『おっさん陰陽師の友人は元SKE48(1)【竹井カナ編】』第4章
『氷河期世代のおっさんだけど、陰陽師の力で妖怪事件を解決したら、芸能人(元SKE48)の友人ができた件(1)【竹井カナ編】』
第4章 形ばかりの儀式
その日、カナさんのマンションを訪れた。私は事務所に入ると、改めてカナさんとマネージャーの山本君にあいさつをした。
カナさんは、その場にいた数名のスタッフを私に紹介してくれた。
その後、私は山本君と雑談しながら、事務所内の各部屋を見て回った。
しかし、実は各部屋を見て回る必要はなかった。
最初に入って、皆とあいさつした部屋は、YouTubeの撮影に使う一番大きな部屋だったのだけれど、その部屋の隅に妖(あやかし)らしきものが見えたのだった。
困ったことに、それは簡易的なお祓いで退散してくれるような代物ではなかった。
(どうしようか。それなりに力のある妖だろう。
皆に本当のことを言って、徒に怖がらせるようなことはするべきではない。
しかし、簡易的な呪法で退治することもできないだろうし・・・)
私の様子をじっと見ていたカナさんは、私の心を見透かしたかのように言った。
「それでは、とりあえず予定通り、悪霊払いの儀式だけ行ってください。その後、今日はYouTubeの撮影もありませんので、解散としましょう。私は安倍さんとコーヒーでも飲みながら、本日の謝礼についてお話したいと思います。」
「そうですね。承知いたしました。」
私はそう言うと、形ばかりの儀式を行った。
山本君やスタッフの皆は、「これでもう安心ですね」と大変喜んでくれた。
しかし、もちろんそんな形ばかりの儀式で退散するような妖ではなかった。
その妖は、最初は不思議そうに儀式を見物していたけれど、儀式が終わるとまた部屋の隅に鎮座して私を凝視するのだった。
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