『おっさん陰陽師の友人は元SKE48(1)【竹井カナ編】』第2章
『氷河期世代のおっさんだけど、陰陽師の力で妖怪事件を解決したら、芸能人(元SKE48)の友人ができた件(1)【竹井カナ編】』
第2章 依頼人の話
依頼人の話を聞くために、豊橋の喫茶店、マッターホーンで待ち合わせることとなった。私は一足先にお店に入り、夏の暑い日だったのでアイスコーヒーを飲みながら、ぼんやりと依頼人を待っていた。
そこに現れた彼女を一目見て、私は少なからず動揺してしまった。
その女性は元SKE48の芸能人、竹井カナ(仮名)だったのである。
私は初対面のあいさつをした。
「はじめまして。私、安倍と申します。SKEのカナちゃんによく似ていらっしゃるので、少しびっくりしてしまいました。」
「はじめまして、竹井です。SKEを卒業してからは名古屋の芸能事務所と契約し、タレントとして活動しています。最近は、豊橋の方でも時々お仕事させていただいております。」
「あぁ、本物だったんですね、失礼しました。竹井さんのYouTubeも見たことがありますよ。『カナちゃんネル』でしたっけ。テレビのバラエティ番組に負けないくらい、おもしろい企画ばかりですね。」
「ありがとうございます。まだ始めたばかりなので、これからどんどんおもしろい動画をアップしていく予定なんですよ。」
「目指せ、金の盾ですね。」
「アハハ。そんな立派なものをいただけるかどうか、今はまだ分かりません。動画の企画も試行錯誤の連続です。」
しばらくそんな雑談をした後に、カナさんは神妙な面持ちで今回の依頼について説明を始めた。
「最近マンションを一室購入したんです。」
「へぇ、すごいですね。有名な芸能人のマンション、一度拝見してみたいものです。」
「そんなに高額な物件ではないんですよ、中古なので。でも、リノベしたものなので、中はとてもきれいです。自宅兼個人事務所兼YouTube撮影スタジオです。ただ、気になることが・・・」
「何か問題でも。」
「いえ、霊感の強い山本君、私のマネージャーなんですが、彼が言うには何か感じると・・・」
「霊感・・・割安な物件・・・まさか事故物件ではないかと疑われているんですか?」
「まぁ、仮にたとえ事故物件だとしても、業者がそれをごまかす方法について聞いたことはありますし・・・何て言ったらいいのか・・・私自身はそんなことあまり気にしない性格なんです。いちいちそんなこと気にしていたら、生活できないじゃないですか。」
「はぁ・・・竹井さんって、意外と気がお強いんですね。」
「でも、山本君や他のスタッフたちは、霊みたいなものが居ると信じ込んでいるみたいなんです。」
「その話を芸能事務所の営業部の方と話していたら、安倍さんの叔父様の話になって・・・」
「あぁ、雪雄叔父さんだな、きっと。酒が入ると、必ず陰陽師の話をするんですよ。俺の先祖は安倍晴明だ、俺にも悪霊が見えるんだ、祓う力があるんだと・・・」
「えぇ、多分その叔父様です。」
「叔父にそんな力はありませんよ。しらふだとそんな話、絶対にできない人なんですから。しかし、まぁ、そんな話がカナさんの芸能事務所の営業部の方の耳に入ったんですから、別の意味で大した人だなぁ・・・いや、お恥ずかしい限りです。」
「いえいえ。晴彦さんが昔は有名な高校生探偵だったことも、今は行政書士の先生として活躍されていることも承知しております。そして、叔父様の話が本当なら、不思議な力をお持ちであることも。その上で、先生にご依頼したいと思っているんです。」
カナさんはいたずらっぽく、私に微笑むのだった。
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