『おっさん陰陽師の友人は元SKE48(1)【竹井カナ編】』第1章
『氷河期世代のおっさんだけど、陰陽師の力で妖怪事件を解決したら、芸能人(元SKE48)の友人ができた件(1)【竹井カナ編】』
第1章 最初の依頼
高校生の頃は、東の工藤・西の服部・中部の安倍ともてはやされたものだった。
しかし、現実は小説やまんが・アニメと違う。
警察が探偵と協力して解決するような、難事件はめったに起こらない。
私は大学3年生のときに、普通に就職活動をすることとなった。
普通に就職して普通に働き、普通に生活できればそれでよいと思っていた。
ところが、その頃の日本経済は不況の真っ只中。いわゆる就職氷河期だったのである。
エントリーシートを送っても、面接まで進むことの方が少なかった。
幸運にも面接を受けることができたとしても、ほとんどが不採用。
お祈りメールを送ってくるだけましな方で、それさえ送ってこない会社もざらにあった。
「有名な探偵さんなら、それを仕事にしたらよろしいんじゃないですか」と、面接官に嫌味を言われることさえあった。
それでも何とか名古屋の小さな不動産屋に就職することができた。
そこで一生懸命働いて修行した後に、学生時代に合格していた行政書士として、晴れて豊橋で独立することにしたのがつい最近のこと。
ただ、勢いで独立したものの、営業が下手くそなせいなのか、お客がほとんど来ない。
開店休業状態で、閑古鳥が鳴いていた。
仕事がないのでどうしようかと悩んでいたときに、不思議な依頼が舞い込んだ。
ただし、それは行政書士の仕事でも探偵の仕事でもなく、陰陽師としての仕事であった。
実は、私の先祖はほとんど無名の陰陽師である。
そのご先祖様は、かの有名な陰陽師、安倍晴明の遠縁にあたるらしい。
しかし、家系図などの信頼に足る資料がほとんどないので、本当のところはよく分からない。
私には、そんな信憑性に欠ける話を方々で言いふらす叔父がいて、その話を真に受けたのが今回の依頼者であった。
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