第1条【個人の保護と人間の尊厳】、第2条【基本的人権】、第3条【その他の権利】
第1編【個人及び社会】
第1章【個人の基本的権利】
第1条 個人の保護及びその尊厳の尊重は、社会及び国家の至上の目的である。第2条 全ての人は以下の権利を有する。
(1)生命、アイデンティティ、道徳的、精神的及び身体的健全性、並びに自由な発達及び幸福に対する権利。胎児は、その利益となるあらゆる事項に関して権利の主体である。
(2)法の下の平等に対する権利。何人も、出自、人種、性別、言語、宗教、意見、経済的地位又はその他の理由によって差別されてはならない。
(3)個人的又は集団的な態様による、良心及び宗教の自由に対する権利。何人も、その思想又は信条を理由に迫害されてはならない。意見による犯罪は認められない。公の場における信仰の実践は、道徳に対する侵害又は公共の秩序を乱すものでない限り自由である。
(4)法律の責任下に事前の承認、検閲又は妨害を受けることなく、あらゆる社会的通信手段を用いた、口頭若しくは書面による言葉又は映像による情報、意見、表現及び思想の発信の自由に対する権利。
書籍、報道及びその他のメディアを通して行われた犯罪は、刑法によって定義され、裁判所において裁かれる。
表現機関を停止若しくは閉鎖し、又はその自由な流通を妨げる行為は犯罪である。情報提供及び意見表明の権利には、メディアを設立する権利も含まれる。
(5)必要とする情報を理由を開示することなく請求し、公的機関から法定期間内に各費用負担で受領する権利。ただし、個人のプライバシーに影響を与える情報、及び法律又は国家安全保障上の理由で明示的に除外されている情報を除く。
全ての人は銀行秘密及び税務上の機密を保持する権利を有する。ただし、以下の要請があればこれを制限することができる。この基本的権利の制限は、根拠となる決定を含む法律に従い、権限を有する者の責任の下で実施される。
(1)裁判官
(2)検察官
(3)議会調査委員会からの要請で、法律に従い、捜査中の事件に関連するもの。
(4)共和国会計検査院長からの要請。ただし、国家又はその助成団体の資金を運用又は管理する公務員に関し、政府の3階層において管理行為の範囲内に限る。
(5)銀行保険年金基金監督官からの要請で、金融情報に関する特定の目的のためのもの。
(6)コンピュータ化されているか否か、公的か私的かを問わず、情報サービスが個人及び家族のプライバシーに影響を与える情報を提供しないことを保障される権利。
(7)名誉及び社会的評価、個人及び家族のプライバシー、並びに自己の発言及びイメージに対する権利。
メディアによって不正確又は不当な記述により影響を受けた全ての人は、法的責任を損なうことなく、無償、即時かつ相応の方法でこれを是正する権利を有する。
(8)知的、芸術的、技術的及び科学的創造の自由、並びにそのような創造物及びその産物の所有権に対する権利。国は文化へのアクセスを促進し、その発展及び普及を奨励する。
(9)住居の不可侵の権利。何人も、現行犯又はその重大な恐れがある場合を除いて、居住者の許可又は令状なく住居に立ち入り、又は捜査若しくは捜索を行うことはできない。健康上又は重大な危険を理由とする例外は、法律によって規定する。
(10)私的な通信及び文書の秘密及び不可侵の権利。
通信、電信又はそれらの機器は、裁判官が発行する正当な令状によってのみ、法律に規定するあらゆる保障の下で開封、押収、傍受又は盗聴することができる。捜査の原因と無関係な事項については、秘密を守らなければならない。
本条項に違反して入手された私的文書は、法的効力を有しない。
会計及び管理上の帳簿、証票及び文書は、法律に従い、関連する機関による検査又は監査の対象となる。これに関して講じられる措置には、裁判所の命令による場合を除いて、没収又は差押えは含まれない。
(11)居住地を選択し、国内を自由に移動し、並びに出国及び帰国する権利。ただし、健康上の理由、裁判所の命令、又は外国人に関する法律の適用による制限を除く。
(12)武器を持たない平和的集会の権利。私有地又は公開の場所での会合は、事前の通知を要しない。公共の広場及び路上で行われるものについては、関連する機関への事前の通告を要し、当該機関は、安全又は公衆衛生上の実証的な理由によってのみ、そのような会合を禁止することができる。
(13)事前の許可を得ることなく、法律に従い、財団及び種々の形態の非営利の法的団体を結成及び設立する権利。これらの団体は、行政上の決議によって解散することはできない。
(14)公共の秩序に関する法律に反しない限り、適法な目的のために契約を締結する権利。
(15)法律に従い、自由に労働する権利。
(16)財産権及び相続権。
(17)国の政治的、経済的、社会的及び文化的な生活に、個人又は団体として参加する権利。市民は、法律に従い、機関を選挙、解任又は取り消す権利、並びに立法発議及び国民投票の権利を有する。
(18)政治的、哲学的、宗教的又はその他の信念の秘密を守り、及び職業上の秘密を保持する権利。
(19)民族的及び文化的アイデンティティに対する権利。国は、国民の民族的及び文化的多様性を認め、これを保護する。
全てのペルー人は、いかなる機関においても通訳を介し、自身の言語を使用する権利を有する。外国人は、いかなる機関から召喚された場合も、同様の権利を享受する。
(20)個人又は団体で、権限を有する機関に対し、書面で請願する権利。当該機関は、法定期間内に利害関係者に対し、書面で回答する責任を負う。
軍及び国家警察の隊員は、個人としてのみ請願権を行使することができる。
(21)国籍に対する権利。何人もこれを奪われることはない。また、何人も、共和国の領域内外でパスポートを取得又は更新する権利を奪われることはない。
(22)平和、平穏、余暇の満喫、休息、及び生活の発展に適したバランスのとれた環境を享受する権利。
(23)正当防衛の権利。
(24)以下の結果として、個人の自由及び安全に対する権利。
(a)何人も、法律が命じないことをする義務はなく、法律が禁じていないことをするのを妨げられることもない。
(b)法律の定める場合を除いて、個人の自由に対するいかなる制限も許されない。いかなる形態の奴隷制、隷属及び人身売買も禁止する。
(c)債務のために収監されることはない。この原則は、扶養義務の不履行に対する裁判所の命令を制限するものではない。
(d)何人も、その実行時に処罰の対象となる違反行為として法律に明示的かつ明白に規定されていなかった行為又は不作為によって、訴追又は有罪判決を受けることはない。また、何人も、法律に規定されていない刑罰によって処罰されてはならない。
(e)全ての人は、有罪判決を言い渡されるまで無罪とみなされる。
(f)何人も、裁判官の発行する正当な令状、又は現行犯事件の警察機関による場合を除いて、勾留されることはない。勾留は、捜査の遂行に厳密に必要な時間以上に及んではならず、いかなる場合にも、被勾留者は、最長48時間以内、又は移送期間内に、管轄裁判所に引き渡されなければならない。
この期間は、テロ、スパイ行為、違法薬物取引、及び犯罪組織による犯罪の事件には適用されない。そのような事件では、警察機関は、被疑者を15日以内、予防拘禁することができる。警察機関は検察庁及び裁判官にその旨を通知し、裁判官はその期間が経過する前に管轄権を行使することができる。
(g)何人も、犯罪の捜査のために不可欠であると認められる場合に、法律の定める形式及び期間、拘禁される場合を除いて、監禁されてはならない。当該機関は、被拘禁者が拘禁されている場所を、遅滞なく書面で明示する責任を負う。
(h)何人も、道徳的、精神的又は身体的暴力の犠牲になってはならず、また、拷問又は非人道的若しくは屈辱的な取扱いを受けてはならない。誰でも、負傷者又は自ら機関に訴えることができない者の診療を、直ちに要請することができる。暴力によって得られた供述は無効である。これを行った者は責任を負う。
第3条 本章に規定する権利の列挙は、憲法が保障するその他の権利を排除するものではない。また、類似の性質を有する、又は人間の尊厳、若しくは国民主権、民主的法治国家及び共和制の原理に基づくその他の権利を排除するものでもない。
・ペルー政治憲法(1993)【私訳】へ戻る。