3-3 債務は財政的クッションである。
PAPER MONEY
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/PaperMoney/PaperMoneyAER.pdf
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『紙幣』の「3-3 債務は財政的クッションである。」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated PAPER MONEY, CHRISTOPHER A. SIMS, III.3. Debt as a fiscal cushion. into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
彼の枠組みでは、$\tau$は$b$の増加を伴って増加する。
LucasとStokey (1983)は、政府が偶発債務を発行できるとき、現在の債務の水準を参照することなしに、税金を設定することが実際に最適であることを示した。
Chari、Christiano、そしてKehoe (1994)は、金融政策は、インフレを決定することにより、債務に対する収益における適切な偶発を生み出すことができることを示した。
私の論文 (2001)では、これらの洞察がBarroの定式化された枠組みへ立ち戻って組み入れられると、単純かつ冷厳な結論に達することを示した―$\tau$は定数であるべきで、インフレやデフレに驚かされて確率論的に変動する将来の政府支出を伴う式に、$b$が組み込まれているのである。
しかしながら、これらの結果は全て、インフレやデフレに驚かされることには費用がかからないことに依存している。
価格や賃金の粘着性を持つケインジアン・モデル、あるいは名目値での標準債務契約を経由する貸借、不完全な市場を持つモデルでは、インフレに驚かされることは実質的な費用である。
Schmitt-GrohéとUribe (2001)は、1期間の政府債務を持つニュー・ケインジアン・モデルで、最適な政策は、定数$\tau$政策よりも、Barroの初期の処方箋の方がよりそれに近いことを示した。
しかし、政府債務が長期か短期かで、大きな相違がある。
債務が短期のとき、Schmitt-GrohéとUribeの仕組みでは、インフレあるいはデフレは、不意の政府支出へ反応して市場価値を変動させる唯一の方法である。
しかし、もし債務が長期であれば、債務の価値の大きな変動は、インフレ変動を極めて小さくしながらも、名目利子率の変動により生み出すことができる。
利子率は広く変動し、その変動は費用が非常に高いとは捉えられることはなく、一方で価格変動は、非効率な生産と雇用の変動をもたらすかもしれない。
この節のモデルは、Barroの枠組みを再訪し、内生的価格決定を加え、短期あるいは長期の債務を考慮に入れる。
それは、税金の変動を限定するため、名目債務の財政的クッションを実質的に使用することは、債務の満期が長期であれば最適であることを結論する。
Barroに従い、課税による死荷重の最小化を選好する政府をモデル化し、それは総歳入の2乗、$\tau^2$に比例するモデルである。
しかし、彼の仕様にインフレにおける広い振れ幅への配慮を加え、目的関数を導くと、
\[
-\dfrac{1}{2}E \left[\sum_{t=0}^{\infty}\beta^t \left(\tau^2 + \theta \left(\dfrac{P_t}{P_{t-1}} - 1 \right)^2 \right) \right] \quad\cdots\cdots(30)
\]
となる。
この点より総インフレ率の逆数を表すため、$v_t = \dfrac{P_{t-1}}{P_t}$という記号を一つ使用することにより、表記を簡単にすることができる。
一定の実質利子率が存在し、民間部門の行為者は、債券の予期される名目収益に一致する実質レートを要求する:
\[
R_t E_t v_{t+1} = \rho \quad\cdots\cdots(31)
\]
政府予算制約は、
\[
b_t = R_{t-1}v_t b_{t-1} - \tau_t + g_t \quad\cdots\cdots(32)
\]
となり、$b$は実質債務、$g_t$は政府支出であり、外生的確率的過程を扱うものとする。
政府はその後、(31)と(32)という2つの制約に従い、$R$、$P$、$b$そして$\tau$を選択して、(30)を最小化する。
最適化のための1階の条件は、
\[
\partial \tau : \quad \tau_t = \lambda_t \quad\cdots\cdots(33)
\]
\[
\partial b : \quad \lambda_t = \beta R_t E_t [v_{t+1}\lambda_{t+1}] \quad\cdots\cdots(34)
\]
\[
\partial R : \quad \mu_t E_t v_{t+1} = \beta E_t [v_{t+1}\lambda_{t+1}]b_t \quad\cdots\cdots(35)
\]
\[
\partial v : \theta \cdot (v_t - 1) = -\lambda_t R_{t-1}b_{t-1} + \mu_{t-1}R_{t-1}\rho \quad\cdots\cdots(36)
\]
である。
これら1階の条件は複雑に見えるけれど、$\theta = 0$のとき、インフレの費用が存在しないので、驚くほど単純な解へと崩壊する。
簡潔を維持するため、$\beta \rho = 1$を仮定する。
1階の条件の$b$と$R$、そしてフィッシャー方程式(31)より、
\[
b_t \lambda_t = \mu_t \rho \quad\cdots\cdots(37)
\]
を導出することができる。
1階の条件を$v$に代入し、
\[
\theta \cdot (v_t - 1) = (-\lambda_t + \lambda_{t-1})R_{t-1}b_{t-1} = (\tau_t - \tau_{t-1})R_{t-1}b_{t-1} \quad\cdots\cdots(38)
\]
に到達する。
もし$\theta = 0$ならば、これは、$R_{t-1}$と$b_{t-1}$が両方共に正である限り、$\tau_t = \tau_{t-1}$であるという結論になる。
$\tau_t$が一定で$g_t$が外生的確率的であり、(31)は不安定な方程式である。
実現可能性($b > 0$)と横断性($b_t \rightarrow 0$で将来の$\tau$が定数である間、最適になり得ない)は、$b$が破裂してはならないことを含意する。
これは、予算制約(32)を解き進めて、
\[
b_t = \dfrac{\tau}{\rho - 1} - E_t \left[\sum_{s=1}^{\infty} \rho^{-s}g_{t+s}\right] \quad\cdots\cdots(39)
\]
を生み出すことができることを含意する。
$g$が独立同分布である特別な場合、$b$は定数である。
債務の実質価値上$g$の影響を相殺する、インフレ率の逆数$v_t$の変動により、$b$はこれら安定性の一貫した値で維持される。
ここまで、$\theta = 0$を設定し、Lucas-Stokeyの結果のこの単純なモデルにおける相似物を導出した。
$\theta = \infty$、すなわち、物価が一定に保たれ、実質政府債務のみ存在する場合を考察することもできる。
$v$はもはや自由に選択できるので、$v$を1階の条件に落とし、$v_t \equiv 1$という事実を用いる。
$b$の1階の条件は$E_t \tau_{t+1} = \tau_t$を結論し、Barroの結論へ回帰する(今やBarroのモデルへ回帰し、それは実質債務のみを持った)。
しかし、最も興味深いケースは、$0 < \theta < \infty$の場合である。
これらの場合、この型式のモデルを、政府債務が名目であるだけでなく長期でもあるモデルと対比してみたい。
各期間1「ドル」を永久に支払い続け、決して元金を償還しない、コンソル債務という極端な場合を考察する。
公的部門が有するコンソル数は$A_t$、コンソルのドル建て価格は$Q_t$(よって、$\dfrac{1}{Q_t}$は長期利子率である)。
フィッシャー方程式によると、1コンソルの1期間の予測利回りは、
\[
E_t \left[\dfrac{Q_{t+1}v_{t+1} + 1}{Q_t} \right] = \rho \quad\cdots\cdots(40)
\]
であり、予算制約は、
\[
b_t = \dfrac{A_t Q_t}{P_t} = b_{t-1} \left(\dfrac{Q_t v_t + 1}{Q_{t-1}} \right) - \tau_t + g_t \quad\cdots\cdots(41)
\]
となる。
非自明な$\theta$を持つこれらシステムは分析的に取り扱うのが難しいため、コンソル債務の場合の1階の条件を展開するのを省略し、短期債務と長期債務の両方のモデルについて局所的に線形化された型式を、数値的に解く。
$g_t$が時間を越えて独立であり、$Eg_t = \bar{g} = 1$のような定数を伴うと仮定する。
$\rho = \beta^{-1} = 1.1$を設定し、初期定常状態において$\tau = 2$である。
なぜならば、ここでは$\tau - \bar{g} = 1$であり、純実質レートは$\rho - 1 = 0.1$、初期定常状態の実質債務$b = 10$である。
実質債務とともに、Barroの枠組みの原型(すなわち、$\theta = \infty$)では、$g_t$がその平均$\bar{g}$を上回って1単位増加するには、$\tau$と$b$が新しい水準へと移動する必要があり、それはもし将来の$g$の値が$\bar{g}$へ戻るのであれば永久に持続し得る。
よって、媒介変数の設定で、$g$を$\dfrac{10}{11}$にする衝撃は$b$へ、$\dfrac{1}{11}$は$\tau$へと向かう。
$\tau$の増加は、10%の利子率における増加した債務に奉仕するには、まさに十分である。
$b$と$\tau$の新しい値は、新しい衝撃が加えられない限り永久に維持される。
利子率は定数のままである。
逆の極論では、完全に弾力的な価格($\theta = 0$)と名目債務とともに、最適な政策は、不意のインフレでの財政的不意打ちを全て吸収する。
インフレは満期を迎える債務の実質価値を、比例的に減じ、それは11である。
そしてそれは、$\tau$が最適にも全く変動しないので、$g$の単位的増加を相殺するには十分である。
結果は10%のインフレであり、$b$、$\tau$そして利子率全てが変動しない。
インフレは初期の期間へ限定され、その後、ゼロへ回帰する。
ここで再び、利子率は定数のままである。
$\theta = 0$を伴い、最適な政策は、1年あるいはコンソル債務の保有いかんに依存する。
1年債務を伴い、最適な政策は、増加した債務への手当てを補うため、$b$へ流れる$g$の衝撃を43%を許容し、$\tau$を恒久的に4.3%調整する。
これは$g$の衝撃についていくらか説明できていない部分があるが、それは1回の不意のインフレ(4.8%)に吸収される。
そして再度、利子率は定数のままである。
$\theta = 10$とコンソル債務とともに、$g$の衝撃のわずか6.9%が増加した$b$へ流れ、$\tau$はわずか0.69%増加する。
衝撃のほとんどは、名目利子率($\dfrac{1}{Q}$)とインフレ率の、同時に起こる恒久的な小さな増加によって吸収される。
利子率は0.84%、インフレ率は0,76%増加する。
利子率とインフレ率におけるこれら小さな変動は、$g$の衝撃ほとんどを相殺するコンソル保有者の資本損失を引き起こすのに十分である。
利子率はインフレ率以上に増加するので、たとえ定数$\rho$を仮定したとしても、実質レートは増加するかもしれない。
しかしながら、これは、$\dfrac{1}{Q}$という「名目レート」の定義のせいで起こるのである。
これはインフレがなければよい近似であるが、恒常的なインフレがある場合、この衝撃が起こったときには、コンソルの名目的な支払いを次々に迫られることは実質的な前倒しであり、インフレと$\dfrac{1}{Q}$における恒常的な変動の組合せにより、事実上一定の実質レートが保持される。
前段落で議論した4つの場合における$g$の衝撃への反応を、図2に示す。
それぞれ、上部に示された場合における、図の左にある4つの変数の経時的変動を示している。
$\theta = 10$である1年債務の場合は、Barroの純粋実質債務のケースと弾力的価格のケースの間の約中間にあることに留意せよ。
コンソルのケースでは、実質変数$b$と$\tau$の時経路について、弾力的価格のケースに非常に近接しているけれど、インフレ率と利子率の時経路は全く異なる。
この比較の要点は、長期債務と、財政的衝撃への税金の低い反応の組合せが最適であることを主張することではない。
モデルは極端に定式化され、インフレ費用は、ケース間の対比を容易に見て取れるような値にのみ調整されている。
ここまでで十分に理解できたのは、局所的な線形化によりここで入手した、1階の正確な解は、定式化された目的関数でさえ、予測された富を直接的に計算することができないということである。
税金とインフレの両方共にコンソル解ではあまり相違ないので、それはより高い富をもたらしそうではあるが、予算制約は線形ではないので、これについて確証は得られない。
価格と利子率の不意の変動から利用可能な衝撃吸収量は、実質債務の大きさに依存し、実質債務はこの解においては局所的に非定常である。
しかしながら、長期と短期の債務を含むこれらの結果はくっきりと対照的で、この例は、Schmitt-GrohéとUribe (2001)とSiu (2004)のような分析結果を解釈する際には注意が必要であることについて、一つの根拠を示している。
これら論文は、平時(戦時ではない)、財政的な衝撃を緩和するのに不意のインフレをほんの少しだけ利用するのが最適だと結論するが、両論文は、全債務は1期間の債務だと仮定している。
その結論はこの仮定に対して過敏であると言えそうである。
・『紙幣』に戻る。
CHRISTOPHER A. SIMS
http://sims.princeton.edu/yftp/PaperMoney/PaperMoneyAER.pdf
下記の文章は、上記のクリストファー・シムズ氏の論文『紙幣』の「3-3 債務は財政的クッションである。」の原文を、英語から日本語に翻訳したものです。
下記の文章を、原文のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)に従い、同様のライセンス(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植)により公開します。
I translated PAPER MONEY, CHRISTOPHER A. SIMS, III.3. Debt as a fiscal cushion. into Japanese.
This document is licensed under the Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported License.
3-3 債務は財政的クッションである。
Barro (1979)は、債務を減じるための重い初期課税は、債務が減じた後、より低い将来の死荷重の現在価値によって相殺されないので、歪んだ税制が存在する場合、公的債務を急いで清算することが最適とは言えないことを、単純で定式化されたモデルによって示した。
その代わり、彼のモデルでは、債務と税収は、$E_t b_{t+1} = b_t, \; E_t \tau_{t+1} = \tau_t$のように、マルチンゲール過程に最適に従う(ここでは、$\tau$は総税収を意味する)。彼の枠組みでは、$\tau$は$b$の増加を伴って増加する。
LucasとStokey (1983)は、政府が偶発債務を発行できるとき、現在の債務の水準を参照することなしに、税金を設定することが実際に最適であることを示した。
Chari、Christiano、そしてKehoe (1994)は、金融政策は、インフレを決定することにより、債務に対する収益における適切な偶発を生み出すことができることを示した。
私の論文 (2001)では、これらの洞察がBarroの定式化された枠組みへ立ち戻って組み入れられると、単純かつ冷厳な結論に達することを示した―$\tau$は定数であるべきで、インフレやデフレに驚かされて確率論的に変動する将来の政府支出を伴う式に、$b$が組み込まれているのである。
しかしながら、これらの結果は全て、インフレやデフレに驚かされることには費用がかからないことに依存している。
価格や賃金の粘着性を持つケインジアン・モデル、あるいは名目値での標準債務契約を経由する貸借、不完全な市場を持つモデルでは、インフレに驚かされることは実質的な費用である。
Schmitt-GrohéとUribe (2001)は、1期間の政府債務を持つニュー・ケインジアン・モデルで、最適な政策は、定数$\tau$政策よりも、Barroの初期の処方箋の方がよりそれに近いことを示した。
しかし、政府債務が長期か短期かで、大きな相違がある。
債務が短期のとき、Schmitt-GrohéとUribeの仕組みでは、インフレあるいはデフレは、不意の政府支出へ反応して市場価値を変動させる唯一の方法である。
しかし、もし債務が長期であれば、債務の価値の大きな変動は、インフレ変動を極めて小さくしながらも、名目利子率の変動により生み出すことができる。
利子率は広く変動し、その変動は費用が非常に高いとは捉えられることはなく、一方で価格変動は、非効率な生産と雇用の変動をもたらすかもしれない。
この節のモデルは、Barroの枠組みを再訪し、内生的価格決定を加え、短期あるいは長期の債務を考慮に入れる。
それは、税金の変動を限定するため、名目債務の財政的クッションを実質的に使用することは、債務の満期が長期であれば最適であることを結論する。
Barroに従い、課税による死荷重の最小化を選好する政府をモデル化し、それは総歳入の2乗、$\tau^2$に比例するモデルである。
しかし、彼の仕様にインフレにおける広い振れ幅への配慮を加え、目的関数を導くと、
\[
-\dfrac{1}{2}E \left[\sum_{t=0}^{\infty}\beta^t \left(\tau^2 + \theta \left(\dfrac{P_t}{P_{t-1}} - 1 \right)^2 \right) \right] \quad\cdots\cdots(30)
\]
となる。
この点より総インフレ率の逆数を表すため、$v_t = \dfrac{P_{t-1}}{P_t}$という記号を一つ使用することにより、表記を簡単にすることができる。
一定の実質利子率が存在し、民間部門の行為者は、債券の予期される名目収益に一致する実質レートを要求する:
\[
R_t E_t v_{t+1} = \rho \quad\cdots\cdots(31)
\]
政府予算制約は、
\[
b_t = R_{t-1}v_t b_{t-1} - \tau_t + g_t \quad\cdots\cdots(32)
\]
となり、$b$は実質債務、$g_t$は政府支出であり、外生的確率的過程を扱うものとする。
政府はその後、(31)と(32)という2つの制約に従い、$R$、$P$、$b$そして$\tau$を選択して、(30)を最小化する。
最適化のための1階の条件は、
\[
\partial \tau : \quad \tau_t = \lambda_t \quad\cdots\cdots(33)
\]
\[
\partial b : \quad \lambda_t = \beta R_t E_t [v_{t+1}\lambda_{t+1}] \quad\cdots\cdots(34)
\]
\[
\partial R : \quad \mu_t E_t v_{t+1} = \beta E_t [v_{t+1}\lambda_{t+1}]b_t \quad\cdots\cdots(35)
\]
\[
\partial v : \theta \cdot (v_t - 1) = -\lambda_t R_{t-1}b_{t-1} + \mu_{t-1}R_{t-1}\rho \quad\cdots\cdots(36)
\]
である。
これら1階の条件は複雑に見えるけれど、$\theta = 0$のとき、インフレの費用が存在しないので、驚くほど単純な解へと崩壊する。
簡潔を維持するため、$\beta \rho = 1$を仮定する。
1階の条件の$b$と$R$、そしてフィッシャー方程式(31)より、
\[
b_t \lambda_t = \mu_t \rho \quad\cdots\cdots(37)
\]
を導出することができる。
1階の条件を$v$に代入し、
\[
\theta \cdot (v_t - 1) = (-\lambda_t + \lambda_{t-1})R_{t-1}b_{t-1} = (\tau_t - \tau_{t-1})R_{t-1}b_{t-1} \quad\cdots\cdots(38)
\]
に到達する。
もし$\theta = 0$ならば、これは、$R_{t-1}$と$b_{t-1}$が両方共に正である限り、$\tau_t = \tau_{t-1}$であるという結論になる。
$\tau_t$が一定で$g_t$が外生的確率的であり、(31)は不安定な方程式である。
実現可能性($b > 0$)と横断性($b_t \rightarrow 0$で将来の$\tau$が定数である間、最適になり得ない)は、$b$が破裂してはならないことを含意する。
これは、予算制約(32)を解き進めて、
\[
b_t = \dfrac{\tau}{\rho - 1} - E_t \left[\sum_{s=1}^{\infty} \rho^{-s}g_{t+s}\right] \quad\cdots\cdots(39)
\]
を生み出すことができることを含意する。
$g$が独立同分布である特別な場合、$b$は定数である。
債務の実質価値上$g$の影響を相殺する、インフレ率の逆数$v_t$の変動により、$b$はこれら安定性の一貫した値で維持される。
ここまで、$\theta = 0$を設定し、Lucas-Stokeyの結果のこの単純なモデルにおける相似物を導出した。
$\theta = \infty$、すなわち、物価が一定に保たれ、実質政府債務のみ存在する場合を考察することもできる。
$v$はもはや自由に選択できるので、$v$を1階の条件に落とし、$v_t \equiv 1$という事実を用いる。
$b$の1階の条件は$E_t \tau_{t+1} = \tau_t$を結論し、Barroの結論へ回帰する(今やBarroのモデルへ回帰し、それは実質債務のみを持った)。
しかし、最も興味深いケースは、$0 < \theta < \infty$の場合である。
これらの場合、この型式のモデルを、政府債務が名目であるだけでなく長期でもあるモデルと対比してみたい。
各期間1「ドル」を永久に支払い続け、決して元金を償還しない、コンソル債務という極端な場合を考察する。
公的部門が有するコンソル数は$A_t$、コンソルのドル建て価格は$Q_t$(よって、$\dfrac{1}{Q_t}$は長期利子率である)。
フィッシャー方程式によると、1コンソルの1期間の予測利回りは、
\[
E_t \left[\dfrac{Q_{t+1}v_{t+1} + 1}{Q_t} \right] = \rho \quad\cdots\cdots(40)
\]
であり、予算制約は、
\[
b_t = \dfrac{A_t Q_t}{P_t} = b_{t-1} \left(\dfrac{Q_t v_t + 1}{Q_{t-1}} \right) - \tau_t + g_t \quad\cdots\cdots(41)
\]
となる。
非自明な$\theta$を持つこれらシステムは分析的に取り扱うのが難しいため、コンソル債務の場合の1階の条件を展開するのを省略し、短期債務と長期債務の両方のモデルについて局所的に線形化された型式を、数値的に解く。
$g_t$が時間を越えて独立であり、$Eg_t = \bar{g} = 1$のような定数を伴うと仮定する。
$\rho = \beta^{-1} = 1.1$を設定し、初期定常状態において$\tau = 2$である。
なぜならば、ここでは$\tau - \bar{g} = 1$であり、純実質レートは$\rho - 1 = 0.1$、初期定常状態の実質債務$b = 10$である。
実質債務とともに、Barroの枠組みの原型(すなわち、$\theta = \infty$)では、$g_t$がその平均$\bar{g}$を上回って1単位増加するには、$\tau$と$b$が新しい水準へと移動する必要があり、それはもし将来の$g$の値が$\bar{g}$へ戻るのであれば永久に持続し得る。
よって、媒介変数の設定で、$g$を$\dfrac{10}{11}$にする衝撃は$b$へ、$\dfrac{1}{11}$は$\tau$へと向かう。
$\tau$の増加は、10%の利子率における増加した債務に奉仕するには、まさに十分である。
$b$と$\tau$の新しい値は、新しい衝撃が加えられない限り永久に維持される。
利子率は定数のままである。
逆の極論では、完全に弾力的な価格($\theta = 0$)と名目債務とともに、最適な政策は、不意のインフレでの財政的不意打ちを全て吸収する。
インフレは満期を迎える債務の実質価値を、比例的に減じ、それは11である。
そしてそれは、$\tau$が最適にも全く変動しないので、$g$の単位的増加を相殺するには十分である。
結果は10%のインフレであり、$b$、$\tau$そして利子率全てが変動しない。
インフレは初期の期間へ限定され、その後、ゼロへ回帰する。
ここで再び、利子率は定数のままである。
$\theta = 0$を伴い、最適な政策は、1年あるいはコンソル債務の保有いかんに依存する。
1年債務を伴い、最適な政策は、増加した債務への手当てを補うため、$b$へ流れる$g$の衝撃を43%を許容し、$\tau$を恒久的に4.3%調整する。
これは$g$の衝撃についていくらか説明できていない部分があるが、それは1回の不意のインフレ(4.8%)に吸収される。
そして再度、利子率は定数のままである。
$\theta = 10$とコンソル債務とともに、$g$の衝撃のわずか6.9%が増加した$b$へ流れ、$\tau$はわずか0.69%増加する。
衝撃のほとんどは、名目利子率($\dfrac{1}{Q}$)とインフレ率の、同時に起こる恒久的な小さな増加によって吸収される。
利子率は0.84%、インフレ率は0,76%増加する。
利子率とインフレ率におけるこれら小さな変動は、$g$の衝撃ほとんどを相殺するコンソル保有者の資本損失を引き起こすのに十分である。
利子率はインフレ率以上に増加するので、たとえ定数$\rho$を仮定したとしても、実質レートは増加するかもしれない。
しかしながら、これは、$\dfrac{1}{Q}$という「名目レート」の定義のせいで起こるのである。
これはインフレがなければよい近似であるが、恒常的なインフレがある場合、この衝撃が起こったときには、コンソルの名目的な支払いを次々に迫られることは実質的な前倒しであり、インフレと$\dfrac{1}{Q}$における恒常的な変動の組合せにより、事実上一定の実質レートが保持される。
前段落で議論した4つの場合における$g$の衝撃への反応を、図2に示す。
それぞれ、上部に示された場合における、図の左にある4つの変数の経時的変動を示している。
$\theta = 10$である1年債務の場合は、Barroの純粋実質債務のケースと弾力的価格のケースの間の約中間にあることに留意せよ。
コンソルのケースでは、実質変数$b$と$\tau$の時経路について、弾力的価格のケースに非常に近接しているけれど、インフレ率と利子率の時経路は全く異なる。
この比較の要点は、長期債務と、財政的衝撃への税金の低い反応の組合せが最適であることを主張することではない。
モデルは極端に定式化され、インフレ費用は、ケース間の対比を容易に見て取れるような値にのみ調整されている。
ここまでで十分に理解できたのは、局所的な線形化によりここで入手した、1階の正確な解は、定式化された目的関数でさえ、予測された富を直接的に計算することができないということである。
税金とインフレの両方共にコンソル解ではあまり相違ないので、それはより高い富をもたらしそうではあるが、予算制約は線形ではないので、これについて確証は得られない。
価格と利子率の不意の変動から利用可能な衝撃吸収量は、実質債務の大きさに依存し、実質債務はこの解においては局所的に非定常である。
しかしながら、長期と短期の債務を含むこれらの結果はくっきりと対照的で、この例は、Schmitt-GrohéとUribe (2001)とSiu (2004)のような分析結果を解釈する際には注意が必要であることについて、一つの根拠を示している。
これら論文は、平時(戦時ではない)、財政的な衝撃を緩和するのに不意のインフレをほんの少しだけ利用するのが最適だと結論するが、両論文は、全債務は1期間の債務だと仮定している。
その結論はこの仮定に対して過敏であると言えそうである。
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