人と仕事の政治経済学、雇用を削減するイノベーションと人手不足社会。
1 AIに仕事を奪われる?
先日のNHKスペシャルでは、AIに人間の仕事が奪われるという未来予想について、出演者がいろいろ議論していた。・マネー・ワールド~資本主義の未来~第2集 仕事がなくなる!?(NHKスペシャル)
この番組でも少しだけ言及されていたけれど、以前から新しい技術によるイノベーションが特定の仕事を消滅させることはあった。
しかし、新しい技術に関連する新しい産業が勃興し、雇用の総計は増え続けてきた。
ところが近年のイノベーションは、合理化により旧来の仕事を減少させるところまでは同じなのだけれど、それに見合うだけの新しい雇用を十分に生み出せないので、雇用の総計を減らすことになる。
イノベーションで社会が豊かになっても新しい雇用の創出が不十分であるならば、この雇用減少をどう考えるべきかは、確かにこれからも重要なテーマになるだろう。
2 失われた20年
僕はAIの専門家でもないし、労働経済学はもとより経済学も専門ではないので、AIについての技術論や経済学的に難しい話をするつもりはない。失われた20年を経験してきた一人のおっさんとして、個人的な観点からそれなりに論考しようかと思うけれど、最終的には感想文的なものに成り下がるかもしれない。
バブル崩壊後の日本経済の長期的な低迷やデフレ経済の弊害について、政治経済学的な原因についての考察とは別に、人と仕事の関係、求人・求職の状況について、今振り返ると何となく時代の流れを整理できるような気がする。
就職氷河期と呼ばれる時代は、企業が求人を減らしたために、就転職活動を成功させるのが厳しい環境だった。
特にいわゆるホワイトカラーとしての就職が厳しくなったのだけれど、要するにこれまでのように事務正社員として就職して出世して生活を安定化させるという、これまでの人生のモデルケースを歩むのが難しくなり、そういうモデルケースを歩めないことに多くの人たちが悲観する時代だった。
3 ハケンの時代
しかし、当時はまだまだインターネットやコンピュータシステムが今ほど発達していなかった訳で、いくら合理化しても事務の仕事はなくならない。それでどうなったかというと、一般事務員などから正社員を派遣社員で代替するような会社が増えていった。
『ハケンの品格』というドラマが放送されたのは、もう10年ほど前のことである。
派遣社員で代替される職種は事務だけではなく、エンジニアを派遣する会社も重宝されて、多くの派遣エンジニアが活躍する時代になった。
4 フリーランスの時代?
ハケンの時代を経た今もなお、雇用を削減するイノベーションはとどまることなく進化し続けている。僕は青色申告のためにオンラインの会計ソフトを使用しているのだけれど、最近の会計ソフトの進化に驚いてしまった。
会社の業種や規模によると思うけれど、個人事業主レベルであれば会計事務所に依頼しなくても、適切な会計ソフトを使用することにより経理事務ができてしまう。
クラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトでは、一般事務、営業事務、経理事務などの事務の仕事の募集が結構ある。
もちろん、エンジニアやデザイナーなどの専門的な仕事の募集もあるけれど、今はそういう専門職でなくても、一般的な事務の仕事を在宅で請け負うことができるのである。
もちろん、毎日きちんと会社に出社しなければできない仕事もなくならないとは思う。
しかし、もしかすると今後は、会社に出社しなくてもできるものから順番に、事務の仕事を在宅ワーカーを利用して処理する会社が増えていくのかもしれない。
5 「日本の未来は(Wow Wow Wow Wow)」
少子高齢化する国家日本の人口減少社会において、最近は人手不足の弊害が喧伝されている。就職氷河期で若者が就職したくてもできなかった、あるいは望んだ仕事に就けなかった時代を知っているので、就職売り手市場とか人手不足とかのニュースを見ると、隔世の感がある。
人生は時代に翻弄されるものなのだ。
その一方で、雇用を削減するイノベーションも進化して、人間の仕事がAIなどに奪われる未来も語られたりする。
キャッシュレスは世界的な潮流であり、コンビニなどの店舗を無人化することを企業が真剣に考える時代でもある。
最後に、これからの時代を生き残るための処方箋でも書けばかっこよくこの記事を結ぶことができるのだろうけれど、そんなものは全く考えていないので、興味のある人はネットで調べてみてください。
6 参考記事
・2030年 あなたの仕事がなくなる 将来、あなたを襲う危機(東洋経済オンライン)・この15年で「増えた仕事」「減った仕事」は何か もっとも増えたのが介護職員、減ったのは?(東洋経済オンライン)
・freeeやトレードシフトによって会計事務員30万人の雇用が失われる可能性がある(知識の倉庫の整理)
・AIに代替される可能性が高い業務は「一般事務」「経理」「コールセンター」。一方、AIに代替されにくい業務とは…?―『ミドルの転職』コンサルタントアンケート集計結果―(エン・ジャパン株式会社)