3-1 サミュエルソンの、蓄積あり純粋消費ローンモデル。
PAPER MONEY
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/PaperMoney/PaperMoneyAER.pdf
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『紙幣』の「3-1 サミュエルソンの、蓄積あり純粋消費ローンモデル。」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated PAPER MONEY, CHRISTOPHER A. SIMS, III.1. Samuelson’s pure consumption loan model, with storage. into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
その場合一つの安定的な物価が存在し、そこでは実質的な配分は効率的であり、他のあり得る初期物価の連続体では、それぞれが非効率的均衡に相当していて、政府債務あるいは貨幣の実質価値はゼロへ収縮する。
もし政府がプライマリーバランスの黒字(無利子の歳出に対する歳入超過)になれば、民間エージェントは将来における課税を彼らの購買力を減じるものとみなす。
よって彼らは、国債の価値が将来の課税の現在価値と一致するのに十分なほど物価が低下するまで、貯蓄(貨幣あるいは政府債務を蓄積しようとする試み)する。
このメカニズムは非一意性を排除し、プライマリーバランスの黒字がいかに小さくとも、そしてわずかなプライマリーバランスの黒字に対しても、実質的な配分を任意に効率的なものへと近付ける。
無限に連続する期間、それぞれの期間において2期間生存する同数のエージェントが生まれ、1単位の消費財、穀物が与えらる。
穀物は貯蔵することができるが、貯蔵の間、要素$\theta$により腐敗する。
政府債務も存在し、ドル建てである。
初期の日付$t = 1$でその量は$B_0$で、それは初期の老世代によって保有され、彼らは政府と共にそれを償還し、引換えとして$B_1 = R_0 B_0$の量の新規の1期間債務を受領する。
この新規国債は初期の老世代には無価値なので、彼らは穀物のために、初期の若世代にそれを売却しようとする。
日付$t$における物価は、穀物と新規に発行された政府債務の取引レートである。
このプロセスはその後、$t = 1, \cdots , \infty$の間、繰り返される。
公式には、$t$に生まれた世代は、その生涯において効用$U(C_{1t}, C_{2,t+1})$を、次の制約に従いながら最大化する。
\[
C_{1t} + S_t + \dfrac{B_t}{P_t} = 1 \quad\cdots\cdots(1)
\]
\[
C_{2,t+1} = \dfrac{R_t B_t}{P_{t+1}} + \theta S_t \quad\cdots\cdots(2)
\]
\[
S_t \geq 0, \; B_t \geq 0 \quad\cdots\cdots(3)
\]
なぜならば、政府は各期間、債務を繰り延べる以外何もしないので、市場清算条件は単純に$R_t B_t = B_{t+1}$である。
政府は各期間、任意の値$R_t$を設定する。
世代$t$のエージェントにとっての1階の条件は、次期間の$P$について完全に予測できると仮定すれば、
\[
\partial C_1 : \quad D_1 U(C_{1t}, C_{2,t+1}) = \lambda_t \quad\cdots\cdots(4)
\]
\[
\partial C_2 : \quad D_2 U(C_{1t}, C_{2,t+1}) = \mu_{t+1} \quad\cdots\cdots(5)
\]
\[
\partial B_t : \quad \dfrac{\lambda_t}{P_t} = \dfrac{R_t \mu_{t+1}}{P_{t+1}}, \; \mathrm{if} \; B_t > 0 \quad\cdots\cdots(6)
\]
\[
\partial S_t : \quad \lambda_t = \theta \mu_{t+1}, \; \mathrm{if} \; S_t >0 \quad\cdots\cdots(7)
\]
となる。
$B$と$S$の1階の条件により知ることができるのは、予想通り、もしエージェントが穀物を貯蔵し、また債務を購入していれば、それらの収益は一致しなければならないということであり、この場合、
\[
\dfrac{R_t P_t}{P_{t+1}} = \theta \quad\cdots\cdots(8)
\]
が成り立つ。
モデルがどのように機能するかの考察に資する解を容易に計算できるよう、$R_t$を定数、そして
\[
U(C_{1t}, C_{2,t+1}) = \log (C_{1t}) + \log (C_{2,t+1})
\]
と仮定する。
ラグランジュの未定乗数法を解けば、
\[
\dfrac{R_t P_t}{P_{t+1}} = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_t}, \; \mathrm{if} \; B_t > 0 \quad\cdots\cdots(9)
\]
\[
\theta = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_{1t}}, \; \mathrm{if} \; S_t > 0 \quad\cdots\cdots(10)
\]
が導出される。
貯蓄を$W_t = S_t + \dfrac{B_t}{P_t}$と置く。
対数的効用が解を容易にする。なぜならば、貯蓄に対する収益のレート($\rho_t$)がどうであれ、$\rho = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_{1t}}$であり、そしてこのことは次に、
\[
C_{1t} + W_t = 1 = C_{1t} + \dfrac{C_{2,t+1}}{\rho_t} = 2C_{1t} \quad\cdots\cdots(11)
\]
を含意する。
このようにして、貯蓄は常に資本を半減する。すなわち、0.5である。
この経済の均衡においては、蓄積は存在せず、名目債務が価値を有する(すなわち、$P_t < \infty$)。
貯蓄はなく、$C_{1t} = 0.5$で、貯蓄は全て、老世代から債務を購入するために使われてしまうので、やはり$C_{2t} = 0.5$となる。
このことは、全ての$t$について、$\rho_t \equiv 1$であり、それゆえに$R = \dfrac{P_{t+1}}{P_t}$であることを意味する。
換言すれば、物価は総利率で成長し、新規に発行された債務も満期の債務も、その実質価値は両方共に定数0.5である。
この均衡が維持されるためには、初期物価$P_1$は$2B_1$、すなわち$2RB_0$でなければならない。
しかしながら、この経済はまた、$S_t > 0$である均衡状態をも有する。
この均衡においては、もちろん、$\rho \equiv \theta = \dfrac{RP_t}{P_{t+1}}$である。
換言すれば、物価は$R$というレートではなく、$\dfrac{R}{\theta}$というより高いレートで成長する。
名目債務はいまだ$R$というレートで成長するが、実質債務は時間の経過と共に、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \theta \dfrac{B_{t-1}}{P_{t-1}}
\]
により収縮する。
経済はいかなる$\dfrac{B_1}{P_1} < 0.5$でも開始できる。
蓄積はその後、$S_1 = 0.5 - \dfrac{B_1}{P_1}$になる。
翌期以降、$S_t$は0.5へ向かって増加し、名目債という形式である貯蓄の実質価値はゼロへと収縮する。
換言すれば、全ての初期物価$P_1$は$2RB_0$を超え、それは$P_1 = \infty$の場合を含み(この場合、債券は価値を失い、全ての貯蓄は貯蔵の形式となる)、この経済における完全予見均衡に一致する。
これは物価不定の経済である。
この経済の資源制約が$C_{1t} + C_{2t} + S_t = 1 + \theta S_{t-1}$であることに留意せよ:若世代による消費と貯蓄+老世代の消費と貯蓄は、若世代の資本+老世代による貯蔵からの収益である。
貯蔵が正である全均衡において、$S$は増加しているか、($P_t = \infty$のときには)一定であり、$S_t > 0$であるこれら全均衡においては、$C_{1t} \equiv 0.5, \; C_{2t} < 0.5$だからである。
すなわち、$S_t > 0$であるこれら均衡は、$S_t = 0$である均衡よりもさらに悪いものである。
これらのより悪い均衡を避ける方法があると信じることは気休めになるかもしれないが、より悪い均衡を多少なりとも緩和するべき何かを、このモデルの構造の中に見出すことはできない。
ここで"$B$"と"$R$"という記号を使用したとき、課税からのいかなる償還もなく政府が債務を発行すれば不定の均衡となることは、もしかすると驚くべきことではないかもしれない。
しかし、もし$B$を$M$に置き換えて、$R = 1$と設定すれば、これはサミュエルソンの「貨幣」モデルとなり、それは時に、いかにして法定紙幣が価値を持つのかを理解するのに有用なメタファーとみなされる。
しかし、それを債務として考えることに立ち返ろう。
もし債務を償還するために税金を提供するとどうなるだろうか。
全てをこれまで通りとするが、今回政府は定額税$\tau$を各期間若世代に課するものとする。
政府の予算制約は、今回の場合、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \dfrac{RB_{t-1}}{P_t} - \tau \quad\cdots\cdots(12)
\]
となる。
貯蓄が債券と貯蔵という形式である均衡を仮定せよ。
そして両方共に実質総利率の収益$\theta$を持たなければならない。
これにより政府の予算制約は、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \theta \dfrac{B_{t-1}}{P_{t-1}} - \tau \quad\cdots\cdots(13)
\]
となる。
これは$\dfrac{B_t}{P_t}$の安定的な差分方程式である。
もし$t = 0$で演算を開始すれば、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \sum_{s=0}^{t-1}-\tau \theta^s + \theta^t \dfrac{B_0}{P_0} \quad\cdots\cdots(14)
\]
となるだろう。
しかし、$\theta < 1$であるから、この式の右辺は結局負となり、$t \rightarrow \infty$であるから、$\dfrac{-\tau}{(1 - \theta)}$へと収束する。
これは、この経済における代表的個人の観点からすれば、政府債務保有という形式の富が、個人の将来の納税義務をファイナンスするには不十分なのである。
このことは、貯蓄増加への欲望を含意し、価格に対して下降圧力を加え、このようにして実質債務の量を蓄積ゼロの値へと後退させる。
もし蓄積がなければ、債務の収益レートは正になり得る。
税金は個人エージェントには富を減じるものと認識されので、最初の期間の消費は減らされる。
公式には、最初の期間における民間予算制約は、今回の場合、
\[
C_{1,t} + \dfrac{B_t}{P_t} + \tau = 1 \quad\cdots\cdots(15)
\]
となる。
いまだ第1階の条件より、$\dfrac{RP_t}{P_{t+1}} = \rho_t = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_t}$を有するのであるが、そこでは$\rho_t$は収益の実質利率を表す記号である。
最初の期間の予算制約を書き直すために、これら最後の2式を使用すると、
\[
C_{1t} + \tau + \dfrac{C_{2,t+1}}{\rho_t} = 1 = C_{1t} + \dfrac{\rho_t C_{1t}}{\rho_t} + \tau \quad\cdots\cdots(16)
\]
を得られる。
よって、
\[
C_{1t} = \dfrac{1 - \tau}{2}
\]
であり、通常は対数効用と共に、最初の期間の消費は富の合計$1 - \tau$の半分である。
貯蔵がなければ、$C_{1t} + C_{2t} = 1$であり、その含意は、
\[
C_{2t} = \dfrac{1 + \tau}{2} \quad\cdots\cdots(17)
\]
である。
この一意的均衡において、それぞれの世代の効用は$\log (1 - \tau) + \log (1 + \tau) + 2\log \left( \dfrac{1}{2} \right)$であり、$2\log \left( \dfrac{1}{2} \right)$の上限より少ないことに留意せよ。
このように$\tau = 0$でありながら、効用を最大化する均衡は存在するが、それは一意ではなく、$\tau$の小さな正の値が均衡を一意にする一方で、小さな$\tau$にとって最適な効用へ近接し得る。
債務評価方程式はこれら均衡を有する。
総実質利率は$\rho_t = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_{1t}} \equiv \dfrac{(1 + \tau)}{(1 - \tau)}$である。
政府予算制約より、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \rho_{t-1} \dfrac{B_{t-1}}{P_{t-1}} - \tau
\]
を得るが、$\dfrac{B}{P} = \dfrac{C_2}{\rho}$が均衡の中で一定であるので、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \dfrac{\tau}{\rho - 1} \quad\cdots\cdots(18)
\]
である。
この公式から言えることとして、$\tau$がゼロに近接しても、$\dfrac{B}{P}$はゼロに近接しないことに留意せよ。
均衡における$\rho = \dfrac{C_2}{C_1} = \dfrac{(1 + \tau)}{(1 - \tau)}$及び(18)式における$\rho$にこれを代入すると、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \dfrac{1 - \tau}{2} \quad\cdots\cdots(19)
\]
となる。
なぜならば$\rho \rightarrow 1$で$\tau \rightarrow 0$であり、換言すれば、たとえ債務評価方程式(18)が保持されるとしても、$\tau \rightarrow 0$であれば、実質債務は2分の1、効用を最大化する均衡におけるその値に収束するのである。
初期の物価がいかにして決定されるかを見るために、初期の政府予算制約に着目する。
$R_{-1}$と$B_{-1}$は歴史的に付与されており、よって、
\[
\dfrac{B_0}{P_0} = \dfrac{1 - \tau}{2} = \dfrac{R_{-1}B_{t-1}}{P_t} - \tau \quad\cdots\cdots(20)
\]
である。
この方程式は、$R_{t-1}B_{t-1} > 0$である限り、一意の正の値$P_0$という解をもつ。
物価は、$R_t$についての連続する政策選択によって、引き続き連続して決定され、$R_t$がより高くなればインフレを高進させる。
もし初期の$R_{t-1}B_{t-1}=0$であればどうだろうか。
$B_0 > 0$であるように制約を維持し続ければ、財政政策は、$t = 0$において単純に$\tau$をその一定の値へ設定することができない。
この場合、時間0における老世代は、消費をファイナンスする術がない。
それならば、政府が$\tau$を若世代へ課税し、若世代により購入される新規債務を発行し、そして時間0における老世代へ補助金を支給するために、収益を用いると仮定するのがもっともらしい。
均衡上のこの点より、上記に計算した通りであろう。
・『紙幣』に戻る。
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/PaperMoney/PaperMoneyAER.pdf
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『紙幣』の「3-1 サミュエルソンの、蓄積あり純粋消費ローンモデル。」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated PAPER MONEY, CHRISTOPHER A. SIMS, III.1. Samuelson’s pure consumption loan model, with storage. into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
3-1 サミュエルソンの、蓄積あり純粋消費ローンモデル。
このモデルは、債務あるいは貨幣を裏付ける税金がなく、物価は不定である。その場合一つの安定的な物価が存在し、そこでは実質的な配分は効率的であり、他のあり得る初期物価の連続体では、それぞれが非効率的均衡に相当していて、政府債務あるいは貨幣の実質価値はゼロへ収縮する。
もし政府がプライマリーバランスの黒字(無利子の歳出に対する歳入超過)になれば、民間エージェントは将来における課税を彼らの購買力を減じるものとみなす。
よって彼らは、国債の価値が将来の課税の現在価値と一致するのに十分なほど物価が低下するまで、貯蓄(貨幣あるいは政府債務を蓄積しようとする試み)する。
このメカニズムは非一意性を排除し、プライマリーバランスの黒字がいかに小さくとも、そしてわずかなプライマリーバランスの黒字に対しても、実質的な配分を任意に効率的なものへと近付ける。
無限に連続する期間、それぞれの期間において2期間生存する同数のエージェントが生まれ、1単位の消費財、穀物が与えらる。
穀物は貯蔵することができるが、貯蔵の間、要素$\theta$により腐敗する。
政府債務も存在し、ドル建てである。
初期の日付$t = 1$でその量は$B_0$で、それは初期の老世代によって保有され、彼らは政府と共にそれを償還し、引換えとして$B_1 = R_0 B_0$の量の新規の1期間債務を受領する。
この新規国債は初期の老世代には無価値なので、彼らは穀物のために、初期の若世代にそれを売却しようとする。
日付$t$における物価は、穀物と新規に発行された政府債務の取引レートである。
このプロセスはその後、$t = 1, \cdots , \infty$の間、繰り返される。
公式には、$t$に生まれた世代は、その生涯において効用$U(C_{1t}, C_{2,t+1})$を、次の制約に従いながら最大化する。
\[
C_{1t} + S_t + \dfrac{B_t}{P_t} = 1 \quad\cdots\cdots(1)
\]
\[
C_{2,t+1} = \dfrac{R_t B_t}{P_{t+1}} + \theta S_t \quad\cdots\cdots(2)
\]
\[
S_t \geq 0, \; B_t \geq 0 \quad\cdots\cdots(3)
\]
なぜならば、政府は各期間、債務を繰り延べる以外何もしないので、市場清算条件は単純に$R_t B_t = B_{t+1}$である。
政府は各期間、任意の値$R_t$を設定する。
世代$t$のエージェントにとっての1階の条件は、次期間の$P$について完全に予測できると仮定すれば、
\[
\partial C_1 : \quad D_1 U(C_{1t}, C_{2,t+1}) = \lambda_t \quad\cdots\cdots(4)
\]
\[
\partial C_2 : \quad D_2 U(C_{1t}, C_{2,t+1}) = \mu_{t+1} \quad\cdots\cdots(5)
\]
\[
\partial B_t : \quad \dfrac{\lambda_t}{P_t} = \dfrac{R_t \mu_{t+1}}{P_{t+1}}, \; \mathrm{if} \; B_t > 0 \quad\cdots\cdots(6)
\]
\[
\partial S_t : \quad \lambda_t = \theta \mu_{t+1}, \; \mathrm{if} \; S_t >0 \quad\cdots\cdots(7)
\]
となる。
$B$と$S$の1階の条件により知ることができるのは、予想通り、もしエージェントが穀物を貯蔵し、また債務を購入していれば、それらの収益は一致しなければならないということであり、この場合、
\[
\dfrac{R_t P_t}{P_{t+1}} = \theta \quad\cdots\cdots(8)
\]
が成り立つ。
モデルがどのように機能するかの考察に資する解を容易に計算できるよう、$R_t$を定数、そして
\[
U(C_{1t}, C_{2,t+1}) = \log (C_{1t}) + \log (C_{2,t+1})
\]
と仮定する。
ラグランジュの未定乗数法を解けば、
\[
\dfrac{R_t P_t}{P_{t+1}} = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_t}, \; \mathrm{if} \; B_t > 0 \quad\cdots\cdots(9)
\]
\[
\theta = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_{1t}}, \; \mathrm{if} \; S_t > 0 \quad\cdots\cdots(10)
\]
が導出される。
貯蓄を$W_t = S_t + \dfrac{B_t}{P_t}$と置く。
対数的効用が解を容易にする。なぜならば、貯蓄に対する収益のレート($\rho_t$)がどうであれ、$\rho = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_{1t}}$であり、そしてこのことは次に、
\[
C_{1t} + W_t = 1 = C_{1t} + \dfrac{C_{2,t+1}}{\rho_t} = 2C_{1t} \quad\cdots\cdots(11)
\]
を含意する。
このようにして、貯蓄は常に資本を半減する。すなわち、0.5である。
この経済の均衡においては、蓄積は存在せず、名目債務が価値を有する(すなわち、$P_t < \infty$)。
貯蓄はなく、$C_{1t} = 0.5$で、貯蓄は全て、老世代から債務を購入するために使われてしまうので、やはり$C_{2t} = 0.5$となる。
このことは、全ての$t$について、$\rho_t \equiv 1$であり、それゆえに$R = \dfrac{P_{t+1}}{P_t}$であることを意味する。
換言すれば、物価は総利率で成長し、新規に発行された債務も満期の債務も、その実質価値は両方共に定数0.5である。
この均衡が維持されるためには、初期物価$P_1$は$2B_1$、すなわち$2RB_0$でなければならない。
しかしながら、この経済はまた、$S_t > 0$である均衡状態をも有する。
この均衡においては、もちろん、$\rho \equiv \theta = \dfrac{RP_t}{P_{t+1}}$である。
換言すれば、物価は$R$というレートではなく、$\dfrac{R}{\theta}$というより高いレートで成長する。
名目債務はいまだ$R$というレートで成長するが、実質債務は時間の経過と共に、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \theta \dfrac{B_{t-1}}{P_{t-1}}
\]
により収縮する。
経済はいかなる$\dfrac{B_1}{P_1} < 0.5$でも開始できる。
蓄積はその後、$S_1 = 0.5 - \dfrac{B_1}{P_1}$になる。
翌期以降、$S_t$は0.5へ向かって増加し、名目債という形式である貯蓄の実質価値はゼロへと収縮する。
換言すれば、全ての初期物価$P_1$は$2RB_0$を超え、それは$P_1 = \infty$の場合を含み(この場合、債券は価値を失い、全ての貯蓄は貯蔵の形式となる)、この経済における完全予見均衡に一致する。
これは物価不定の経済である。
この経済の資源制約が$C_{1t} + C_{2t} + S_t = 1 + \theta S_{t-1}$であることに留意せよ:若世代による消費と貯蓄+老世代の消費と貯蓄は、若世代の資本+老世代による貯蔵からの収益である。
貯蔵が正である全均衡において、$S$は増加しているか、($P_t = \infty$のときには)一定であり、$S_t > 0$であるこれら全均衡においては、$C_{1t} \equiv 0.5, \; C_{2t} < 0.5$だからである。
すなわち、$S_t > 0$であるこれら均衡は、$S_t = 0$である均衡よりもさらに悪いものである。
これらのより悪い均衡を避ける方法があると信じることは気休めになるかもしれないが、より悪い均衡を多少なりとも緩和するべき何かを、このモデルの構造の中に見出すことはできない。
ここで"$B$"と"$R$"という記号を使用したとき、課税からのいかなる償還もなく政府が債務を発行すれば不定の均衡となることは、もしかすると驚くべきことではないかもしれない。
しかし、もし$B$を$M$に置き換えて、$R = 1$と設定すれば、これはサミュエルソンの「貨幣」モデルとなり、それは時に、いかにして法定紙幣が価値を持つのかを理解するのに有用なメタファーとみなされる。
しかし、それを債務として考えることに立ち返ろう。
もし債務を償還するために税金を提供するとどうなるだろうか。
全てをこれまで通りとするが、今回政府は定額税$\tau$を各期間若世代に課するものとする。
政府の予算制約は、今回の場合、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \dfrac{RB_{t-1}}{P_t} - \tau \quad\cdots\cdots(12)
\]
となる。
貯蓄が債券と貯蔵という形式である均衡を仮定せよ。
そして両方共に実質総利率の収益$\theta$を持たなければならない。
これにより政府の予算制約は、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \theta \dfrac{B_{t-1}}{P_{t-1}} - \tau \quad\cdots\cdots(13)
\]
となる。
これは$\dfrac{B_t}{P_t}$の安定的な差分方程式である。
もし$t = 0$で演算を開始すれば、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \sum_{s=0}^{t-1}-\tau \theta^s + \theta^t \dfrac{B_0}{P_0} \quad\cdots\cdots(14)
\]
となるだろう。
しかし、$\theta < 1$であるから、この式の右辺は結局負となり、$t \rightarrow \infty$であるから、$\dfrac{-\tau}{(1 - \theta)}$へと収束する。
これは、この経済における代表的個人の観点からすれば、政府債務保有という形式の富が、個人の将来の納税義務をファイナンスするには不十分なのである。
このことは、貯蓄増加への欲望を含意し、価格に対して下降圧力を加え、このようにして実質債務の量を蓄積ゼロの値へと後退させる。
もし蓄積がなければ、債務の収益レートは正になり得る。
税金は個人エージェントには富を減じるものと認識されので、最初の期間の消費は減らされる。
公式には、最初の期間における民間予算制約は、今回の場合、
\[
C_{1,t} + \dfrac{B_t}{P_t} + \tau = 1 \quad\cdots\cdots(15)
\]
となる。
いまだ第1階の条件より、$\dfrac{RP_t}{P_{t+1}} = \rho_t = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_t}$を有するのであるが、そこでは$\rho_t$は収益の実質利率を表す記号である。
最初の期間の予算制約を書き直すために、これら最後の2式を使用すると、
\[
C_{1t} + \tau + \dfrac{C_{2,t+1}}{\rho_t} = 1 = C_{1t} + \dfrac{\rho_t C_{1t}}{\rho_t} + \tau \quad\cdots\cdots(16)
\]
を得られる。
よって、
\[
C_{1t} = \dfrac{1 - \tau}{2}
\]
であり、通常は対数効用と共に、最初の期間の消費は富の合計$1 - \tau$の半分である。
貯蔵がなければ、$C_{1t} + C_{2t} = 1$であり、その含意は、
\[
C_{2t} = \dfrac{1 + \tau}{2} \quad\cdots\cdots(17)
\]
である。
この一意的均衡において、それぞれの世代の効用は$\log (1 - \tau) + \log (1 + \tau) + 2\log \left( \dfrac{1}{2} \right)$であり、$2\log \left( \dfrac{1}{2} \right)$の上限より少ないことに留意せよ。
このように$\tau = 0$でありながら、効用を最大化する均衡は存在するが、それは一意ではなく、$\tau$の小さな正の値が均衡を一意にする一方で、小さな$\tau$にとって最適な効用へ近接し得る。
債務評価方程式はこれら均衡を有する。
総実質利率は$\rho_t = \dfrac{C_{2,t+1}}{C_{1t}} \equiv \dfrac{(1 + \tau)}{(1 - \tau)}$である。
政府予算制約より、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \rho_{t-1} \dfrac{B_{t-1}}{P_{t-1}} - \tau
\]
を得るが、$\dfrac{B}{P} = \dfrac{C_2}{\rho}$が均衡の中で一定であるので、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \dfrac{\tau}{\rho - 1} \quad\cdots\cdots(18)
\]
である。
この公式から言えることとして、$\tau$がゼロに近接しても、$\dfrac{B}{P}$はゼロに近接しないことに留意せよ。
均衡における$\rho = \dfrac{C_2}{C_1} = \dfrac{(1 + \tau)}{(1 - \tau)}$及び(18)式における$\rho$にこれを代入すると、
\[
\dfrac{B_t}{P_t} = \dfrac{1 - \tau}{2} \quad\cdots\cdots(19)
\]
となる。
なぜならば$\rho \rightarrow 1$で$\tau \rightarrow 0$であり、換言すれば、たとえ債務評価方程式(18)が保持されるとしても、$\tau \rightarrow 0$であれば、実質債務は2分の1、効用を最大化する均衡におけるその値に収束するのである。
初期の物価がいかにして決定されるかを見るために、初期の政府予算制約に着目する。
$R_{-1}$と$B_{-1}$は歴史的に付与されており、よって、
\[
\dfrac{B_0}{P_0} = \dfrac{1 - \tau}{2} = \dfrac{R_{-1}B_{t-1}}{P_t} - \tau \quad\cdots\cdots(20)
\]
である。
この方程式は、$R_{t-1}B_{t-1} > 0$である限り、一意の正の値$P_0$という解をもつ。
物価は、$R_t$についての連続する政策選択によって、引き続き連続して決定され、$R_t$がより高くなればインフレを高進させる。
もし初期の$R_{t-1}B_{t-1}=0$であればどうだろうか。
$B_0 > 0$であるように制約を維持し続ければ、財政政策は、$t = 0$において単純に$\tau$をその一定の値へ設定することができない。
この場合、時間0における老世代は、消費をファイナンスする術がない。
それならば、政府が$\tau$を若世代へ課税し、若世代により購入される新規債務を発行し、そして時間0における老世代へ補助金を支給するために、収益を用いると仮定するのがもっともらしい。
均衡上のこの点より、上記に計算した通りであろう。
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