裁判所は、その種の全ての事項を審理する管轄権を有する。同様に、高等裁判所は、タンザニアの法律上の伝統に従い、通常高等裁判所が取り扱う事項について管轄権を有する。ただし、本項の規定は、この憲法又はその他の法律に規定されるタンザニア控訴裁判所の管轄権を損なうことなく、適用されるものとする。
第109条 高等裁判所には、高等裁判所長官(この憲法の以降の条文では「長官」と略記する)及び30人以上の裁判官を置き、司法公務委員会と協議の上で、大統領が任命する。
2 第118条に規定する首席裁判官の権限に関する、この憲法又はその他の法律の規定に従い、長官は、高等裁判所及びその下級裁判所の管理について、首席裁判官の特別補佐官であり、その職務を執行するに際し、首席裁判官から随時指示される任務及び職務を遂行するものとする。本条において、長官は、高等裁判所の長とも称される。
3 高等裁判所の裁判官としての通常の権限に加え、長官は、高等裁判所の管轄権に関する任務及び職務のうち、この憲法若しくはその他の法律の規定又は適用される法律上の伝統に従い、高等裁判所の長が遂行する必要がある事項について権限を有する。ただし、この憲法若しくはその他の法律の規定又はタンザニアで適用される法律上の伝統に従い、首席裁判官のみが遂行する必要があると明示され、又はそうみなされる任務又は職務の執行については、本条の規定は適用されない。
4 本条第2項及び第3項の規定の解釈又は適用に関する疑義を避けるために、この憲法又はその他の法律に特別の定めのある場合を除いて、首席裁判官は、高等裁判所の長としての任務及び職務の執行に関して、随時、長官に指示を与えることができることを、ここに宣言する。同様に、首席裁判官は、高等裁判所及びその下級裁判所における職務の執行に関して、その管理及び監督上の権限の一部を長官に委任することができる。首席裁判官は、必要な場合にはいつでも、長官に委任された職務を自ら直接執行することができる。
5 高等裁判所の裁判官の職は、その職に就いている者がある間は、廃止することができない。
6 本条第8項の規定に従い、本条第7項に規定する特別の資格を有し、10年以上その特別の資格を保有している者でなければ、高等裁判所の裁判官に任命することができない。
7 本条第6項、第8項及び第10項を解釈する上で、「特別の資格」とは、タンザニアの認定機関によって認められた大学の法律の学位を有し、以下に該当する者を意味する。
(a)治安判事であった者。
(b)弁護士資格を有する間に公職にあった者、又は民間の弁護士であった者。
(c)弁護士として登録するための資格を有し、10年以上継続してその資格を保有している者。
8 特別の資格を有する者が10年以上の期間その資格を保有していないが、その者が能力、知識を有し、あらゆる点で高等裁判所の裁判官に任命されるのに相応しいと大統領が認め、その者が任命されるに値する理由がある場合、大統領は、その者が10年以上の期間特別の資格を保有していなければならないという要件を免除し、司法公務委員会と協議の上で、その者を高等裁判所の裁判官に任命することができる。
9 長官が欠員となった場合、又は長官が何らかの理由でその職務を遂行することができなくなった場合、その職務は、そのために大統領が任命する1名の裁判官が遂行する。その任命された裁判官は、新しい長官が任命され、その職に就任するまで、又は職務を遂行することができなくなった長官が職務を再開するまで、その職務を遂行するものとする。
10 裁判官の職に欠員が生じた場合、裁判官が長官代理に任命された場合、何らかの理由によってその職務を遂行することができなくなった場合、又は首席裁判官が、高等裁判所におけるその時点の業務の状況から臨時裁判官の任命が必要であると大統領に助言した場合、大統領は、通常の方法で首席裁判官と協議した上で、特別の資格を有する者の中から臨時裁判官を任命することができる。ただし、
(a)この憲法の第110条第1項に定める年齢に達したという理由のみをもって、本項の規定に従って任命される資格を喪失したとはみなされない。
(b)本項の規定に従って臨時裁判官を任命するために、大統領は、本条第8項に規定する理由と同じ理由により、10年間特別の資格を保有していることという要件を免除することができる。
11 本条第10項の規定に従って臨時裁判官に任命された者は、その任命において指定された期間、又は期間が指定されていない場合には、その任命が大統領によって取り消されるまで、引き続き臨時裁判官の職務を遂行するものとする。ただし、その任期が満了し、又はその任命が取り消された場合であっても、その者は、判決の準備及び言い渡しを完了するまで、又はその任期が満了する前若しくはその任命が取り消される前に審理を開始した事項に関するその他の業務を完了するまで、臨時裁判官としての職務を継続することができる。
第110条 高等裁判所の全ての裁判官は、60歳に達したときに退官する。ただし、本項の規定は、本条の次項以降の規定に従って適用されるものとする。
2 高等裁判所の裁判官は、55歳に達したときは、いつでも連合共和国の職務を退職することができる。ただし、大統領がその裁判官を退職させるべきではないと指示した場合は、この限りでない。大統領がそのように指示した場合、大統領の指示が関係する裁判官は、大統領がそのために指定した期間が満了するまで退職してはならない。
3 60歳に達した裁判官が引き続き在職することが公共の利益に資すると大統領が認め、その裁判官が書面によって引き続き在職することに同意した場合、大統領は、その指定する期間、その裁判官が引き続き在職するよう指示することができる。
4 裁判官が本条の規定によって退官しなければならない年齢に達した場合であっても、高等裁判所の裁判官の職にあった者は、その年齢に達した後であっても、判決の準備及び言い渡しを完了するまで、又はその年齢に達する前に審理を開始した事項に関するその他の業務を完了するまで、引き続きその職務を遂行することができる。