第1章 導入
FISCAL POLICY, MONETARY POLICY AND CENTRAL BANK INDEPENDENCE
CHRISTOPHER A. SIMS
CHRISTOPHER A. SIMS
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『財政政策、金融政策そして中央銀行の独立性』の「第1章 導入」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated FISCAL POLICY, MONETARY POLICY AND CENTRAL BANK INDEPENDENCE, CHRISTOPHER A. SIMS, I. INTRODUCTION into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
第1章 導入
本稿は、関連するいくつかの現在の政策問題についての小論である。
現在の環境下での中央銀行の独立性とは何であろうか、そしてそれはいかにして維持され得るものだろうか。巨大な中央銀行のバランスシートは良性のものだろうか、それとも悪性なのか。
なぜ、アメリカ、ヨーロッパそして日本において、インフレを目標水準まで引き上げるのに金融政策は効果がないのだろうか。
財政赤字のファイナンスを、現在の条件下で効果のない金融政策と置き換えることはできるのだろうか。
これらの問題はすべて広く議論されてきたものだ。
それらをここでは一緒くたにする理由は、FTPL(Fiscal Theory of Price Level)は、このアプローチになじみのなかった問題に新しい考察を提供することにより、この問題に光を当てることができるからだ。
FTPLについての先行研究はほとんど動的連立方程式モデルを使い、未来の事象、それは政策についての振舞いも含むのだが、その可能性について正確に考える合理的エージェントで構成される経済を仮定する。
それが連立方程式の面で意味するところは、一般に普及したり学部生に教えるのには簡単な代物ではなかったということであり、合理的エージェントの仮定のせいで、合理性の仮定によりかかり過ぎて奇妙な結論に到達し、この理論を現実的ではないと退ける経済学者もいた。
しかし、この理論の基本的な考察は、実際には決して合理的エージェントの仮定に依存しない。
この理論が求めるものはただ、値上がりする政府証券を所有する人々は最終的にはそれを売却することや、たとえ期待が合理的に形成されるものではないとしても、現在そして将来の期待される増税が消費を押し下げることである。
もしかすると、この理論を使って具体的な政策問題を議論することによって、政策の諸問題に光を当てるべく、この理論をより直観的に訴えかけるものにすることができるかもしれない。
読者がこれより先の議論に進むための動機付けとして、ここに結論を記す。
1−1 現在の環境下における中央銀行の独立性とは何か、それはいかにして維持され得るのか。
中央銀行の独立性は、金融政策と財政政策を分離する試みである。
しかし、それは完全な分離ではない。
なぜならば、金融政策活動というものは財政的な帰結を伴うものだからだ。
急速なインフレ、あるいは長期の低インフレと低金利には、財政金融政策のコーディネートが必要だ。
独立性の保障には、これらの条件下においてコーディネートの必要性を率直に認識することが必要だ。
1-2 巨大な中央銀行のバランスシートは良性か否か。
良性ではない。
巨大なバランスシートは、有利子負債を増加させつつ、資産と負債のリスク特性の間の齟齬を拡大しながら進む。
これは純資産の市場価値が、おそらくはマイナスにさえ突入して 、大きく変動するリスクを生み出す。
これは政治的な二次的推測を招き、中央銀行の決定の財政的な影響の増大として反映され、それにより独立性が脅かされる。
1-3 なぜ、アメリカ、ヨーロッパそして日本において、インフレを目標水準まで引き上げるのに金融政策は効果がないのだろうか。
金利が長期に渡りゼロ水準だったため、金利引き下げのような標準的な金融政策活動が厳しく制約されるのだと説明することも、もちろんある程度可能だ。
しかし、金融政策が有効であるためには、高いインフレ率では、金利上昇が財政収縮を引き起こし、低いインフレ率では、金利下降が財政拡大を引き起こすことを要する。
低インフレと低金利が固定してしまっては驚きは生じず、実際そうだったが、低金利は大きな財政拡大を引き起こすことに失敗した。
1-4 財政赤字のファイナンスを、現在の条件下で効果のない金融政策と置き換えることはできるか。
財政拡大はゼロ金利以下では効果のない金融政策と置き換えることは可能だが、財政拡大と財政赤字のファイナンスは同じではない。
それはインフレを生み出すという目的と条件が必要だ。
財政赤字は将来の増税や歳出削減ではなく、将来のインフレによってファイナンスされると見なされなければならない。
・『財政政策、金融政策そして中央銀行の独立性』に戻る。