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第4章 巨大な中央銀行のバランスシート

FISCAL POLICY, MONETARY POLICY AND CENTRAL BANK INDEPENDENCE
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/JacksonHole16/JHpaper.pdf
 下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『財政政策、金融政策そして中央銀行の独立性』の「第4章 巨大な中央銀行のバランスシート」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
 下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
 I translated FISCAL POLICY, MONETARY POLICY AND CENTRAL BANK INDEPENDENCE, CHRISTOPHER A. SIMS, IV. LARGE CENTRAL BANK BALANCE SHEETS into Japanese.
 This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.

第4章 巨大な中央銀行のバランスシート

 2008年以前のアメリカでは連邦準備制度の負債は、際立った通貨によって支配されていた。
その資産は主に有利子国債であった。
プラスの通貨発行益はそれゆえにほとんど保証されて、金利における通常のビジネスサイクルの変動はあっても、ほとんどそれは変動しなかった。
連邦資産のポートフォリオは単純だったし、リスクを取ることに対する、あるいは別の発行形態を好むがゆえの批判があるだけであった。
それは、一時的にリスクを取って、時には最後の貸し手を引き受ける必要があったが、バランスシート自体が、そのような介入がバランスシートの問題を継続させないほどに十分強力であった。

 イングランド銀行は、そのバランスシート上に財政的なフローを作ることから、更に一層強力に隔絶されていた。
それは二つの分離されたバランスシートを持っていて、一つは発行部であり発行部は通貨を発行し、もう一つは銀行部であり銀行部は市中銀行の準備金勘定を提供し、必要なときには最後の貸し手となる。
通貨発行益は直接、発行部から国庫に送られる。
銀行部のバランスシートは小さく、最後の貸し手を要請されたときにはそのための財政銀行になり、そのリスクは国庫の責任であるという認識があらかじめ必要とされる。
最近における危機の間、分離されたバランスシートが、量的緩和で必要となるリスクのある長期債券所有のために組み立てられ、銀行部からの短期借入れによりファイナンスされた。
それゆえに、全てのバランスシートのリスクはこの帳簿上に存在し、イングランド銀行自体ではなかった。
リスクは国庫により生まれるという認識から始まった。

 しかし、中央銀行(イングランド銀行を除く)は2008年以来バランスシートを拡張して、巨大な量の有利子負債を抱えることになった。
通貨はいまだ中央銀行の負債の重要な構成要素ではあるが、もはや支配的なものではない。
中央銀行は長期資産を獲得し(特にアメリカと日本)、その価値は金利が変動し負債の価値と相関して変動する。
アメリカとヨーロッパでは、その資産はもはや、その負債のリスクと完全には一致しない。
特にヨーロッパでは、財政問題のレベルが多様である各国債務の問題へどれだけの支援を与えるか決定する必要があるのだが、中央銀行の政策は、財政政策の領域において通常存在する「勝者と敗者の選別」を巻き込み始めている。

 中央銀行のバランスシートの利益と損失の財政的な影響は、拡張されたバランスシートが現在のレベルであったとしても、金利が正常の水準まで上昇したときに生じる財政的な影響に比べれば、控えめなものである。
しかし一度それが公的議論を巻き起こすほどに巨大になれば、バランスシートの変動は、中央銀行それ自身に直接的に起因するものとして見られる。
通貨発行益の劇的な低下、あるいは国庫から中央銀行への大規模な資本注入の要請さえ生じ得る。
それは誤って、あるいは皮肉的に中央銀行の失敗のせいだと描かれるかもしれない。
そして本当は、それは中央銀行がリスクを取ってそれゆえに重要な財政的決定をしていることを表している。
事が起こった後に遅まきながら気付いた議会は、中央銀行は委任の範囲を越えたのではないかと議会で問い質す。

 中央銀行は、お金を作ることができるので、バランスシートのことを心配する必要がないと主張されることが時々ある。
中央銀行は、債務の支払不能状態という通常の意味での破産になることがない。
たとえ市場価値で負の純資産となるとしてもだ。
けれども、お金を作ることはインフレという結果を作り出すことができる。
中央銀行は、資産からの利子収入が有利子負債支払いを超える限り、市場価値で負の純資産に陥っても、無期限に生き残ることができる。
しかし、長期資産と短期債務(例えば有利子引当金)を有する中央銀行は、金利を引き上げることによってその純資産を通常減じる。
そして、資産価値が有利子負債の価値を下回るポイントに到達したとき、中央銀行はインフレ目標を維持するために資本注入を要請することになる。
中央銀行は通貨発行益を創造することによってほとんど常に資本注入を避けることができるが、そうするには一般的に高インフレを受容する必要がある。
手厳しい負の純資産と、低インフレの持続という目的のコンビネーションは、資本注入の必要を生じさせる。

 巨大な中央銀行のバランスシートは、資産と有利子負債を不完全に一致させて、最後の貸し手の必要で一時的な副作用を生じる。
しかし、それは中央銀行の金融政策活動の財政的影響を増幅させて、財政金融政策の相互作用の議論を政治的段階へと押し上げる得るので、そのようなバランスシートの拡張は最終的には巻き戻されるべきである。

・『財政政策、金融政策そして中央銀行の独立性』に戻る。

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