第16条【プライバシー権、適正手続の保障】、第17条【自力救済の禁止、公正な裁判を受ける権利】、第18条【刑務所制度】

第1編

第1章【人権及び保障】

第16条 何人も、手続きの法的根拠を明記した権限のある機関の発行する令状によらなければ、身体、家族、住居、書類又は所有物について干渉されることはない。口頭審理が規則によって定められる裁判の形式で行われる訴訟手続においては、その内容及び本段の規定の遵守を保障する媒体への記録で足りるものとする。

 全ての人は、国家安全保障、公共の秩序、公共の安全及び公衆衛生、又は第三者の権利の保護を理由として、データ処理に適用される原則の例外となる場合を規定する法律の定める条件の下で、自己の個人情報の保護、アクセス、訂正、削除、及び異議の表明に関する権利を有する。

 司法機関は、法律によって拘禁刑が科される犯罪についての告発又は告訴、並びに犯罪が行われたこと、及びその犯罪を実行し、又はその実行に関与した蓋然性を示す証拠がある場合を除いて、逮捕状を発行することはできない。

 逮捕状を執行する機関は、最も厳格な責任の下で、遅滞なく、被告人を裁判官の前に出頭させなければならない。これに違反した場合、刑法によって処罰される。

 何人も、被告人が犯罪を行っている最中又は犯罪を行った直後に、これを逮捕することができる。遅滞なく、最寄りの民事機関に引き渡し、速やかに検察庁に引き渡すものとする。逮捕は、直ちに記録しなければならない。

 緊急の場合に限り、重大な犯罪で、法律によって認められ、被告人が裁判から逃れる恐れがある場合において、時間、場所又は状況によって司法機関に出頭させられないときは、検察官は、その責任の下で、手続きの根拠となる証拠を示して拘禁を命じることができる。

 緊急の事件又は現行犯の場合において、被拘禁者の送致を受けた裁判官は、法律の留保を付した上で、直ちに拘禁を承認し、又は釈放を命じなければならない。

 司法機関は、検察庁の請求により、又は組織犯罪の事件において、捜査、個人若しくは法的財産の保護のために必要である場合、又は被告人が裁判から逃れる恐れがある場合に限り、法律の定める場所及び時間で、40日を超えない期間、逮捕を命じることができる。この期間は、その原因となった事由が引き続き存在することを検察庁が証明する場合に限り、延長することができる。いかなる場合においても、拘禁期間は通算して80日を超えてはならない。

 組織犯罪とは、関連する法律の条件の下で、常習的又は反復的に犯罪を行う3人以上の者による、事実上の組織を意味するものとする。

 被告人は、検察庁によって48時間を超えて拘禁されることはなく、その期間内に釈放を命じるか、又は司法機関に送致しなければならない。組織犯罪について法律の定める場合には、この期間を2倍に延長することができる。この規定を濫用した場合、刑法によって処罰される。

 捜索令状は、検察庁の請求により、司法機関のみが発行することができる。捜査する場所、逮捕する者及び捜索する物を明示し、捜索はこれらに限定されなければならない。捜索の終了後、捜索場所の占有者が提案する2人の証人の立会いの下に、又は証人が不在の場合若しくは拒否した場合には、捜索を実施した機関によって調書を作成しなければならない。

 私的通信は不可侵である。法律により、これらの自由及びプライバシーを侵害する行為を処罰する。ただし、関係する個人が自主的に提示する場合を除く。裁判官は、犯罪の実行に関連する情報が含まれている場合に限り、その範囲を判定するものとする。法律の定める守秘義務に違反する通信は、いかなる場合も認められない。

 連邦司法機関のみが、法律によって権限を付与された連邦機関又は関連する連邦構成体の検察庁の請求により、私的通信の傍受を許可することができる。そのために、所管機関は、傍受の種類、対象及び期間を記載して、請求の法的根拠を明示しなければならない。連邦司法機関は、選挙、税務、商事、民事、労働若しくは行政に関する事項、又は被拘禁者と弁護人の間の通信については、これを許可することはできない。

 司法機関に、被告人及び被害者又は加害者の権利を保障した上で、司法上の取締りを必要とする差止命令、予防措置及び捜査手法の請求について、あらゆる手段によって速やかに決定する管理裁判官を置くものとする。裁判官、検察庁及びその他の所管機関の間のあらゆる通信について、信頼性のある記録を作成しなければならない。

 許可された傍受は、法律の定める要件及び制限に従わなければならない。これに従わない傍受の結果は、証拠能力を有しない。

 行政機関は、衛生及び警察に関する規則が遵守されていることを確認するためにのみ、住居への立入りを実施し、また、税務上の規定が遵守されていることを検査するために必要な帳簿及び書類の提示を要求することができる。この場合、各法律及び捜索に関する手続きに従わなければならない。

 郵送で流通する封書はあらゆる検査を免れ、その違反は法律によって処罰されるものとする。

 平時において軍の隊員は、所有者の意に反して個人の住居に居留し、又はいかなる役務も課すことはできない。戦時において軍人は、関連する戒厳令の定める条件の下で、宿泊、荷物、食糧及びその他の便益を要求することができる。

第17条 何人も、自己の権利を主張するために、自ら正義を執行し、又は暴力を行使してはならない。

 全ての人は、法律の定める期間及び条件の下で、迅速、完全かつ公平に判決を下し、司法を執行する裁判所による裁判を受ける権利を有する。そのサービスは無償とし、したがって法廷費用は禁止される。

 裁判の形式で行われる裁判又は手続きにおいて、当事者間の平等、適正手続又はその他の権利に影響を与えないことを条件として、その機関は手続き上の形式よりも紛争の解決を優先するものとする。

 連邦議会は、集団訴訟を規制する法律を制定する。この法律により、適用される事項、司法手続及び損害賠償の機構を定めるものとする。連邦裁判官は、この手続き及び機構を専属的に管轄する。

 法律により、裁判外紛争解決機構を定めるものとする。刑事に関する事項については、その適用を規制し、損害賠償を保障し、司法上の監督が必要とされる場合を定める。

 口頭弁論を終結させる判決は、当事者が召喚された後、公開で行われる。

 連邦法及び地方の法律により、裁判所の独立性及びその決定の完全な執行を保障するために必要な方法を定めるものとする。

 連邦及び連邦構成体は、国民のために質の高い公選弁護制度を保障し、公選弁護人の専門職としての職業制度の条件を保障しなければならない。公選弁護人の報酬は、検察官のそれを下回ってはならない。

 単純な民事上の債務のために収監されることはない。

第18条 予防拘禁は、拘禁刑に値する犯罪の場合のみ行われる。収監場所は刑の執行場所とは区別され、両者は完全に分離されなければならない。

 刑務所制度は、人権尊重、労働、職業訓練、教育、保健及びスポーツを基礎とし、受刑者の社会復帰を達成し、その再犯の防止を保障する手段として、法律の定める利益を遵守して組織されるものとする。女性は、そのために男性用に設置された場所とは別の場所で刑に服するものとする。

 連邦及び連邦構成体は、管轄する犯罪で判決を宣告された者が、異なる管轄の刑務所施設で刑に服することができるよう、協定を締結することができる。

 連邦及び連邦構成体は、それぞれの権限の範囲において、青少年のための包括的な司法制度を定めるものとする。この制度は、法律によって犯罪とされる行為を実行し、又はこれに関与した、12歳以上18歳未満の者に適用される。この制度は、憲法が全ての人に認める人権、及び青少年が発達段階にあるために認められる特別な権利を保障するものである。12歳未満で、法律によって犯罪とされる行為を実行し、またはこれに関与した者は、社会扶助の対象となるのみとする。

 各政府における制度の運用は、青少年のための司法の整備及び運営を専門とする機関及び裁判所の責任とする。指導、保護及び治療のための措置は、青少年の包括的な保護及び最善の利益を考慮し、それぞれの場合に必要に応じて適用することができる。

 この制度の適用において、適切な場合にはいつでも、代替的な司法手続が遵守されるものとする。青少年のための司法手続は、告発及び口頭で行われ、適正手続の保障、並びに送致する機関及び措置を執行する機関の独立性が遵守される。その措置は、行われた行為に比例し、青少年の社会復帰及び家族との関係回復、並びに青少年の人格及び能力の完全な発達を目的とするものでなければならない。拘禁は最も短い適切な期間、極限的な措置としてのみ行われるものとし、14歳以上の青少年に対し、法律によって犯罪とされる行為を実行し、又はこれに関与した場合のみ適用することができる。

 外国で服役中のメキシコ国籍の受刑者は、本条の定める社会復帰制度に基づき、共和国に移送して服役させることができる。また、連邦法又は一般法の犯罪で判決を宣告された外国籍の者は、そのために締結された国際条約に従って、出身国又は居住国に移送することができる。受刑者の移送は、その明示的な同意がある場合にのみ行うことができる。

 判決を宣告された者は、社会復帰としてコミュニティへの復帰を促進するために、法律の定める場合及び条件の下で、その住居に最も近い刑務所で刑に服することができる。この規定は、組織犯罪の場合及び特別な保安措置を必要とするその他の受刑者については適用されない。

 組織犯罪事件の未決拘禁及び刑の執行のために、特別施設を設置するものとする。所管機関は、組織犯罪の被告人及び受刑者に対し、弁護人との面会を除いて、第三者との通信を制限し、この施設の収監者に特別な監視措置を施すことができる。法律によって特別な保安措置を必要とするその他の受刑者にも、本段を適用することができる。

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