授業料の適正価格。
1 学習塾の広告宣伝
学習塾のオンライン化について、Twitterだけでなく普通に検索して情報収集しているのだけれど、広告がすごいことになっている。「オンライン、学習塾」あるいは「オンライン、家庭教師」で検索すると、検索結果の1ページ目に広告が5~6個差しはさまれるような感じである。
広告内容を見ても、昨今の学習塾の生徒獲得競争の熾烈化を窺い知ることができる。
そして、一部学習塾の広告を見て考えることがあったので、この記事を書くことにした。
2 学習塾の分類
オンラインであるかどうかに限らず、学習塾のあり方は大きく二つに分けることができると思う。一つは、個人塾、プロ家庭教師、固定のプロ講師を擁する学習塾など。
もう一つは、講師の斡旋、仲介センターとして機能している会社。
前者を装いながら生徒を募集しているけれど、実質的には後者として機能している学習塾も結構ある。
「当塾の講師は優秀で、指導方法も洗練、確立されている」と宣伝している学習塾に入ってみたら、実は学生のバイトやアルバイト講師で支えられていたという、よくある話をイメージすると分かりやすいかもしれない。
塾長や事務方は生徒募集と保護者対応、講師の募集と教育、要望やクレームなどの処理、調整に忙殺されている、みたいな。
後者の講師の斡旋、仲介センターも、講師の質を保証することによって、実質的には前者になっている場合もある。
この分類も絶対的なものではなく、案外相対的なのかもしれない。
3 インターネットと学習塾
なぜ上記のような分類の話をしたのかと言えば、学習塾の広告宣伝やサイトを見ても、上記分類の前者なのか後者なのか分かりにくいものが多いと感じたからである。後者の講師の斡旋、仲介センターとして一番潔いのは、講師や家庭教師のポータルサイトとして、プラットフォームだけ提供している会社やサイトだろう。
できるだけたくさんの、優秀な講師や家庭教師に登録してもらい、後はそのサイトを宣伝して生徒を募集し、成約したら登録料、手数料等の名目で料金を徴収する。
そろそろ本題に入ろうと思うけれど、僕はどこか具体的な学習塾やビジネスモデルを称賛したり批判するつもりはない。
ただ、一部補習塾の料金についての広告宣伝が、少々誇大ではないかと思ったのでこの記事を書くことにした。
4 授業料1,000円以下?
具体的な塾名は言わないけれど、いくつかの補習塾の広告宣伝で、授業料が1,000円以下であることをアピールしているものがあった。寄付やボランティアで活動が成り立っているNPOなどの団体でない限り、こんな料金設定は常識的に考えればあり得ないことは、冷静になって考えれば分かるだろう。
どんな仕事でも、時給1,000円くらい払わなければ他人を使うことはできない。
他人を1日雇って8時間働いてもらえば、日給8,000円は払わないといけないという計算になる。
たとえば友人や親類に自分の家の引っ越しを1日手伝ってもらったって、お茶代、ご飯代、交通費として数千円渡して「少ないけど受け取ってくれ、今日は本当にありがとう、助かったよ」とお礼を言うだろう。
塾の講師や家庭教師はその仕事の特性上、1日の稼働時間が限られるし、授業準備や教材研究の時間を考えれば、時給1,000円はぎりぎりの最低ラインだと思う。
もし時給1,000円かそれ以下の塾があれば、何らかのからくりがあるはずである。
5 からくり
最後に、上記からくりのいくつかを例示したい。・必ず購入させられる教材の費用が別途かかる。
・管理費という名目で別途費用が上乗せされる。
・1対1ではなく、最大3~5名の生徒を同時に指導する。
・実は期間限定の特別キャンペーンだった。
これらを考慮すると、実質的な授業料は、時給換算数千円になるはずである。
手前味噌で申し訳ないけれど、僕の補習塾で設定している料金(1,000円/50分)が、NPOやボランティア団体を除けば、ぎりぎりのラインになるはずである。
安かろう悪かろうで売るつもりで設定した訳ではなく、僕なりの理念や考えがあってのことなのだけれど、それについてはまた気が向いたときに別記事を書こうと思う。
勉強が苦手な生徒やその保護者は、必ずしも業界に精通している訳ではなく、塾あるいは家庭教師の授業料の相場もよく分からないまま、予算の範囲内で懸命に良い先生を探しているのではないか。
僕が言いたいことは、低料金をアピールするのは構わないけれど、詐欺みたいな広告宣伝はするべきではないということである。
それは教育産業に限らず、どんな商売でも守るべき基本的なルールじゃないの?