2-3 中央銀行のバランスシートは重要である、それは金融政策と財政政策を連結するものだからである。
PAPER MONEY
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/PaperMoney/PaperMoneyAER.pdf
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『紙幣』の「2-3 中央銀行のバランスシートは重要である、それは金融政策と財政政策を連結するものだからである。」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated PAPER MONEY, CHRISTOPHER A. SIMS, II.3. Central bank balance sheets matter, because they connect monetary and fiscal policy. into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
現在市場価値でマイナスの純資産を有することの含意が、中央銀行と一般企業あるいは民間企業で異なるのは正しい。
純資産がマイナスの企業は債権者から支払いを求められる可能性が高いが、完済できる可能性は低い。
中央銀行は「貨幣を印刷することができる」 ― 請求に対する支払いとして預金を提供することができる。
それは通常の取付けの対象ではないので、その後債権者は支払われないことを恐れて、従って即時支払いを要求することになる。
その負債は政府証券建てであり、それは随意に発行され得るものである。
このことを念頭に置いて、ほとんどの経済学者は、本当に重要な唯一の、全体として政府のバランスシートを有する中央銀行を、政府の一部と考えた。
しかし、中央銀行が物価制御を目論み、そして財政政策と金融政策が連結されていないときには、これら二つの議論は分離してしまう。
伝統的な収縮的公開市場操作では、準備預金と通貨の量を収縮させるために資産の売却を要する。
もし中央銀行が赤字であれば、収縮的政策を積極的に行うことは不可能になる。
なぜならば、中央銀行が現に有する資産以上の資産を売却する必要に迫られることを誰もが知っているからである。
もし純資産がマイナスの中央銀行が準備預金の金利引き上げによって収縮させようとすれば、準備預金の拡張は避けたいので、準備預金の金利をファイナンスするために資産を売却せざるを得なくなり、持続不可能な経路を再びたどることになる。
もちろん、国庫が中央銀行を支援する態勢が整っていれば ― 必要なときにはいつでも有利子証券の形で中央銀行に追加の資産を提供して ― 中央銀行のバランスシートは実際に問題視されることはない。
国庫による財政的裏付けが存在しないか不確実なとき中央銀行の政策について考えるのであれば、国庫からの支援なしでどのような「財政的裏付け」を中央銀行自身が提供できるのか考えてみるとよい。
もちろん中央銀行は明示的な課税をすることはできないが、黙示的な課税をする方策を有する:通貨発行益である。
たとえバランスシートが現在市場価値で純資産マイナスの状態であろうと、中央銀行は通貨発行益による収入をバランスシートに還元することによって、一意に決定される物価水準を維持することができる。
しかし通貨発行益の収入はインフレ率に依存し、極端に高いインフレ時を除いて、一般的にインフレ率と共に増加する。
バランスシートがひどく損なわれてしまった中央銀行は、国庫の支援なしでは物価を固定することができないが、純資産のマイナスは適度であれば、通貨発行益によって一般的には「取り除く」ことができる。
もちろんほとんどの中央銀行は自身の役割は低インフレを維持することだと分かっている。
だからバランスシートの問題は、通貨発行益を生むためにインフレを要するため、中央銀行が政策目標を達成するための障害となり得る。
純資産がプラスの中央銀行でさえ、純資産がマイナスになることを恐れていくつかの政策活動を抑制されている。
例えば、最後の貸し手としての活動は、プラスの収益が期待されるときでさえ、一般的には損失のリスクを想定する。
財政的裏付けが不確実な中央銀行は、バランスシートを欠損することを恐れて、そのようなオペレーションを躊躇してしまう。
純資産がマイナスで財政的裏付けのない中央銀行のバランスシートの動態についての単純なモデルは、私の初期の論文(2005)で見ることができる。
しかしながらその論文では、中央銀行が無利子負債と短期国債を資産として有することを仮定する。
アメリカ連邦準備制度は準備預金という負債の金利を支払い、長期の債務を相当量有している。
連邦準備制度は準備預金の金利を引き上げる収縮的活動をすることができるし、その資産を売却することを必ずしも要しない、と論じられた(特に、私はそう論じた)。
しかし、この議論は財政的裏付けを仮定している。
それなしでは、長期債務からの金利は低いままなのに準備預金の金利は高い状態で、通貨発行益はインフレの最中マイナスになる。
今日アメリカとヨーロッパでは、中央銀行のバランスシートの財政的修復が行われるかは不透明である。
ヨーロッパでは、ECBが資本注入を求めた際にEMU中どのような割合で政府が資本を提供すべきかを定める、公式な「出資割合」が存在する。
しかし、もし求められた資本が巨額であり、その求めがいくつかの国で政治的に不人気なECBの政策活動の後を追って生じるのであれば、資本の提供は自動的には行われない。
もしかすると同様に重要なのだが、資本注入のリスクとその黙示的な財政移転を予見して、ECB理事会は一般の中央銀行がするようなECBによる市場安定化活動を許可することを拒否するかもしれない。
アメリカでのリスクは、緊縮的な金融政策の引き締めの後を追って資本注入の必要性が最も生じそうなことである。
引き締めは、連邦準備制度の長期債務保有上の資本損失を引き起こし、準備預金上の金利支払いの流れを増大させる。
これらの活動は成長を抑制し、増加する利子費から生じる増加する赤字に対面することを議会に強制する。
議会が歳入歳出立法を調整するため債務の上限引き上げに同意することができない環境下では、議会が苦痛を伴う決定のことで連邦準備制度を非難し、その過程で、連邦準備制度の資本増強に疑義を呈することになるのは想像に難くない。
・『紙幣』に戻る。
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/PaperMoney/PaperMoneyAER.pdf
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『紙幣』の「2-3 中央銀行のバランスシートは重要である、それは金融政策と財政政策を連結するものだからである。」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated PAPER MONEY, CHRISTOPHER A. SIMS, II.3. Central bank balance sheets matter, because they connect monetary and fiscal policy. into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
2-3 中央銀行のバランスシートは重要である、それは金融政策と財政政策を連結するものだからである。
以前、中央銀行のバランスシートは会計上のフィクションであり、何の実質的な利益もないと論じるマネタリストが存在した。現在市場価値でマイナスの純資産を有することの含意が、中央銀行と一般企業あるいは民間企業で異なるのは正しい。
純資産がマイナスの企業は債権者から支払いを求められる可能性が高いが、完済できる可能性は低い。
中央銀行は「貨幣を印刷することができる」 ― 請求に対する支払いとして預金を提供することができる。
それは通常の取付けの対象ではないので、その後債権者は支払われないことを恐れて、従って即時支払いを要求することになる。
その負債は政府証券建てであり、それは随意に発行され得るものである。
このことを念頭に置いて、ほとんどの経済学者は、本当に重要な唯一の、全体として政府のバランスシートを有する中央銀行を、政府の一部と考えた。
しかし、中央銀行が物価制御を目論み、そして財政政策と金融政策が連結されていないときには、これら二つの議論は分離してしまう。
伝統的な収縮的公開市場操作では、準備預金と通貨の量を収縮させるために資産の売却を要する。
もし中央銀行が赤字であれば、収縮的政策を積極的に行うことは不可能になる。
なぜならば、中央銀行が現に有する資産以上の資産を売却する必要に迫られることを誰もが知っているからである。
もし純資産がマイナスの中央銀行が準備預金の金利引き上げによって収縮させようとすれば、準備預金の拡張は避けたいので、準備預金の金利をファイナンスするために資産を売却せざるを得なくなり、持続不可能な経路を再びたどることになる。
もちろん、国庫が中央銀行を支援する態勢が整っていれば ― 必要なときにはいつでも有利子証券の形で中央銀行に追加の資産を提供して ― 中央銀行のバランスシートは実際に問題視されることはない。
国庫による財政的裏付けが存在しないか不確実なとき中央銀行の政策について考えるのであれば、国庫からの支援なしでどのような「財政的裏付け」を中央銀行自身が提供できるのか考えてみるとよい。
もちろん中央銀行は明示的な課税をすることはできないが、黙示的な課税をする方策を有する:通貨発行益である。
たとえバランスシートが現在市場価値で純資産マイナスの状態であろうと、中央銀行は通貨発行益による収入をバランスシートに還元することによって、一意に決定される物価水準を維持することができる。
しかし通貨発行益の収入はインフレ率に依存し、極端に高いインフレ時を除いて、一般的にインフレ率と共に増加する。
バランスシートがひどく損なわれてしまった中央銀行は、国庫の支援なしでは物価を固定することができないが、純資産のマイナスは適度であれば、通貨発行益によって一般的には「取り除く」ことができる。
もちろんほとんどの中央銀行は自身の役割は低インフレを維持することだと分かっている。
だからバランスシートの問題は、通貨発行益を生むためにインフレを要するため、中央銀行が政策目標を達成するための障害となり得る。
純資産がプラスの中央銀行でさえ、純資産がマイナスになることを恐れていくつかの政策活動を抑制されている。
例えば、最後の貸し手としての活動は、プラスの収益が期待されるときでさえ、一般的には損失のリスクを想定する。
財政的裏付けが不確実な中央銀行は、バランスシートを欠損することを恐れて、そのようなオペレーションを躊躇してしまう。
純資産がマイナスで財政的裏付けのない中央銀行のバランスシートの動態についての単純なモデルは、私の初期の論文(2005)で見ることができる。
しかしながらその論文では、中央銀行が無利子負債と短期国債を資産として有することを仮定する。
アメリカ連邦準備制度は準備預金という負債の金利を支払い、長期の債務を相当量有している。
連邦準備制度は準備預金の金利を引き上げる収縮的活動をすることができるし、その資産を売却することを必ずしも要しない、と論じられた(特に、私はそう論じた)。
しかし、この議論は財政的裏付けを仮定している。
それなしでは、長期債務からの金利は低いままなのに準備預金の金利は高い状態で、通貨発行益はインフレの最中マイナスになる。
今日アメリカとヨーロッパでは、中央銀行のバランスシートの財政的修復が行われるかは不透明である。
ヨーロッパでは、ECBが資本注入を求めた際にEMU中どのような割合で政府が資本を提供すべきかを定める、公式な「出資割合」が存在する。
しかし、もし求められた資本が巨額であり、その求めがいくつかの国で政治的に不人気なECBの政策活動の後を追って生じるのであれば、資本の提供は自動的には行われない。
もしかすると同様に重要なのだが、資本注入のリスクとその黙示的な財政移転を予見して、ECB理事会は一般の中央銀行がするようなECBによる市場安定化活動を許可することを拒否するかもしれない。
アメリカでのリスクは、緊縮的な金融政策の引き締めの後を追って資本注入の必要性が最も生じそうなことである。
引き締めは、連邦準備制度の長期債務保有上の資本損失を引き起こし、準備預金上の金利支払いの流れを増大させる。
これらの活動は成長を抑制し、増加する利子費から生じる増加する赤字に対面することを議会に強制する。
議会が歳入歳出立法を調整するため債務の上限引き上げに同意することができない環境下では、議会が苦痛を伴う決定のことで連邦準備制度を非難し、その過程で、連邦準備制度の資本増強に疑義を呈することになるのは想像に難くない。
・『紙幣』に戻る。